灰色の騎士と黒死の姫

ジップ

プロローグ

 宮殿を覆う炎は天に届くほどに立ち上っていた。

 周辺では身体が黒く染まった人間だった者たちがゆらゆらと歩きまわってる。

 それはまさに群れのようだった。

 その群れの中を容赦なく剣を振るい、騎士の一団が王宮に突き進んでいく。

 彼らは、反乱を起こした軍の一団であった。

 少し前までは王に忠誠を近い、命を賭けて王を守っていた。

 だが、今は真逆の行動をしている。

 アヴァール・シェベルノヴァ王はかつては賢王と呼ばれたが、ある時から変わった。

 今は狂王と呼ばれ、暴挙を限りを尽くしていた。

 国中に、全身が黒くなり死に至る”黒死病”が蔓延し、疲弊した。

 そしてついに忠誠を誓ったはずの近衛騎士団にも見限られ、反乱を起こされた。

 

 いたるところで爆発が起き、王宮は半壊していく。

 それは暴挙の限りを尽くしていた王の最後であった。

 今、圧政と疫病の地獄が終わりが迎えようとしていた……。


 

 燃え盛る王宮をはるか遠くの丘から見守る騎士の一団がいた。

 未限られた狂王にも忠誠を尽くす者たちも僅かに残っていた。

 賢王と呼ばれた時代を忘れられない者たちだ。

 彼らは、反乱軍から逃れ、辛くも王宮から脱出していた。

 手負いではあるが屈強な騎士たちが幼い子どもを取り巻いている。

 幼い子は、燃え続ける王宮を空虚な瞳で見つめ続けていた。

 いつまでも、いつまでも……

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