アイデアの箱
柳葉まひろ
価値
ある日
私を可愛がってくれた大叔父が死んだ
頭が真っ白になって 実感が湧かなくて
だんだんと押し寄せる後悔と悲しみに泣いた
ある日
どこかを走る高速道路で多重事故があって 3人死んだ
あんなに悲惨な事故だったのに3人だけで済んだんだ
心のどこかでそんな事を考えた
ある日
どこかのビルで立てこもり事件があって 50人が死んだ
犯人への極刑を望む声は高まり 家族までもが民衆の裁きにかけられた
何気ない日常の儚さを感じて胸が苦しくなった
ある日
どこかの国で戦争がおきて 10万人が死んだ
各国で非難の声明が出されてそこに様々な人が意見を述べた
でも 私の他人事だと考える気持ちは消えなかった
30代の無職の男性が 20代の女子大生が 80代の認知症の男性が
40代の専業主婦が 50代の教師が
いろいろな人が
いろいろな場所で
いろいろな都合で 死んだ
今
私は暴走したトロッコが走る線路の横に立っている
このままでは5人の作業員が死ぬそうだ しかし
目の前のレバーを切り換えれば1人の作業員だけが死ぬそうだ
私は5人が次々と死んでいく様を震える足で眺めていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます