1-3 「俺の背中についてこい」ですか……?


 フルプレートアーマーのおっさんが現われた。


 ……この鎧の人、誰?

 背中の大剣、僕に振り下ろされたら確実に即死しそうなんですけど。


 あとゲーム内の出来事でも、リアルに近い視界で二メートルの大男がいると、びびる。

 威圧感がすごい。

 そしてよく見ると、鎧の胸元にはお手製のフォントで【破壊神】とか書いてあって……って、


(この人がもしかして、破壊神ダークネスドラグーン=デッドエンドさん?)


 先生の言う、訳ありの相方だ。

 いや訳にも程がありそう……と、固まっていると。



 鎧男(?)が、僕にくるりと背を向けて。

 唐突に、歩き……いや、走り出した!


「え、あの……どこに行くんですか?」


 ガシャンガシャン、と盛大な鎧音を鳴らしながら、草原から続く森へと駆けていく破壊神さん。

 って、ちょっと!?


 僕も慌てて追いかけた。


 ”友達クエスト”は学校イベントの一環だ。

 単位や成績にも関わるし、先生に頼まれた以上は放っておけない。


「あの、破壊神さん! 破壊神ダークネスドラグーン=デッドエンドさん、ですよね!?」


 こ、この名前で呼ぶの、地味に中二病っぽくて恥ずかしい……!

 しかし破壊神さんの巨体は止まらず森へと突っ込んでいく。



【チュートリアル:警告 森林はモンスター出現区域です 現在のレベルでは危険です】



(やばっ)


「破壊神さん、そっちは危険です! 戻りましょう!」


 警告を伝えるが、鎧姿の彼は構わず木々をかきわけ突撃していく。


 まずい。事情は分からないけど、開始からいきなりモンスターに襲われたらどうしよう。

 このゲーム、全滅したらアイテムとか無くなるのか……?

 でも、その危険性は破壊神さんだって同じじゃ……


(いや待てよ? もしかしたら破壊神さんは、この辺のモンスターくらい倒せるのでは?)


 僕が”友達クエスト”β版を開始したのは今日だけど、破壊神さんは既にある程度プレイしている可能性もある。

 なにせ背中の大剣に、漆黒の全身鎧。

 いかにも強そうな外見をしてる上、相手は謎のVIPプレイヤーだ。


(もしかして、俺の背中についてこい、って意味なのか……?)


 彼は既に、このゲームをプレイしていて。

 俺様が戦闘レクチャーしてやるから見てろよ、という意味か――




 と、そこに都合良く森の中からモンスターが出現した。


 僕等の前に現われたのは、ちょこん、という効果音が似合いそうな小型のウサギだ。

 しかも二匹。

 頭にちいさなツノがついているし、目つきも三角に尖っていて凶暴そうではあるけれど、全体的に丸いフォルムをしていてどこか憎めない感じがある。

 まさに序盤のモンスター、という感じだ。


 破壊神さんは臆することなく歩み出す。

 迫力に気圧されてか、ぴくっ、と後ろに下がるウサギ達。


(おお、すごい。強者の気迫ってやつかな……)


 おそらく破壊神さんにとって、この程度の雑魚など相手にするまでもないのだろう。

 これは期待大だ。


 僕が見守るなか、破壊神さんはついに己の獲物、背中の大剣をするりと抜こうとして――




 ずこっ!

 と、足をすべらせバランスを崩し、背中から転げるようにひっくり返った。


 ……あれ?




―――――――――――――――――

この辺からヒロインのぽんこつ具合が徐々に……

評価&フォロー頂けるとすごく嬉しいです、応援よろしくお願いします!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る