第483話・精霊にダメージを与える方法
ぼくは聞いた話を大まかにかいつまんでティーアに説明した。
「なるほど……。要するに、あのアレはクレーに怒鳴り込む度胸をつけるために、純粋に怯えるだろう三人を脅しに来たのか」
「そう。それをフォンセに散々煽られて、反論できずに逃げてった」
「……フォンセに感謝だな」
おもてなしの時の言動と、そして今回のあんにゃろを暴走させずに追い返してくれたことから、ティーアは随分フォンセに丸くなっている。
ティーアはおもてなしの場にこそいなかったけど、鳥の様子などからフォンセが悪意を持ってきたのではないと判断したし、聖職者がいてもおもてなしを受けたところで少し見直し、今回はぼくのフォローの為(もちろんあんにゃろへの喧嘩売りもあるけれど)、直接戦闘の可能性もあるのに、わざわざ出てきてくれたフォンセに、「所詮ヤツも精霊神」と思っていたのを考え直し、グランディールに害を与える気は、少なくとも今の所はない、と納得したらしい。
何より。
「あのアナイナに言い聞かせたのはすごいな」
「うん。今回も言ってたよ」
「何を?」
「そろそろアナイナがぐずり出すから宥めておけって」
「ほー」
ぼくは冷たい水をグラスに入れてティーアに渡した。ティーアは一息に飲み干す。
鳥の異常と言う形で精霊神の来訪を知るティーアは、しかし知ったからと言って何ができるわけでもない。
あんにゃろだけでなく、精霊にダメージを与えるには、相手の精神力の壁を貫いて悪意を叩き込むしかない。けど、ひたすらに相手を叩き潰す! って意思だけではなく、壁を開ける鍵とでも言えるとっかかりが必要なのだ。
自分と相手の精霊に共通する何か……そこに向かって全力で悪意を叩き込んでこそ、攻撃は成立する。
そして、普通、人間は、精霊と自分との共通点を思いつかない。
ぼくの場合はあんにゃろの分霊であるということであんにゃろと、そしてその対であるという関係でフォンセにダメージを与えられる。
もう少し意志力を強くすれば、この世界の全ての精霊にダメージを与えることも可能だろうけど、別にぼくは精霊にダメージを与えるために生きてるんじゃないし。
でも一応このことはティーアにも報告しとく。あんにゃろに狙われかねない人物の一人だしね。
「とっかかりに悪意を叩き込む、ね」
ティーアは案の定唸ってしまう。
「とっかかりが理解できん」
「ぼくもそれを説明するのは難しいんだけど、例えるなら連想ゲームかな?」
「連想?」
「うん。自分と相手を、無理やりにでも繋ぐんだよ」
例えば。
「ティーアと言えば、鳥だよね」
「そうだな。動物を操れるが、鳥飼だしな」
「鳥と言えば、空だよね」
「まあ、
「空と言えば、太陽だよね」
「月や星もあるが」
「太陽と言えば、光だよね」
そこまできて、やっとティーアは気付いたらしい。
「光と言えば、光の精霊神か」
「そう言うこと。ただ、これは連想が長ければ長い程、壊せる壁の範囲は狭くなる。悪意の大きさがぼくとティーアで同じなら、ぼくの方が大ダメージを与えられる。ティーアは今の例えだと「ティーア」→「鳥」→「空」→「太陽」→「光」→「精霊神」ってなって、ぼくだと「僕」→「精霊神」で一撃で大ダメージ」
「ああ……なるほどな。俺があいつに大ダメージを与えようと思ったら、このワードを減らさないといけないって言うのか」
「そう。頭の中で自分と相手を一直線につなげて、その一直線に叩き込む。その部分部分に今言ったワードが壁として在って、壁を貫くたびに威力が弱まって、相手に叩きつける力が減る」
「壁が少ない程大きいダメージを与えることになるんだな」
「うん、そう」
「それで言うならペテスタイの人たちも強くなるんだな」
「あ? うん、そうだね」
ペテスタイの人たちは「自分」→「神獣or聖獣or精霊虫」→「精霊神」で行けるな?
「一応このことはペテスタイの人たちには伝えておくか」
「ああ。あのアレが自分にダメージを与えられる人間を恐れるって言うなら、その数を増やしたほうがいいな。ペテスタイの人たちに悪意があるかは分からないが……」
「少なくともあんにゃろからの迷惑かけられ具合は半端ないから、他の人間よりはダメージを与えられるね」
「俺も護身の為にも、少ないワードで精霊神に繋げるか試してみるか」
あんにゃろにこの場所でフォンセが真っ向から喧嘩売ったんなら、あいつらが何か仕掛けてくるかも。
あんにゃろのことを知っている人間には、この精霊にダメージを与える方法を教えておいた方がいいだろう。
なんせあんにゃろは自分にダメージを与える人間を自分を超える存在と思って恐れるって言うんだから。
なら、そう言う人間が増えれば、あんにゃろは怯えるんじゃなかろうか、と。そう思っている。
少なくともティーアだけでなく三聖職者とアナイナ、ペテスタイの人たちには伝えといたほうがいいな。
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