第130話・面会希望、嫌だ!
「で、大丈夫だろう」
サージュが頷いた。
と言うかそれしか選択肢がないように思える。
どの町もグランディールと仲良くしたがってくれているのはありがたいけれど、その町に順位をつけるようなことはしたくない。
応募してきた町長たちは順位を欲しがってるけどね。順位じゃないな、欲しがってるのはグランディールとの親密度一番の座だ。
グランディールがこれらの町の目的になる理由はただ一つ。
ぼくだ。
ゼロから町を造ってSランクのスピティに認められるような家具を作り、ファヤンスを併合して更に名前を売った、全く無名の町長。流れている情報と言えば、若いというか幼い、くらいだろう。なんせ顔知ってるの町民以外じゃデレカート商会とトラトーレ商会関係者、ファヤンス関係者、ピーラーと取り巻き、伝令鳥業者パサレさんくらい。町長の名前を知っているのはだもん。情報が広がるわけないか。
だからこそ、ぼくを試したいという興味があるんだろうなあ。
……迷惑だけど。
だけどここでの試練があって初めてグランディールはランクの高い町と認められるんだから、町長らしいところを見せないといけない。
「その後絶対グランディールに来たいって言われるよね……」
「あー。まあ……な」
「その前に大問題が一つあるけどね」
「大問題?」
既に問題は出尽くしたと思っていたけれど、まだ何かあるの?
「はい、手紙」
「え? 何か別個のがあった?」
「開けてみ」
既に開けられた封から手紙を取り出し、目を通す。
なんつーか……高飛車な手紙だなあ。まあランクの高い町長は何処もそんなもんだけど。ぼくが幼いって話を聞いているからか、自分を見て正しい町長の在り方を見ると良い、って、随分な自信だなあ。……でもこの内容なら別にぼくに手渡しする必要なかったんじゃ?
怒るというより呆れて読み進めて。
ラスト。
『展示会で会えるのを楽しみに待っております。ミアスト・スタット』
「お前かああああああああああああああ!!!!!」
思わず叫びましたよ。雄叫びましたよ。
「なーに考えてんだあのおっさんはあああああああ!!!!!!」
バサバサバサバサッと閉じた控室で伝令鳥が驚いて翼を動かす音。
後ろに控えていたエキャルが頭の上に乗ってきて、よしよしと羽根と嘴で宥めてくれる。
絶叫して、肩で息して。
ついでに便箋を床に叩きつけてやった。
「スピティとエアヴァクセンの距離は結構あるのにな……」
「エアヴァクセンは最近落ち目らしいからな、ここで新しい町の町長と繋がりを持って、評判を上書きしたいんだろうな」
「落ち目って?」
思わずぼくの目が輝く。エアヴァクセンの不幸なら何でも聞きたい。
「最近、関係する町の間で、鑑定の町エアヴァクセン……の「鑑定」が危ういって言われてるんだ」
おお。いいぞいいぞ。
「最近、新町民の中に鑑定のスキル持ちが少なくなってきているみたいでな」
スキルは遺伝しない。ぼくなんか「火」と「水」から「まちづくり」。ただ、住んでいる町には影響される。「陶器」のファヤンスとか、「家具」のスピティとかにはそれに関するスキルが生じやすいという。
となれば、「鑑定」のエアヴァクセンには「鑑定」スキル持ちが多く生まれて当然なんだけど。
「確かに……ぼく六回ほど成人式見てきたけど、中に一人もいなかったな、「鑑定」は」
腕を上げてエキャルの頭を撫でながら、思い出す半年以上前の話。
「鑑定」であればレベルが低かろうが何だろうが残れると、祈る同世代のなんと多かったことか。
そして、残念ながら、ぼくの知る半年近い年月の間でエアヴァクセンに「鑑定」に類するスキルを持った新成人は出なかった。
ミアストが必死になって他の町に「鑑定」持ちのスキル持ちを回してくれと連絡を送っているとサージュの言。それが逆に関係する町にエアヴァクセンが落ち目だとの噂が立った……と言うか事実が知られたようで。
ざまーみろ!
くっくっく、と笑っているぼくを現実に引き戻したのは、アパルの一言だった。
「で? ミアストに会うかい?」
「……なんで」
我ながら声が怖い。
「一応SSランクの町長だからね。その直接の要請では断り辛い」
「断り辛かろうが何だろうが関係ないね。あいつに会うのはあいつが落ちぶれた時だ」
「と言うわけにはいかないんだな」
「いかないって?」
サージュもアパルも難しい顔。
「SSランクの直接の要請は断われない」
「他の町を呼んでおいてなんでってなるな」
「知るか」
ぼくはエキャルを撫でながら言った。
「そんなに呼びたいんならアパルでもサージュでも代理で会ってくれ」
「私が? 元盗賊だよ?」
「俺? エアヴァクセンを捨てた元放浪者が?」
「今は町長代理っていくらでも名乗れるだろ!」
だからぼくは会いたくない! 出来ればエアヴァクセンを追い抜くその時までぼくの噂すら届かせたくない!
そういうぼくに、二人の大人は溜息をついて説明を始めた。
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