闘魂技

タコス総督

闘魂技解放編

第壱話! 闘魂伝はフィクションだ!実際の地名、学校、組織は全て架空のモンだ!そこんとこ夜露死苦!

 闘魂技、それは人類の体に宿るエネルギー。それは全てのヤンキーの闘う活力でもあり、スゲェ一撃を食らわす燃料でもあり、プライドでもある。闘魂技を解放するには、直接体に闘魂技を打ち込まれるしかない。たちまちどんなもヤンキーになる。




 4月4日 午前9時 埼玉埼玉県立和光第二高等学校 体育館


 「続いて、新入生への言葉。在校生代表石浦瑛馬いしうらえま


 校庭に咲く桜が風によって散る季節。埼玉の和光市にあるこの高校では入学式が行われている。その高校は不幸にも、4つのヤンキー高校に囲まれたとても最悪な高校。そしてさらに最悪なことに、この高校は他よりも1日だけ入学式が遅い。


 この意味がわかるかな......


 「お~い、まだ終わんねぇのかよ、ゴラァ!」


 「入学式なんて秒で終わらせてよ、早く金持ってそうな1年出せやァ!!」


 「エロイ1年抱きて~おいセンコー裏で食ってんじゃねぇ~だろうなァ!!!」


 「はよ出てコイや! おっせぇ~な、ぶち殺すぞコノヤロウ!!!!」


 とまぁ、生きのいいヤンキー達の怒号が、閉め切った体育館の中まで聞こえるのが毎年の風物詩らしい。


 こんな怒号の中でもなぜか睡魔が俺を襲う。なぜだだろう、まぁ多分この暖かい気温と今しゃべってる人の声なんだと思う。確か名前は......石浦瑛馬だっけ、後頭部の上らへんで束ねた茶髪のポニーテール。紺色のブレザーに包まれた平均的な体型。胸は埼玉だから察するとして、彼女の口から発するやさしい美声が......


 「うっさいんじゃボケゴラァ! ぶち殺すぞゴミどもが!」


 たちまち屋外のヤンキーにも負けない怒号へと変わってしまった。


 「ゴホン、え~知っての通りわが校は、東の灘波工業なんぱこうぎょう高等学校、西のセントローゼン女子高等高校、南の室上むろがみ高等専門学校、そして北の和光第一高等学校に囲まれて日々口々に言われるのです、カモ高シバキに行こうぜと。確かにわが校は周りに比べれば、偏差値も低いし特質部活に強くもない滑り止めの受け皿のような高校です。だからってヤンキーどもに絡まれるいい理由にはなりません!」


 急にどうしたんだ、人が変わったように演説なんかして......


 「ですので、私はここに宣言します。生徒会長石浦瑛馬は、この学校をなめられない学校にするため、ヤンキーを募集します! 我こそはと言う者は、後で生徒会長室に来なさい! 以上!」


 一礼し舞台から降りると生徒と保護者が一斉にそわそわしだし、教師が慌ててマイクで教室に戻るよう指示を出した。


 訳もわからないまま俺たちは強制的に教室へ移動させられた。あれ、本気なのかな?




 4階の教室へ戻ると、話は生徒会長の話題で埋め尽くされていた。驚いた者、やめてくれと困る者、鵜呑みにして志願しようとする者も現れ、一種のパニックになっていた。


 「やぁ......ねねぇ、さっきの会長のアレ本気なのかかな?」


 「あ?」この教室に知り合いなんていないはずの俺に話しかけてきたのは近藤弾こんどうだんと言う中学で3年間同じクラスのオタク野郎。ブレザーから今にもはみ出そうな100キロをゆうに超えそうな脂肪体デブ、油まみれのキモイ髪、そしてこいつが嫌われる理由のニキビ面、「揚げ物や甘いものが大好きなんだよね~」の一言でいじめられた悲しい奴。中学のあだ名はニキニキ。


 「だから、ささっきの本当なのかな~て」


 「さぁ? 俺が知るわけないじゃん」こいつとはなるべく話したくない、素っ気なく終わらせると


 「お、落ちぶれたね、ともくん。ああんなに中学では1人気者だったのに、すすかり僕以下の3軍陰キャの類になってて草」


 「いいんだよ、俺はで」うぜぇ、これに尽きる。俺が劣勢に見えたのかこれ見よがしに早口で畳みかけてくる。


 「ふ、のお前がオタクでもないのに陰キャをか語るな」制服のポケットから、本屋のカバーが付いた本を俺に突きつけ「じゃじゃじゃラノベ持ってるんですか? 散々キミがエロ本と揶揄やゆしたラノベ持ってるんですかァ?」


 俺を煽り散らかしてそんなに楽しいかこのくそデブが。うざくなった俺は机に自分の顔を押し付けて寝たふりの体勢をとった。


 それでもこのデブは煽って来やがる。しばらく机に埋もれてると、机に何か置いてすたすたと自分の席へと帰っていった。やっと行ったか、重たい顔を起こすと端に本が一冊置いてあった。


 「おい忘れ......」立とうと椅子を引いた瞬間、「おい静かにしろ、立ってるやつ席に座れ」おそらく担任であろう先生が教室に入ってきて、返すタイミングを逃してしまう。


 しかしよく見ると本屋のカバーの間に紙のような物が挟まっていた。取ると殴り書きでと書かれ、さらにカバーを外すと美少女の絵が描かれた「ベト戦好きの軍事オタクが異世界でチート能力を使って美少女傭兵タスクフォースを作って勝ち組スロー生活ライフ」と言うタイトルと呼べるのかわからない小説ラノベだ。


 まさか、これ俺にくれるのか? かつていじめたあのデブが俺のために自分のエロほじゃなくて小説を・・・嬉しいなんて思うはずがないだろ。俺はなんの慈悲じひもなく本を床に払い落す。


 「え~まず担任の自己紹介の前に、さっきの体育館での事は忘れてくれ。鵜呑みにして不良なんかにはなるなよ絶対に」


 先生の話が終わると教室中の生徒は口々に野次を飛ばす。「なんであんな事を言ったんですか?」とか「あの女が煽ったせいで余計にひどくなるよ」など、より一層不安に駆られている。


 「生徒会長には俺からもきつく言っておくから。よし、じゃ~気を取り直してまずは俺から自己紹介だ! 今日から1組の担任になる島根隆一しまねりゅういちだ。好きなことは西部ジャッカルを応援すること、嫌いなものは不良と争いごとだ。1年間受け持つことになるから、よろしくな」何組もありそうな言い方だが、クラスは俺のいる1組いかない。


 どうやらうちの担任はゴリゴリの体育会系のようだ。綺麗に固めた黒髪のオールバックに黒く焼けた肌。鍛えられた体に高身長。入学式だから黒色のスーツを着てるが、普段は絶対スポーツウェア着てそう。正直第一印象はイカツイの一言、この成りで不良嫌いってなぁ。


 「じゃあ今度は一人ずつ自己紹介してもらおうかな」


 「えーーー」皆一斉に嫌がる。


 「えーじゃねぇよ、中学と違って顔見知りも少ないんだから」地元じゃ、ここに行きたくないがために必死に勉強するからな。


 「先生みたいに名前と何か一言だけ言えばいいからな、じゃあ出席番号一番から」そう言うと最初の人が教壇に立つ。


 「安西拳市あんざいけんいちです。福岡から越してきました。よろしくお願いします」


 安西の自己紹介が終わるとクラスの女子が一斉にひそひそしゃべりだした。なぜかって、こいつ超が付くイケメンだからだ。身長は先生より少し低くスポーツでもやっていたのか全体的に引き締まった体型。爽やかな黒髪のツーブロック。口調からしてクールで礼儀キャラと見る。女子が好むイケメンの要素がこいつには詰まっている。

 

 「じゃあ次の人前に」


 「は、はい......」くそデブこと近藤の番が回ってきた。


 「こ近藤だ弾です。......オタクですよろしくお願いします」相変わらずの噛みカミで聞き取れなかったが、クラスの反応が最悪なのは伝わった。


 そしてこいつの後、しばらくしていよいよ俺の番が回ってきた。別に緊張なんてしていない、こう言うのはごく普通に真面目に答えればいい。変なボケ入れて笑いを取ろうなんて考えない、この学校ではって決めてるんだ。俺は席を立ち、教壇へと立った。


 「本田日脚ほんだひあしです、高校では部活を頑張りたいです。よろしくお願いします」俺は安西をも超えるイケメンとも嘘コケるが、言ったって意味ない。身長は安西とほぼ変わらない。髪型は部活やめてから切ってない、茶髪のもっさりしたヘルメットみたいな髪型。体型は平均的で筋トレをサボったため筋肉は落ちた。


 俺は大体こんなもんだ、役目を終えた俺は自分の席に戻った。

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