「サンタが如く」その⑫
12
景虎たちと魔法のそりは凰船に戻り八咫超常現象研究所の屋上に滑り込んだ。景虎と紫苑は着地の衝撃でそりから投げ出され、雪の積もる屋上に転がった。そして吹雪に晒される。
景虎はクネヒトごと海へ飛び込むつもりだった。まず景虎は助からないが、クネヒトもただではすまないだろう。相討ちに出来ずしぶとく生きていても大幅に時間は稼げるはず。その間に金貨を配れればこちらの勝ちだ。自分の命くらい安いもの。そう考えていた。
だが、キッドは引き返し空を落ちる景虎をそりでキャッチしてその勢いでワープした。当然クネヒトも一緒にワープして凰船まで来てしまった。しかも予定と違う位置でワープしたので、その先も変わってしまった。本当は凰船駅上空の予定だったのだ。
「景虎さん、馬鹿な真似はやめてください。海へ飛び込むなんて、もしあなたが死んだら私は幸福になんか絶対になれません」
紫苑はふらふらしながら景虎を助け起こす。その白い顔も脚も、真っ赤になっていた。寒いというより痛かった。きっと紫苑も同じだろう。
「悪かったよ、でもあの場はああするしか無かった。大して効いてなさそうだけどな」
同じ様に屋上にワープしてきたクネヒトは、背後にたくさんの悪霊を従えてふらふらと起き上がった。その身体は少しずつ再生していく。動き出すのは時間の問題だろう。
「カゲトラ、惨めな奴め。お前にサンタ風邪として取り憑いた時、全て見えたぞ。──お前は偽善者だ。本当は他人なんてどうでもいいと思っているんだろ? なのに今は善人ぶって人助けなんてしてやがる。お前は自分が分かってない……。「罪滅ぼし」のつもりなら見当違いも良いとこだ。お前は、根っからの悪人さ、カゲトラ」
クネヒトは不気味な笑みを浮かべながらゆっくりと身体を再生させ、景虎と紫苑に近づいてくる。紫苑は、景虎の腕をきゅっと掴んだ。
「クネヒトの言葉に耳を貸さないでください。私の声を聞いて、あなたはとても素敵な人です。今まで幽霊だろうと狸だろうと、私の事だって救ってきました。私はあなたも八咫超常現象研究所もクリスマスも大好きです」
その言葉からは、紫苑の気持ちがしっかりと伝わってきた。
景虎にも分かる。先程、命を賭けて相討ちにしようとしたのはその価値があると思ったからだ。景虎だって、紫苑も咲耶も八咫超常現象研究所も、今はクリスマスだって好きになった。
「あいつの出まかせなんて最初から聞いちゃいないさ。大丈夫だから、紫苑。お前はあっちでノビてるキッドを起こしてプレゼントを配れ、金貨はキッドのとこにあるから。クネヒトは俺が足止めする」
景虎たちから少し離れた位置に、倒れるキッドとひっくり返った魔法のそりが一緒にあった。「サンタの武器」と「魔法の金貨」はそりに積んであったので、今はひっくり返ったそりの下敷きだろう。
「武器ならそりの下にある筈だ。それを持って早く行け、お前がいたら戦いにくいだろ」
「嫌です、どこにも行きません。景虎さんはまだ死ぬおつもりですよね。だったら、どこにも行きませんから」
クネヒト・ループレヒトと大量の悪霊を相手にすればおそらく無事ではいられないだろう。だが、足止めを誰かがしなければ結局追いつかれて同じ事だ。迂闊に金貨を撒けばそれが「良い子」の元に配られる前に横取りされてしまう。
「そんな事を言ってる場合じゃないだろ、俺たちの目的はクリスマスにプレゼントを贈る事だ。あとはこの街に配れば終わりだ。だから、行ってくれ。俺は大丈夫」
「嫌です、私は杖がないと一人で歩けません。今日は杖を忘れました。だから、景虎さんが私の杖なんです。一緒じゃないならどこにも行きません」
景虎が紫苑を見ると、今までで一番強い眼差しを向けてきていた。意外と頑固な奴だな、と景虎は思った。それなら仕方ない。
紫苑を背後に押しやってから、景虎は足元に落ちていたナックルダスターを拾い、利き手の左手に装着した。
「俺が囮になってその隙にプレゼントを配る。そういう判定勝ちに持ち込もうと思ってた。けど、紫苑。お前がKO勝ちが良いって言うなら……。倒れるまで戦ってやるよ」
景虎はファイティングポーズをとった。そして大きく息を吸い込む。
景虎の父はプロボクサーだった。そのファイトスタイルはインファイト一辺倒で泥臭く技術なんて無い。だが、観るものを魅了する熱い試合をたくさんやった。倒れるまで戦い、いつもぼろぼろになりながらも景虎の元へ必ず帰ってきた。
リングは一人きりの孤独な戦場だ。しかし一歩降りれば誰かがいる。逃げる事も出来た。それでもリングを降りてはいけない。その誰かの為に、父はそうやって戦い続けた。
「今年、親父の事を思い出したり、母さんの気持ちを知ったり……。運命だったのかもな」
──。
「そうだ、全ては運命だ。魔法の金貨の導きのもと、お前にも幸福が訪れる。カゲトラ、お前は『良い子』だ」
その時、景虎の肩に大きな手が優しく乗せられた。夜の暗闇で眩しいほどに赤いその服と、ふわふわの白い髭は見間違う筈がない。
「サンタクロース……。来てくれたのか、酔っ払ってねえだろうな」
「馬鹿を言え、わしは相模湖でも飲み干せるぞ」
その背後、空中にたくさんの円が浮かび上がっていた。それはキッドが作ったワープの魔法陣に似ている。全部で四十六個ほどあり、その光る円から次々とサンタクロースと魔法のそり、相棒のトナカイが飛び出してくる。
47都道府県のサンタクロースたちは、八咫超常現象研究所の活躍に胸を打たれ、咲耶の言葉にその使命を気付かされた。
彼らはクリスマスの怨念と化したクネヒト・ループレヒトを退治するために今、再び集うのだった。「ホーウ、ホーウ」と笑いながら空飛ぶ魔法のそりで夜を駆け、聖なる武器で飛び回る悪霊を撃ち落としていく。
「悪霊供はわしの兄弟たちに任せよう。しかしクネヒトはわしの弱い心が呼び寄せた悪魔だ。わしが決着をつける。──だが、わしは見てのとおりの老いぼれだ。手伝ってくれるか、カゲトラ?」
「よく言うぜ。あんたほどマッチョな老人は見たことねえよ。けど喜んで手伝おう。サンタクロースと一緒に戦う機会はもう巡ってこないだろうしな」
景虎が言うと、サンタは「ホーウホーウ」と笑い声を上げた。
「では、シオン。あっちで寝ている良い子のキッドを叩き起こしてくれんか? クネヒトを倒した後はプレゼント配りを再開せにゃならん」
紫苑は感激で少し涙が出てきた。そして「了解です」。と力強く答えると吹雪の中、迷わずにキッドとそりへ向かった。
◯
サンタは走り出し、吹雪をものともせずクネヒトへ突進して行く。景虎もその後を追った。
「ここは建物に近すぎる、火炎放射器は使えんぞ」
「じゃあどうやって倒すんだ」
「飛び道具が使えぬのなら、そんなもの決まっておる。お前の一番好きなやり方だ」
景虎はサンタの言っている事が分かった。
走りながら、コートの内ポケットに入れてあった「右手用」の聖なるナックルダスターを取り出して前を走るサンタに投げた。サンタはそれを確認もせず後ろ手で受け取ると右手に装着してクネヒトに飛びかかる。
クネヒトの左頬にサンタの重い一撃が入った。思わずクネヒトの身体は大きく傾く。そして、ぎろりと二つの目玉がサンタを捉えた。
「サンタクロース、久しぶりだな。腰抜けが何しに戻ってきたんだ?」
「口を閉じてろクネヒト。舌を噛んでも知らんぞ」
サンタクロースはかなり戦い慣れていた。クネヒトに負けず劣らずの超人的な動きで拳を打ち込んでいく。そして景虎も追いついた。サンタが攻撃し、二の矢、三の矢と景虎も続けて拳で追撃した。
どれだけ殴り合ったか分からない。しかし、最初は激しく抵抗していたクネヒト・ループレヒトの勢いが目に見えて落ちてきた。おそらく、他の四十六人のサンタたちが上空で悪霊を退治しているおかげだろう。クネヒトに力を送っていた悪霊の数は減り、凰船以外の街へ「魔法の金貨」は配り終えている。クネヒトはかなり弱体化し始めているのだ。
そしてあと一押し、そう思った時だった。クネヒトは残った力を解放するかの様に全身から吹雪を放った。それはうねる様な挙動で景虎とサンタクロースを巻き込んでいく。その吹雪は恐ろしく冷たく、そして怨念渦巻く不快な旋律を奏でながら轟々と渦巻いて二人を吹き飛ばした。
「なんだよあれ、ビームみたいなのは反則だろ」
「今のあいつは怨念と吹雪の化け物だぞ。あれに乗って移動するのを見なかったのか?」
景虎とサンタはすぐに起き上がって構えた。足元や指先など痛いほど冷たい。体温を吸い取られた様に震えが止まらなかった。口には出さないが、景虎は全身が凍るのではないかと思うほど寒さを感じていた。
クネヒトは再び先程の吹雪を放った。接近戦は不利と踏んだのだろう。しかし、その二発目が景虎とサンタに直撃する事はなかった。
「お待たせ、サンタ師匠!」
トナカイのキッドが紫苑を乗せてそりを滑り込ませてきたのだ。紫苑が慌ててプレゼントの袋を抱えてそりから降りた。するとすぐにサンタはそりを掴み、その怪力でそりを横に倒して壁の様にした。
そりに吹雪がぶつかったらしい。そりを抑える手に衝撃と重みを感じる。そしてそれは凄まじい威力だった。
景虎も紫苑も、トナカイ姿のキッドも、みんなでサンタに並んでそりを抑えた。だが、じわじわと押されてくる。
「あいつをどうやって倒すんだよ、殴っても焼いても死なないんだぞ」
「クネヒトは生き物じゃない。クリスマスの夜に『悪い子』にお仕置きをする、という概念だ。あいつに「死」はない。わしみたいに役割を放棄したりもしなさそうだしな」
景虎が悲痛の叫びを上げると、それにサンタは冷静な言葉を返した。あいつは死なない。だが、手がないわけではない。サンタはやっと覚悟が決まった。
「最後の手段がある。だが、その為にはわしは消耗し過ぎた。力を分けてくれ、わしに『クリスマスの思い出』を聞かせてくれるだけで良い」
サンタが言うと、紫苑もキッドも景虎を見た。
景虎は一呼吸おいて状況を理解し、恥ずかしそうに叫んだ。
「クリスマスの思い出だって? 嫌だ、そんなシャバい話を人に聞かせられるか!」
「お願いします景虎さん、男のプライドは命より大事だと以前仰ってましたが今はどうか、それを捨ててください」
「カゲトラ、頼むよ。俺ももう限界なんだ、みんな潰されちゃうよ」
紫苑とキッドは懇願するように上目遣いで景虎を見つめる。たしかに、状況的に他の手はなさそうだ。景虎は大きく息を吐いて観念したようにぼそぼそと呟いた。
「クリスマスのあれ、なんて言ったかな……。『アドベントカレンダー』だ。うちの家はあれを毎年母さんが買ってきてくれた。クリスマスまで一日一つチョコレートをカレンダーのポケットから取って食べるんだ。俺はあれが好きだった、クリスマスもサンタクロースも楽しみだった」
景虎はそこまで話すと一度黙り、今度はサンタを見つめた。目が合うと言葉を続ける。
「悪かった、サンタさん。俺はあんたの事もクリスマスの事も、本当は大好きだったんだ」
景虎の言葉でサンタは目を見開いた。その心は温まり、身体の内から力が湧いてくるのを感じる。やはり、この仕事は辞められない。
サンタは「そうか」と呟き微笑んだ。
「クネヒト・ループレヒト、道を違えた兄弟よ。わしはあいつにもプレゼントを贈らないといかんな。それも、とびきりキツいやつをな」
◯
その瞬間、サンタは壁にしていたそりを放り投げた。しかし、吹雪が景虎たちに当たる事はない。サンタが自らの身体を壁にしてクネヒトまで突き進んでいるからだ。
吹雪を受けてサンタの身体は少しずつ凍っていく。だが、止まるわけにはいかない。背後には愛すべき存在が控えているからだ。サンタは吹雪を一身に受けながら「最後の」力を振り絞って前進した。
そしてクネヒトの目の前まで辿り着くと、流石のクネヒトも怯んだらしい。その隙を突き、サンタは自身の服のポケットから「魔法の金貨」を取り出し、右手に握った。そしてその右手でクネヒトを力任せに殴りつける。クネヒトは先程とは比べ物にならないほどの威力の拳に驚いて放っていた吹雪を止めた。そしてサンタの二発目の拳でついに膝をつく。しかしサンタはクネヒトの胸ぐらを掴んで無理やり起き上がらせた。
「ま、待てサンタクロース。お前は何をやったんだ、あり得ない、このわしが……」
「口を閉じないと舌を噛むと言っただろう」
サンタは無視してクネヒトの顔面を右手で殴った。殴られたクネヒトの顔はぼろぼろと雪と氷の様に崩れ始める。
「そうか、分かったぞ。お前「魔法の金貨」を使っているな、そんな事をしたらお前も消えるぞ」
「魔法の金貨」は一人につき一枚、それはサンタも同じだった。サンタは役割を放棄した為、もはやその存在は消える運命にあった。だが、今は自分用の金貨の力で何とか存在を保っている状態だ。
今のクネヒト・ループレヒトは伝承とは違い『不幸』そのもので、それを呼び起こす存在。ならば『幸福』そのものである「魔法の金貨」の力を使えば「相殺」させてクネヒトを無に帰す事ができるかも知れない。
「やめてくれ、サンタクロース! お前は人間に愛想を尽かしたんじゃないのか」
気が変わったのさ、サンタは無視してもう一発殴った。クネヒトの右肩から下が崩れ落ちる。
「どうせ人間は勝手に幸福になって勝手に不幸になり、勝手に争って勝手に死ぬ。わしたちは関係ないぞ! お前がプレゼントを配ろうが無意味だ!」
「それの何がいけないんだ。わしは喜んで貰えたら嬉しい。それを思い出したのだ」
さらに一発殴ると、クネヒトの顔の左半分も崩れて、ほぼその顔は口だけになった。クネヒトは往生際が悪く、喚き出す。
「わしはクネヒト・ループレヒト、クリスマスの夜に悪い子にお仕置きする超常の存在だ! 神だ! お前らなんぞに負けてたまるか! わしは、無敵だ!」
「なら、わしはサンタクロースだ。お前もわしも、それでしかないのだ。神様なんて上等なものじゃない」
サンタは最後に拳を放った。すると、クネヒトの身体はぼろぼろと崩れて雪に舞って消えた。集まった怨霊たちも自然に消滅していくのだった。
──。
クネヒト・ループレヒトが無に帰り、消滅すると吹雪は止んだ。時刻は二十三時過ぎ、まだ今夜中にプレゼントが間に合いそうだ。
先程までの猛吹雪のせいで、人が誰もいない凰船の街の夜空をサンタは飛んだ。そりには景虎と紫苑、そして風邪が嘘のように治ってしまった咲耶が乗っていた。ノザワも一緒にプレゼント配りに誘ったが、断られてしまった。
「私はサンタが飛ぶのを見ながら酒を飲むのが好きなのさ」
まったくニヒルな人だなと咲耶は呆れてしまう。
もちろん魔法のそりを操縦するのはサンタクロースで飛ばすのはトナカイのキッドだ。
「それにしてもお土産をたくさん貰っちゃったわね」
後部座席には咲耶と紫苑が座り、その二人の間には全国のご当地グルメやお菓子が白い袋いっぱいに入っていた。これは四十六人のサンタたちがお土産に置いていったものだ。
「今回の報酬はこれにしましょうか」
咲耶がそんな事を紫苑と後部座席で話している時、前の座席でそりを操縦していたサンタクロースは意識を失っていた。景虎は気がつき、慌てて声をかけた。
「おい、サンタ起きろ。あんたはまだこの街に必要だ!」
──サンタクロースは既に力を使い果たしていた。だが、ここで消えてしまっても良いと思った。後任はキッドもいるし、八咫超常現象研究所もある。幸せだった。もう、プレゼントは必要ない。この街の人々は強い。
だが、一つ心残りがあるならば、やはりもっともっと『サンタクロース』をやりたかった。今なら間違いなくそう思うことができる。
そして、サンタはその幸福に包まれて消える、はずだった。
あわてんぼうのサンタクロース。
クリスマスまえにやってきた
急いでりんりんりん
急いでりんりんりん
鳴らしてくれよ鐘よ
不意に聴こえてきたその歌でサンタは、はっと目を覚ました。何が起こったのか、歌声が聞こえて目が覚めた。凍っていた身体も今は暖かい。
「──あんたの耳は『聖なる耳』なんだろ? サンタを信じる者の声が聞こえるっていう。本当だったらしいな、起きてくれて安心したよ」
サンタは訳が分からず、呆然とした。だが身体の調子がすこぶる良い。力がみなぎるようだ。そして頭に響く美しい鐘の音と歌は何なのか。景虎は言葉を続けた。
「今、この街の教会でクリスマスミサをやってるんだ。俺には聞こえないが、あんたが聞いてる歌声はあんたを讃えるみんなの歌だ。サンタクロースの為に子供たちが夜更かしして歌ってる。みんな、クリスマスにはあんたに来てほしいんだよ」
「わしの、為に……?」
「そうだよ、ワムとかマライア・キャリーの方がお好みだったか?」
景虎がいたずらっぽく笑うと、サンタも困ったように笑い返した。その頬には涙が伝っていた。
「いいや、最高の歌だ。こんなに、嬉しい事はない。わしは、こんな素晴らしいクリスマスプレゼントをもらったのは初めてだ。まだ、サンタクロースを続けて良いというのか、一度は逃げたこのわしが」
「でもあんたは帰ってきた。お帰りサンタさん。メリークリスマス」
景虎がまた笑いかけると、サンタはおいおいと声を上げながら泣いた。そして泣きながら残りの「魔法の金貨」を月明かりの下で配っていく。
街に落ちて光の粒となった金貨は輝きながら消えていく。きっと誰かの幸福になるのだろう。
キッドも「おかえり!」と言って喜んだ。またサンタは来年も再来年もずっとクリスマスと共に在り続ける。それを今夜誓ったのだった。
聖なる夜。サンタクロースの元にも、その『軌跡』は起こったのだった。
◯
八咫超常現象研究所がサンタが如く夜を駆けたクリスマスイブはこうして幕を閉じた。
翌日の二十五日、サンタクロースと少年姿のキッド、そしてノザワを交えてささやかなクリスマスパーティーが研究所で開かれた。
紫苑は隠していたプレゼントを無事に咲耶と景虎に渡す事ができた。そして──……。
「クリスマスはやっぱり素敵だったでしょう?」
と、景虎に得意気に言うのだった。
誰でもサンタクロースになれる。必要なのは相手を思う気持ちとささやかなプレゼント。
しかし楽しい事だけじゃない。それに至る苦難もたくさんあるだろう。今回倒したクネヒト・ループレヒトも、その存在の一部でしかない。きっとこれからもサンタクロースと共に在り続け『悪い子』にお仕置きを下すのだろう。でも、それでも良いのだ。
景虎はどんな困難も、もう大丈夫だと思えた。聖なる夜にはサンタクロースが見守っていて、幸福の「魔法の金貨」を贈ってくれるのだから。
第3話 「サンタが如く」完
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