第26話・レベル1の町を見ろ
「レベル1で上限1?!」
「そんなスキルあるのか?!」
「ある。それでエアヴァクセンを追い出され、その代わりに新しい町を造った」
「文字通り、「まちづくり」したってわけかよ」
「ヴァローレ」
「ああ」
「鑑定」を持つヴァローレはぼくをじっと見る。
「……ああ、そうだ。レベル1「まちづくり」、上限1Max……つまりもう上がらない」
「町を追い出されるのには十分な理由だが、何故そんなレベルで町なんてものを作れるんだ」
「低上限レベル……究極的に上限レベル1の法則がスキル学にある」
サージュが口を開いた。
「スキル低上限の法則は、それ以上上昇する必要がないから。上限レベルが低い者ほど強力な力を持っている。それ以上あげたら世界の存亡に関わる……と」
「え……じゃあ僕の「鑑定」……も?」
「オレの「移動」……もなのか?」
「事実、盗賊団の中では役に立っているんだろう?」
「ああ。ヴァローレの「鑑定」は価値あるものを
「グランディールに行ったらびっくりする」
アパルが笑った。
「レベル1Maxの造った町がどんなものか。見たら、きっと。もちろんまだ造ったばかりだから色々足りないものがあって、みんなでフォローしなきゃならない。だから新町民を募集しているんだ」
「だからって盗賊を町民に入れるかよ」
「私も元盗賊って言っただろう」
「本当かあ?」
「本当だ。追い出されたぼくとついてきた妹から荷を取ろうとしたのが出会い」
「…………」
思わぬ出会い方に十人絶句。
「その後、妹の提案で町を造ろうということになって、造ってみた」
「造ってみたで造れるのかよ」
「造れた」
盗賊団、
でも実際そんなノリで造っちゃったんだから仕方ない。
「い、家を建てていいのか?」
「建てるまでもなくできる」
「?」
家族持ちらしいティーアの問いに、ぼくは真面目に答える。
「町民になった人間のための家が勝手に建つ」
「勝手に建つって勝手に? こっちの要望もなく?」
「要望を聞きいれて建つ。だから中の家具も全部その家の住人の好みで揃う」
「……商売の家具って言うのは」
「その勝手に建つ家と勝手にできる家具を応用して、町民で一つの家具をイメージすると、家具工場の中に家具ができる」
「……反則じゃねーか」
「今まで酷い目に遭ってたんだ、反則してでもいい生活したい」
アパルの本音。
「……そうなんだが」
「だったらありがたく受け入れるべきだと思うよ。好機の女神は二度振り向いてくれないぞ」
ティーアはねばねば頭を掻いてから、言った。
「リュー。グランディールの位置は特定できるか?」
「ちょっと待てっす」
リューは指先で空中に何か書きながら考えこみ。
「ありゃ、あんな断崖地帯の滅んだ町跡に町造ったんすか?」
おお。グランディールの場所を特定できたらしい。
「断崖地帯は仮置き。スピティと取引するためにとりあえず」
なんのこっちゃという顔をしているティーアをよそに、アレが動く。
「じゃあ、褒めてもらった低上限スキルを使うよ。「移動」で!」
アレが大きく手を動かして牛車と外に立っている人間の集まりの周りをぐるりとする。
「「移動」!」
突如空間が切り替わり、目の前には三日ほどしか経ってないけど懐かしいグランディールがあった。
「すごい」
ぼくは目を丸くする。
「三日の距離を一瞬で」
「……いや、そりゃこっちのセリフだ」
ティーアの声。
「これが、レベル1のスキルが造ったって町なのか?」
門の前にはシエルが立っている。門番の代わりだろう。
「あれ? あと四・五日はかかると思ってたのに」
「新しい町民のおかげで」
十人、呆然と町の門を見上げる。
「ああ、十軒家が建ったのは新入りのためか」
「十軒、家?」
「ああ。畑も牧草地も広がった。ヴァダーが危うく屋根に引っ掛けられて宙ぶらりんになるところだったが」
「じゃあ、取り合えず入って家を見てもらおうか」
サージュが牛車を門の中に入れる。
「どうしたの? ついてきていいんだよ?」
「あ、お、おう」
十人盗賊、挙動不審。
中に入ってまた絶句。
広い通路のそこかしこに家が新しく建っている。
「ちょ、ちょっと待て」
「耕作」のアグロスが手をあげた。
「あの畑も、なのか?」
「うん。耕せる人と種がないから放置状態。十人増えたからその分広がった」
「耕して植えて育てていいのか?」
「うん」
ライプンがガッツポーズ。「育成促進」で大急ぎで育てられるのだから。
「て言うか、本当にこんな立派な家もらっていいの?」
シートス泣きそうな声で聞いてくる。
「うん」
「うんしか言わないのなお前」
マンジェが気付いてやってきた。
「アナイナは?」
「お兄ちゃん帰ってこないからって
「じゃあ、とりあえず家を見て。何か不満があったら念じてみるといいかも」
「なんだその念じてって」
「事実そうなんだから仕方ないじゃろ。家具は取引してくれそうだったかね?」
ヒロント長老もやってくる。
話をしようと思った途端、あちこちで上がる悲鳴。
「何だ、この家!?」
「アレすぐ本拠地戻ってくれ家族連れてくる!」
「ちょっと待って、この床の頑丈さ、家具の立派さ……」
……うん、まあ、予想してたからね。町暮らし経験が少なければ少ない程、理想の家は立派になるって傾向もあるし。
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