オマケの話、しょうかーん・・・の末路
その日、俺ことフリー探索者の藤原
何時ものように家でオンラインゲームに勤しんでいたのだが、足元に大きな魔法陣が輝きだした。
紛うことなき召喚陣、それも大きさから見て異世界からのものだ。
ん、何故 知ってるのか?って・・
それは前世で魔王軍と戦っていた時にも何度となく他の世界から
今回もどうせまた勇者召喚と言う大義名分の、誘拐、拉致監禁、そして戦場に送り込んでの殺人が目的で呼び出しているのだろう。
「おっと、そろそろ抵抗するかな」
自分の周りに強い魔力の被膜を作り出して干渉できないようにすれば召喚できない。
ただし、召喚を行っている相手が使っている魔力よりも大きく強い魔力が必要だから初心者には無理かな。
こうして抵抗していればその内に召喚を行っている魔導士たちは魔力を限界以上に引き出されて枯渇して死ぬ。ざまぁ
優秀な魔導士を大量に失うことになる国は二度と召喚しようなどとしなくなる訳だ。
めでたし めでたし。パチパチパチ
「ほぅ、思いのほか長く頑張ってるな。相手の魔術師はかなり優秀だぞ」
だが、さすがにそろそろ限界だろう。ははは
ピンポンパンポーーン☆
《勇者よ、呼びかけに答えるのです。次に呼び出す時は広域召喚陣をもって、そなたの友人、家族もろとも召喚いたすぞえ》
ほう・・珍しいな。声からして仲介の女神からのメッセージか
マヌケな呼び出し音だが、内容は脅迫文だぞ。
まず第一に俺は勇者じゃねぇ、魔法使いだ。だ女神め。
友人や家族を巻き込む、ねぇ・・・集団召喚はやっかいだな・・。
それ以外が巻き込まれた場合抵抗できないか・・助けに行くにも相手の座標が分からないと不可能だし・・・しょうがないな一度行ってみるかな。
体を包む魔力を解くと程なく魔法陣が強く輝きだす。
「おおーっ、召喚が成功した」
大きな魔法陣の周りで倒れ伏す多くの魔術師であろう老人達。ナムナム
その後ろには作りの良い衣服を纏った者達。
そして、一際豪華な衣装を纏った初老の男、その後ろには色々な年代の見目麗しい男女。
恐らく王とハニトラに使うエサの者達だろう。
エサは見た目さえ良ければ本当の王子王女で無くても良いのだ。
「よくぞ来られた勇者よ」
その後はテンプレのごとく魔王と戦っているだの、人族が滅びるだの色々と召喚を正当化しようと都合の良い事を言っていたが記憶に残らない。
どうでも良い事など聞いていられるか。
国の要人たちらしき男たちは召喚された人間が混乱している内に都合の良い言質を得ようと必死なのだ。
さすがにそろそろ飽きてきた・・・
「要するにその魔王を殺せば良いんだな」
「う、うむっ。さすれば褒美は思いのままじゃ。功績によっては我が国の姫を・・」
「ああ、はいはい。そういうのは良いから、早速魔王とやらを殺そうか」
「無礼者、何を言う。来たばかりでは不可能であろう。まずはレベルを上げ・・」
御付きの若い文官らしき男たちがテンプレなレベリングをせよと喚きだした。
「その魔王が居る方向はどっちだ」ギンッ
めんどくさいから大臣らしき男に少しばかり殺気を込めて睨むと偉そうな態度が消えていく。その取り巻きの若い衆は顔面蒼白だ。
その場にいた国王以下の要人たちも何も言えなくなった。よしよし
テンプレにいちいち付き合うほど初心者じゃ無いのだよ。
魔王の国が有るという方角のテラスまで案内させる。
この時には周りに近衛騎士?らしき武装した男たちが同行していた。ごくろうさん
思ってた勇者と違う、とでも思われたのかすっかり警戒されたようだ。
・・・
「あー、確かに大きな魔力持ちが居るな」
しかしこの程度の魔力が魔王?・・こんなのが本当に脅威なのか?
「まさか、魔王が居るのは別の大陸であるぞ。それが分かると言うのか」
「まさかあんた達、その別の大陸が欲しくて俺を呼びだした、なんて事は無いよな」
「なっ、何を申す。無礼であるぞ。今もこちらに魔王軍が攻め込んでおると言うに」
ふーーん・・これって戦いを先に仕掛けたのは人間かもな・・・まぁいいさ
チャッチャと用事を片付けて帰るぞ。ゲームの途中だし
脅迫した女神も魔王を殺せば文句は無いだろう。
ここは日本と違って攻撃魔法に規制が無い世界なのだ。
今まで使うのを諦めていた極大魔法でも使い放題だぜ。
使ってなかったスキルポイントで魔法を習得・・・っと全力でいくぞ。
「くっくっく、最高だ」
まずはオレ個人が持っている魔力を隠蔽するのは止めだ。意味が無いし。
そして、楽になった所でその魔力を活性化させる。
さらにこの世界に広がっている魔力をかき集める。
久し振りに感じる世界を手にしたごとき全能感
おっと、危ない危ない。
浮遊魔法で空中に退避して、っと。
空中に浮遊したところで全方位に強力な結界を構築する。
邪魔されても困るからな。
大魔法を使う時は無防備になり易いから思いがけない攻撃に注意が必要なんだ。
例えば仲間だと思っていた奴からの裏切りとかね。今回は城の連中が危険だな。
「おおっ、飛んでおられる。すでに高位の魔法を・・・どういうことだ」
「来たばかりの勇者は何の力も無いと文献には有ったはずだぞ」
「あの者は本当に勇者なのか?、どうにも邪悪な気配がするのだが」
下で高官や騎士たちがオロオロしている。
浮遊などは驚くほどの魔法では無いはずなんだけどな。まぁいいか・・
「ははは、此処は大気中の魔力が豊富だな」
すでに俺の周囲には濁流のごとく魔力が集まって来ている。
久し振りに最高の気分だ。
ふはははははははっ。
「ひっ、ひゃぁああああああっ」
「何だ、どうしたと言うのだ。魔導士長‼」
「あ、ありえん。あれほどの魔力、あの者は神か?」
今度は老人が喚いている。さすがに神様あつかいは恥ずかしいのだが。
・・・・・・よし、使用する魔力はこんなものだろう。
仮にも魔王を倒すのだしな。
「んじゃ、行くぞ。テンプレ大魔法の定番、《メテオ》」どやっ
久々の全力魔法・・・気分良かーーー、スッキリしたわ
魔王の国は別の大陸だし問題ないだろう。うん
次の瞬間地表が暗くなった。
視界全てに影がかかっている。
隕石の影が皆既日食に成った時のように世界を暗くしたのだ。
うん、そうだね。隕石がデカすぎたのだ。さすが全力魔法。
(ヤベッ、高度を上げよう。結界も三重に掛けておくかな)
隕石が大気圏で燃え出した。気温も少し暑くなってきたぞ。
巨大な火の玉が地平線に消えていく・・・
刹那、地表がぶれたように見える・・。
恐らく震度10以上の地震が一瞬に起こったのだろう。
ドドドドドーーッ
あーあ、下に有った王城が崩壊していく。
城下町も同じだろう。
だが、こちらは心配は無い。何故か城下町は見渡す限り平屋の建物しか無かった。
しかもテントのような作りの屋根が重くないタイプだ。
要するに城と貴族街だけが立派で豪華絢爛なのである。
この国の政治体制が知れると言うものだろう。
沿岸部では津波が起こったかもな・・。
だが、そちらも無問題。
今は魔族が海を越えて侵攻しているらしいから沿岸部には町は無いはずだ。
それに王都でこの程度なら地方でも建物は大差無いはずだ。
結果、被害に遭うのは贅沢な生活を維持するためにオレを誘拐して当然な顔をしていた一部の奴らだけだ。自業自得だね
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォーーッ
少しして結界で守られたはずの俺をゆさぶる重低音が嵐のごとく押し寄せた。
考えてみたら当たり前の話だった。
魔法で隕石を星にぶつけるのだからこうなるさ。
エンタメは現実になってはイケナイのだな。失敗失敗
ほんの小さな隕石が地表に落ちただけで大きなクレーターが出来るほどの破壊力なのは周知の通りだ。
それを人為的に魔法で落とす、しかも試した事など無いから加減など知らない。
結果として・・・
魔王・・・・・・標的だった大きな魔力反応は無い。
魔王は死んだ・・・・なむ
今の隕石でこの星の自転周期はズレたかも知れないし、下手すると衛星軌道も変わったかもな。
強大な力を使うと言う事はこういう結果を生むという事だ。
地球の核兵器なんてこの上に放射能のオマケ付きだぞ。
そして、地球で魔法に制限をした女神にはグッジョブの賛辞を贈ろう。
ダンジョンの外では特性やスキルが使えないのも英断と言えるだろう。
ただし、オレだけは外でも魔法が使える。
ひょっとして・・・地球でもダンジョン以外では攻撃魔法の制限が無かったりして
・・・・・・シャレにならないけど試してみようかな。ただしメテオは無し
今回の経験を生かして災害級の魔法は使わないぞ。
さて、御要望の魔王討伐は適えたし文句は無いだろ。帰ろう
全ては召喚などしでかした女神と王家の責任だな。うん
女神よ、
手を汚さないキレイ事だけの主人公が欲しいならそういう人材を選ぶんだな。
いや、違うな。これに懲りて二度と勇者召喚などしない事だ。
《わ、私の世界が・・この悪魔ーー・・・》
「はいはい、神様に都合が悪い者は全て悪魔と相場は決まってるからな」
勝手に好きに呼べばいいだろ。
さてと・・帰ろう
こんな事もあろうかと予め自分の家の時間軸も空間座標も次元断層も記録してある。
神に頼らなくても帰れるのだ。
「んじゃぁ・・転移」
無事に自分の家に帰った。
パラレルワールドの別次元の我が家、というオチでは無く本当に自分の家だ。
ただし・・
「何で皆が俺の家に入り込んでいるんだよ?さすがに不法侵入だぞ」
狭い家の中に
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
・・・・・・・?
「兄様?」
「真か?」
「真君?」
「何処に行ってたの(じゃ)‼」
怒涛の如く皆から詰め寄られた。
聞けば一ヶ月も行方不明になってたらしい。
「またムチャしてダンジョンで死んでしもうたと思ったではないか。バカ者」
ごめんよーーーー。
結局、召喚による被害は大きかったよ
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