ギルドの受付嬢って実は最強だったり……する。

「っぼ、冒険者……ですか?」

「はい!」


 戸惑って聞き返す私に、お姉さんは輝いた瞳のまま手を握る力を込める。

 ぎゅう。


 あの、顔が近…………(*ノェノ)キャー


「そもそもスキルレベルがカンストすることは非常に珍しい事でして!ですがカンスト、もしくは高レベルのスキルならばどんなスキルでも必ずモンスターと渡り合えるほどの力を持っているものなんです!」

「は、はぁ………」


 ぎゅぅぅぅううう。(←さらに力が込もる)

 あ、キラキラの瞳がまぶしい………


「スキルによって前衛向き、後衛向きに別れてしまうんですけど!」

「は、はい」


 ぎゅうぎゅう。(←さらに力が込もる)

 えっと、ちょっと、力が…………


「カエデさんのスキル【偽装】でしたら残念ながら前衛ぜんえい向きではありませんが優秀な後衛こうえいとして好待遇こうたいぐうでパーティーに入ることも夢ではありませんよ!!」

「ソウナンデスネ…………」


 ギュぅぅぅぅぅぅぅうううう(←さらに力が以下略)

 あ、あ、あああ、あばばばばばばばば。


「そして!」


 ミシッ。(←どこかの骨がきしむ音)


「いっ!?」

「我々ギルドにも半年に一回成績発表いっかいせいせきはっぴょうみたいなものがありましてなんと!そこで優秀だったギルドは王都にありますギルド本部より表彰されるのです!ですから優秀な人材は年中募集中というわけでして……どうですか!?お互いに悪い話では無いと思うのですが!!」

「い、いたっ、いたたっいたいたい、すみませんいたいです!手!!」


 私が叫んでやっと、自分がかなりの力を込めていたことに気がついたのか「まぁ」と言って手を離してくれた。


 ひっ!手形のあざついてる!そして結構痛い!

 めちゃくちゃ力強かったもんね……万力まんりきかと思ったよ………

 力さえ強くなければずっと握ってて欲しかったなぁ…………(遠い目)


「申し訳ありません………熱中してしまうと周りが見えなくなるタイプでして………つい、力が込もってしまいました」

「あ、いえ……お気になさらず………」


 今度適度な力加減で手を握ってください。

 とはさすがに言えなかった。


「ですが先ほどの話は本当ですよ。カエデさんほどの方でしたらどこのパーティーでも引っ張りだこだと思いますし、ある程度の収入は保証できます」

「すごい、ですね」

「そうなんです!あぁ!もしよろしければこれから我々ギルドの冒険者システムについて説明を―――――――」


「まぁまぁ、それは後でいいんじゃないですか?」


 再び暴走しそうになったお姉さんに割って入ったのはローザさんだった。


「ほら、今日は色々な質問やら説明やらでカエデも疲れているでしょうし、ね?」

「あぁ、確かにそうですね。そういえば私も、先程うかがった精神攻撃型モンスターについて報告書を書かないといけないんでした………」


「じゃあ、なおさらこのくらいで。あと、確か初心者向けのリーフレットか何か、ありませんでしたっけ?カエデには、説明の代わりにそれを渡してはどうですか?」

「いいですね!では、さっそく取ってまいりますので、少々お待ちください!」



 ローザさんの見事な話術によって暴走は防がれ、ゴキゲンで部屋を後にしたお姉さんに、私はホッと息をつくのだった。

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