第12話思い出した

オレは思い出した。


前世で死ぬ間際に何を願っていたのかを・・。


それはどんな組織にも権力にも誰にも命令されない自分の意志で生きる生活。


自分の時間は自分で使う生活を願った。


******************


芽芽めめのパーティと千歳ダンジョンを探索した日は夜遅くまで事情徴収やら現場確認などに時間を取られ家に帰ることが出来なかった。


ダンジョン近くにはビジネスホテルが完備されているのでそこで一泊し学校は休むしかない。


「はぁぁ・・明日学校行きたくない・・」


「もう世間に知られちゃったしぃ、このまま私たちのパーティに入るべきだよ」


轟 春奈とどろき はるなが懲りずに勧誘してくる。


確かにオレが意図的に守っていた「普通の学生生活」も今後は難しいかもしれない。


「で・・オレの平和な生活を犠牲にしたんだ、女神の嫌がらせ 、だったな、それが何か聞かせてもらおうか」


「そうだねティート・・いや真が私たちの冤罪を晴らしてくれたから助かったし、恩は返さないとね」


琴平 涼香ことひら すずかがオレの前世の名前で呼ぼうとしたので睨んだら素早く言い直した。恥ずかしいからこの世界(日本)で前世の名前はやめてほしい。


そして、オレは魔法使いの華とも言える攻撃魔法がショボイ理由を知った。


日本人が無意識の内に信じている八百万の神々、その中には結婚の神としてキリストさんが足場を作り、葬式と供養の神としてお釈迦様が認知されている。それぞれ和を乱さなければ外来の神様だろうと存在が許される環境だ。だからこそ日本国内で宗教がらみの醜い戦いが少ないとも言える。


そんな日本にダンジョンが出来た。それは今までにない分野である。そしてその中で特性が付与される現象が起きた。ゲームで言うジョブ、職業、アビリティなどで表現されるソレは人生に大きな影響力を持つまでになった。神様が管理してしかるべき重大なポストと言える。ところが突然発生したことで司る神が居ない。


その空席に収まったのが異世界から遊びに来ていた女神なのだそうな。


何とその女神様、基本無料のオンラインMMOにはまり、架空のアカウントをまで作りプレイに夢中になっていたらしい。

ソロで剣士をプレイしていた彼女は有る時から魔法使いのPKに粘着され 色々と不愉快な いやがらせを受けたらしい。

そんな思いをした女神さまが特性を司るポストに就いたのだ、魔法使いの能力が下方修正されるのは必然であった。


あきれ果てた話である。


まして、当事者である魔法使いからしたらたまったものではない。


何故、彼女たちがこんな裏情報を知っているかと聞くと、

彼女達パーティが現代日本に転生する時、他の神様から「魔法使いが居るなら注意するように」とアドバイスされたらしい。


時間的にその夜はここまで聞くのが限界だった。


まだまだ聞きたい事は多いがこれが潮時だ。

パーティを組んで深く関わるつもりが無いならここまでだろう。


有名な 深緑の鏃しんりょく  やじりとダンジョンを探索した事で少しの間オレも注目されるだろうけど、それもやがて忘れられるだろう。


俺は平凡な魔法使いが良いのだ。


誰も注目しないモブ、それが凶悪なオレの全力を十全に使う為の最善な立ち位置なのだから。


**************************




「退学届け・・か。有名なチームに入るから学校は必要ないというわけだな」


嫌みか‥所詮学校なんてこんなもんか。


「魔法使いで有名チームに入るチャンスは少ないからな無理も無いか・・」


生徒の成功だと思うなら喜べよ。


そもそも 俺がメメ達のパーティに入るなんて一言も行って無いぞ。



一日休みを置いて登校した俺は学校を辞めた。


教師には色々と誤解されたままだが別に支障は無い。


千歳ダンジョンでの出来事がテレビで何度もニュースになってしまった。


モザイク無しで放映された事でオレが深緑の鏃しんりょく  やじりとパーティ

を組んで探索したのが学校中にバレた。


そこまでは覚悟していた事だ、だがその後がいけない。



「おぅ、藤原。探したぜ、お前は明日から俺らのパーティの荷物持ちな。文句ねぇな」


あの一件でオレがアイテムボックス持ちだと知れ渡ってしまった。


本当はストレージだが他人が見分ける事など出来ない。


有名チームが誘うほどのアイテムボックスを持つと宣伝した形となり

今もオレの意志を無視して利用しようとする上級生に脅迫されている。


「荷物持ちなんかやらねぇよ。もう、先輩でも後輩でもないからな。気安く話しかけるなよ」


「あぁ‼、てみぇえ、にゃにいきにゃっやらる。・??はりぇ」


ろれつが回らなくなった脅迫男は立っていることも出来なくなりその場に座りこんでしまった。

 

魔法使いの使う魔法で女神に妨害されているのは「威力が強い魔法」や「広域殲滅魔法」だ。


しかし、細胞の一点に魔力を集約し焼き切る程度なら強い魔法に入らず制約も無い。


脳ミソの一点を破壊するだけで人は多くの機能障害を起こす。


脳内出血は誰も魔法でやったとは思わない。


つまりそういう事だ。


暴力でオレの自由を奪おうとしたのだから反撃されて体の自由を失ったとしても文句あるまい。


運が良ければ時間と共に普通の生活にもどれるさ。


「幸運を祈るぜ、オレを奴隷にしようとした先輩」


言葉で他人を貶し、追い込んで自殺までさせても証拠が無くては罪にならない。


どんなに理不尽な事を他人に押し付けて心を傷つけても当人は正しい事をしていると思い込んで反省すらしない人間など腐るほどいる。


ならば、


法律に触れないようにそれらの魔物を排除して何が悪いか






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