怪盗は名探偵の心臓(HEART)を狙う

ジップ

プロローグ

 それはずっと昔に起きたこと


 僕は何故かそれを忘れられない


 誰もいない古い家

 探偵ごっこをする子供が二人

 君は名探偵で僕は大怪盗

 大怪盗が狙うのは君の大事なペンダント。

 コインにチェーンをつけた銀色のペンダント

 表はハートで裏は杖を抱えた髭のひと


 誰もいない古い家の中

 机に置かれたハートが刻まれたペンダント。

 僕がこっそり持っていく。

 それを合図に君が僕を追いかけた。

 そして最後に君が僕をつかまえる。

 こうして大事なペンダントは探偵が取り返し、

 大怪盗は名探偵につかまった。

 けれど、君はペンダントをまた机に置いて言う。

「もう一度やろうよ」

 君は名探偵で僕は大怪盗


 あれから随分経ったよね

 僕らも、もう小さくない


 コインに掘られていた髭の人は聖ベネディクトゥス

 それを知ったのはつい最近。


 君は本物の名探偵で僕は本物の大怪盗

 あれから随分経ったよね。

 僕は今でも、君のハートを狙ってる。


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