異世界、2日目の朝です

「ん、ぅ………」



 窓から差し込む暖かい光に、眠っていた意識が呼び起こされる。



「ん………」



 ぱち、とまぶたを開けば、木目が美しい天井が見えた。


 あれ、私の部屋じゃない。ここは………………


 あぁそっか。

 私、異世界に来たんだっけ。


(計算中。しばらくお待ちください………)



 ………………ふむ。これはチャンスだな。




「ここも…………知らない天井だ………………」




 ただエ◯ァのセリフが言ってみたかっただけです。ありがとうございました。




 眠気とおふざけもそこそこに、ムクリと体を起こす。

 と、机の上に置かれた分厚い本とガラスペンが目に入った。


 ………やっぱり昨日のアレ、夢じゃなかったんだ………………



 ―――――【創造そうぞう】:『創造はじまりの本』・『つむぎ硝子筆ガラスペン』!―――――



 あの『本』と『ペン』は、昨日の夜私がとんでもなく可愛い、というか美しい女神ちゃんに言われて創ったものだ。


 彼女によれば、この世界はごくごく普通の高校生だった私の夢と希望と妄想が詰まりに詰まった自作小説で、私は『創造者』としてこの世界では最強で、私にしか無い『創り出す』力で世界のバグを直してほしい―――――――――――とのこと。


 まるでどこかのライトノベルのような話だ。


 いや、異世界にいることはさておき、創造うんぬんはさすがに夢かもしれない。

 うんうん、きっとそうだ。

 昨晩のことは何もかも夢。ただ自分のスキルが【偽装】だったことにショックを受けたバカなオタク(つまり私)が作り出した夢物語に違いな



『お目覚めですかー?』

「どわぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあ!?!?!???!!」



 思考をさえぎってかけられた、どこか間の抜けた声に私は飛び上がった。


 びびび、びぃっっっっっっくりした………………!!


 声の主の姿はここにはない。彼女………クレアちゃんは天界から話しかけてきているのだ。



『もー、そんなにびっくりしなくてもいいと思いますけどねー。ひどくないですかー?』



 ちょっとだけスネたような声が聞こえる。もし今クレアちゃんがここにいれば、ほっぺを膨らませた可愛い表情かおが見れたかもな、なんて考えながら、私は宿の洗面所へと向かった。



 ★★★★★★★



 洗面所、というワードを聞いて「あれ?異世界なのに洗面所とかあるの?」と思った方もいるかもしれない。

 しかしこの異世界、便利なもので水道はかなり発達している。


 蛇口をひねれば安全でおいしい水が出てくるし、そもそも水自体が豊富にあるので平民でもふんだんに使える。


 という訳で、私も日本にいた頃(今となっては前世と呼ぶほうが正しいけど)と変わらず、朝の洗顔ができるのだ!


 とにかく、まずは頭を起こそう……………と寝ぼけたままヘアバンドを装着。

 そのまま鏡を見て――――――――――



「はれ?」



 あら何だろうこの鏡、私じゃない人が映ってる。

 アーモンド型のぱっちりした瞳、ぷるんとした唇、肌荒れひとつ無い真っ白な肌。

 こんな美少女、心当たりないなぁ………………?


 あ、もしかしてこれマジックミラーで、向こう側が見えてるとか?

 だとすると何というラッキーイベントだろう。こんな可愛い子の洗顔が見れるとか!

(すみません、多分私の前世の前世はオヤジです)


 もーちょっと近くで見ーっちゃお♪と、顔をずいっと近づける。


 すると、鏡の向こうの美少女もこちらにずいっと近づいてきた。



 えっ何事!?ままままさか、私の奇行が向こうにバレた!?



 慌ててサッと離れる。

 すると、美少女もサッと離れる。



「…………………?」



 なんだ…………?なんか、違和感が……………


 私があごに手を当てて、考える…………チラと相手を盗み見れば、相手も私と全く同じポーズで………………しかもこちらを盗み見ている。


 あれ、これ、まさか………………!



 再び鏡に近づく。相手も近づく。


 私が恐る恐る頬に手を伸ばせば、相手も恐る恐るといった様子で頬に手を伸ばす。




 ま、間違いない。これ………………………











「こ、これ……………………………私!?」

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