”友達クエスト”の少数派 ―フレンド数=強さのVRMMOで芋ぼっち美少女の世話をしたら「と、友達なんかじゃないもん……」とデレてきたので一緒に攻略しようと誘ってみた―

時田唯

1-1 ”友達クエスト”高校卒業するには魔王を倒す!?


 この世界には、人間の皮を被った宇宙人が隠れ潜んでいるらしい。

 何を隠そう僕自身がそうなのだ。嘘だけど。


*


「あー、いまから六時間目の授業を始めるが……唐突だがお前達には卒業までに、魔王を倒してもらうことになった」


 ゴールデンウィークが明けた翌日。担任の一言に「は?」とクラス中が呆気にとられた。

 もちろん、僕も。


 ……えーと。

 高校の授業で……魔王を倒す?

 何かの冗談、だろうか?


 びっくりする僕らに、先生がプリントを回していく。



【政府公式VRゲーム”友達クエスト”β版テストプレイヤー対象者様へ】



 友達クエスト?


「簡単に説明すると、友達と仲良くなるためのゲームを政府が開発した。そのテストプレイヤーに、うちの学校が選ばれたってわけだ」


 曰く――

 社会的動物である人類にとって、コミュニケーション能力の向上が必然であることは、疑いようのない事実である。

 生きる力の向上、人生の充足、異なる価値観同士を結びつける相互理解能力――それら人としての基礎能力向上の一環として様々なグループワークの実施に取り組んできたが、この度政府は新たに若者向けのグループワークとして”友達”に重点を置いたなんとかかんとか……


「まあ要するに学校の勉強だけでなく、友達とも良い関係を作りなさい、ってのをお偉いさんが後押しして――」

「先生! つまりデスゲームってことですか!? 学校に閉じ込められて、白黒のクマさんが『今から皆さんにはコロシアイをしてもらいます』っていう!」

「はい藤木ー、先生の話はちゃんと聞こうな? 先生は魔王退治って言ったんだぞ? むしろ友達との協力が必要なゲームだ」


 元気な副委員長、藤木さんを窘めつつ、先生が手を叩く。


「ちなみに”友達クエスト”は政府の肝いり政策ってことで、成績にも反映される。赤点もあるからな」

「「「えええ―――!?」」」

「安心しろ、普通に友達とクエストをクリアしていけば、まず間違いなく100点取れる内容だ。ちゃんと友達がいればな」


 教室中に悲鳴が響くなか、僕がまず考えたのは――

 友達が居ない人は、どうすればよいんだろう?

 という素朴な疑問だ。


 一応言っておくと、僕――蒼井空には、友人がそれなりにいる。

 真面目さを買われて今学期は学級委員長を務めているし、人の委員会や宿題を手伝っていることもあり、誘う相手には困らない。

 親友と呼べるような相手はいないけれど、クラスでの立ち位置もそう悪くないと心得ている。

 だから僕自身は、困りはしない、のだけれど――


(クラスの中だと、困る人もいるかも……)


 うちの教室は全体的に仲が良いけど、男子だと薪野君と海島君、女子だと……獅子王さん辺りは、あぶれてしまうかもしれない。

 クラス委員長として、フォローしていた方が良いだろうか。


「というわけで今晩には、政府からお前達の家にVRゲーム用ヘッドセットとパソコンが届く。税金だから壊すなよ?」

「「「マジでー!?」」」


 なんと生徒全員の家にゲーミングパソコンをレンタルという大盤振る舞い。

 税金やばいな、と素直に思った。




「ねえねえミコちゃん、あたしと組もうよ!」

「坂井ー、今晩から一緒にゲーム始めない?」


 説明の後、クラスの皆はさっそく誰と組むかの相談を始めた。

 ”友達クエスト”は友達を作るゲーム。既に友達がいるなら一緒にやろうと声をかけるのも当然だ。


 僕はさりげなく教室を見渡す。

 炙れそうな人はいないだろうか?

 ”友達クエスト”で友達が居ない、なんて人が出るのは避けたいな……と、考えていると、視界の端でひょいひょいと担任の先生が手招きするのが見えた。


「蒼井、ちょっと進路指導室まで来てもらっていいか?」

「へ?」


 そうして進路指導室までやってきた僕に、先生は一息ついてこう告げた。


「蒼井。お前には特別に、ゲーム内で組んで欲しい相手がいる。――うちの学校の生徒じゃない、特別な相手だ」










―――――――――――――――――

新作はじめました! 13万字程は書き上げていますので、しばらく毎日更新します。ちょっとドジでツン系ヒロイン好きな人には、必ず楽しめる作品に仕上げました!


カクヨムコン投稿予定です。

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