クレアちゃんの異世界授業〜【設定】編〜

「おー!キレイですねー!」



 私の手の中の本とペンを見て、クレアちゃんが言う。


 私もキレイにできたと思ってるけど、クレアちゃんに言われるとなんか照れるなぁ。


 ぴょこん、とベットから降りてきたクレアちゃんは、「どれどれ〜?」と言って私の手元をのぞき込んだ。



「ふむふむ〜…………これ、ちょっと借りていいですか?」

「いいよ?………はい、どうぞ」

「ありがとうどざいますー!」



 私から本とペンを受け取ると、クレアちゃんは何やら表紙をナデナデしたり、ペンを持ち上げて見てみたり…………………何やってるんだろ?


 私が疑問に思っていると、クレアちゃんはすっと目を閉じ、本の表紙に手をおいて唱えた。



「【情報改変じょうほうかいへん】」



 クレアちゃんのもとに、水色の魔法陣が現れる。

 魔法陣から出た光は、吸い込まれるように本とペンの中に消えていってしまった。


 い、今のはクレアちゃんの魔法…………なのかな?



「よしっ!うまくできましたー!」



 ぽかんとする私をよそに、クレアちゃんはどこかゴキゲン顔だ。やっぱりかわいい。



「これ、今わたしが情報を書きこんだので、【設定把握せっていはあく】で見てみてくださいー!」

「あ、うん……えーっと、【設定把握せっていはあく】」



 私が唱えると、クレアちゃんの手の中にあった本がパラパラとひとりでに開く。


 すごい!!魔法っぽい!!



 開かれたページには―――――――――――――――――――――



創造はじまりの本』


 ・この世にひとつしか存在しない神器

 ・『創造者』のみ使用可

 ・『創造者』はこの本を通してのみ【創造】の使用が可能

 ・この本を通して様々な情報の閲覧、および改変が可能

 ・『創造者』がこの本に書きこんだことは真実となる………………………e.t.c.



つむぎ硝子筆ガラスペン


 ・この世にひとつしか存在しない神器

 ・『創造者』のみ使用可

 ・『創造者』はこのペンを用いてのみ『創造はじまりの本』への書き込みが可能………………………………………e.t.c.






「うわお」


 思わず声が出るくらいチートな内容が書かれていた。


 書きこんだことが真実になるって…………DE●TH NO●Eかよ。

 もしくは国●田さんの手帳か?(TVアニメ四期おめでとうございます)



「すごいねこれ…………っていうか、さっきクレアちゃん何してたの?」

「【情報改変】ですよー。その本、さっきはただの本だったので、ちゃんと貴女の『神器』になるように情報を書き加えたんですー!」


「情報……改変?それ、私にも似たようなのなかったっけ?」

「【設定改変せっていかいへん】のことですかー?たしかに似てますけどー、実態はぜんぜん違いますよー?」


「そうなの?」

「はいー。【情報】の方はー………たとえば、そこの黒いペンを青く変える………みたいなー、いわば改造?ですかねー」


「へぇ〜」

「で、【設定】の方はー、黒いペンをって感じですー」

「え、最初から………青?」



 不思議に思って訊き返すと、クレアちゃんはさも当然、といった顔で答える。



「はいー。だって、【設定】ですから」


「………………ホントにチートすぎじゃない?【創造者コレ】………」




 設定が変えられる、ということは女の人を男にできるし、なんでもない武器を伝説の武器にできる。


 改めて、『制限が多くないと困る』という言葉の意味がわかった気がした。



「ま、それが『創造者』というものですー…………文字通り、世界はその手の中にある、ということをお忘れなく」

「う、うん………」



 めずらしく神妙な口調のクレアちゃんに気圧けおされたように、私は硬い返事しかできなかった。

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