愛だったのか分からない
仲仁へび(旧:離久)
第1話
「あんたなんて育てたくなかったのに!」
ぶたれた頬が痛くて、涙を流した。
私は追い立てられるようにして家を出ていく。
外は雨が降っていて、寒かった。
母の機嫌がなおるまで、どれだけ外にいなければならないのだろう。
離婚した夫に似た娘なんて、愛せるわけがなかったのだ。
私は母に嫌われていた。
だから幼い頃から、よく折檻された。
家から出されたり、食事を抜かれたりする事は頻繁にあった。
私は、そんな境遇にずっといた。
でも、そんな私を助けてくれる幼馴染の男の子がいた。
家から追い出されたら、一緒にそばにいてくれたり、ご飯をぬかれたら、自分のおやつをくれた。
だから私は自然とその男の子の事が好きになった。
小学生になって、他の子供と遊ぶようになった時は、嫉妬したけど。
私はその子にふさわしくないんだと思って、何も言わなかった。
男の子は明るくて、優しくて、思いやりがあって、元気で、良い所しか見つからなかったから。
多くの人と仲良くなれて当然だと思った。
中学生になった時は、我慢するのが大変だった。
ずっと彼の事を見ていたくなったし、かまってほしくなった。
必死で我慢して、ただの幼馴染のままでいようと努力した。
高校生になった時、男の子に彼女ができた時は頭がおかしくなりそうになった。
おもいつめて、頭の中にあった事を実際に行動にうつそうと思った事もあった。
でも、しなかった。
偶然の事故が、男の子とその彼女を奪い去ったからだ。
同じ時期に、母親も病で死んで、私は色々なものから解放された。
けれど、同じだけ空虚になった。
あれは愛だったのか分からない。
ただの執着だったかもしれない。
でも、男の子が困っていたら、私は何でもしてあげたいと思っていたし、辛い事もあったけど、男の子の事を考えている時は幸せだった。
男の子に命の危機が訪れたら、身を挺して助けてあげたいとも思っていた。
あれは愛だったのだろうか。
それとも、唯一の心のよりどころに見せる、ただの執着だったのだろうか。
愛だったのか分からない 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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