第14話 クマが来た!
アルクはズンナマとの一件があった後、チャチャと共にざっくり庭を見て周り育ってる野菜もあとで採らないといけないなと思いつつ、家に戻ってベラとエリクのお守りをしていた。
太陽が頭の上あたりに来ていた。
疲労感はすっかり抜けていたが、さすがのアルクも空腹を感じないといっても何か食べないといけないと思いベラとエリクと一緒の食事を取る。
お手本になって食べてコミュニケーションを図ろうと思い始めた。
まだ一日しか経ってないのだ、いつ別れるか分からないから一日でも永くこの子達の笑顔にを絶やさないように努めなければ。
そう思っているとチャチャが俺の顔を舐め頭から床に飛んで着地しドアのほうを見る。
「何か来るの?」
「ックック」
うん、と答えるチャチャを見て。
「ありがとう」
床にいるチャチャの隣に屈んで頭を撫でそして自分は行動を開始する。
すぐに何かのモノがここへやってくると心構えをしていたが、思ったより遅く助かった。
昨日来られていたらパニックになっていただろう、そう思い、改めて気を引き締める。
寝ているベラとエリクのバスケットを持ち上げ、チャチャと共に地下へ降り食糧庫に起こさないよう二人が入ったバスケットをゆっくり置いた。
「大丈夫だよベラ、エリク、絶対に護るから」
アルクはそういい安心させるように、二人の頬に優しく手を添え微笑んだあと、音を立てずにアルクとチャチャはリビングへ戻る。
アルクは戦闘準備をするため顔と手をマジックバッグに突っ込んで武具やアクセサリーを取り出し身に着けていく。
自分はこの世界に来て初めての命をかけた戦闘になるだろう。
「魔法は現実世界だと、どんな影響を与えるか分からないから最終手段だな」
魔法はまだ使ってないため、やめておく。
アルクの使える魔法は声魔法でその魔法は周りに感知されやすく、自分と同等それ以上のモンスター達をおびき寄せてしまうからだ。
それとゲームの世界だった時は様々な武器がある中の3つの熟練度を上げることができ、熟練度を上げることによりそのアイテムの潜在能力を引き出すことができた。
アルクはその中で片手鈍器・杖・投擲物を上げていた。
自分の腰にぶら下げているの2つの武器に目をやる。
名は【哀醜鬼・ザンキ】だ見た目は暗い青色の金属バット。
能力は、対象を殴れば殴るだけ、受ければ受けるだけ、その対象のステータスを下げることができる武器。
もう一つは訓練で使った、【楽醜鬼・ンジャババ】
そして服のポケットにポーションと麻痺を与えるポーションなどを詰めていき戦闘準備を整え、レザーでできたヘルメットを被ると深呼吸をしチャチャに状況の確認をとる。
「チャチャ相手の情報は・・・強い?」
と肩に乗ってるチャチャを見ると、
「ッフン」と鼻で笑い呆れている、チャチャって・・・なんか性格悪くない?そんな疑惑の目でチャチャを見ると顔を満面なく舐めてきた。
「チャチャ相手は人?」
首を横に振る
「動物?」
首をかしげる
「魔獣?」
次は縦に振り
「ックック」
と鳴く
次はあとは人数か。
「複数?」
首を横に振る
チャチャに感謝を述べ頭を撫でる。
先に強さとか聞いておけばよかったな、でも、ここは現実世界だ、油断はできない、相手も強さを隠してるかもしれないそんな考えがアルクの頭に過る。
この世界の情報が少なく考えても仕方ないので、そのままアルクとチャチャは外で迎え撃つことにした。
「チャチャ擬態をお願い」
「クック」
(作戦はチャチャの擬態中にある程度近くに来たら懐に擬態状態で近づき頭か腰を殴るだな、怯んだら麻痺ポーションを投げてチャチャと一緒にンジャババを持って戦闘か。
それで仕留められなかったらチャチャと一緒に戦おう、その時は仕方ないけどバフ上昇の声魔法を使おう。
チャチャは弱いといってるけど不安だ・・・)
そのあとはしばらくドアの開いた玄関の前に立つアルクはチャチャが見つめる正面を見ていると、チャチャが顔を舐めてきた。
(・・・来るか)
それは樹林の中からやってきた。
(・・・え?で、デカイ・・・いや、でかすぎじゃない?全長何メートルあるんだあれは・・・あのデカさでチャチャは弱いと言ってるの?
・・・え・・・あれ絶対強いでしょ・・・魔法頼ったほうが良くない?
あのバカでかい熊と近接で戦うって無理じゃない?・・・絶対あれここの主だよ)
アルクはそのデカい熊を見て硬直し、どうしようどうしようと頭を過ぎりまくるが、相手の様子がおかしいことに気づき様子を窺う、
ドでかい熊が木々から顔を出して止まっていた。
(ばれた?)
赤黒い毛をした熊を見つめる、自分の居た世界のモンスターとは違うみたいだ。
(ゲーム世界で見てきたどの熊の魔獣達とも少し違うな、それにしてもなんか様子が変な気が)
ドデカイ熊の魔獣は、弱っているのかヨロヨロと体を揺らしおぼつかない足取りで、ドス、ドス、とジャリ道を数歩進むと。
体を沈ませ頭を下げた、それを見ていたアルクはもう少し様子を伺う。
(なんだろう?弱っているのかな?動く気配がないな、一応イヤリングを外しておこう)
左耳に着けてた黒いイヤリングを外しポケットに入れる。
黒いイヤリング、名を【偽りの
【偽りの面】で設定してるステータス値は、Flow of Worldの敵で出で来るlv15のゴブリンシャーマンのステータス値だ、このステータス値で威嚇されても、怖くないよーと言われてしまう。
そしてちゃんと【偽りのツラ】の上限の数値も決まっていてlv50以下のステータス値しか適応されない。
「チャチャ擬態を解いて」
アルクは小声で言うと同時にスキルの【威嚇】を発動させる。
擬態が解けた瞬間、家の周りの樹林から鳥たちが羽ばたいていく、自分のテイマーのアクティブスキル【威嚇】が効いているんだろうか?警戒しザンキを握る手を強め、慎重に熊の正面じゃなく斜めから少し近づいていくにつれて改めて気づいた。
(獣臭いな・・・やっぱりここはゲームではないんだな)
熊から放たれている鼻を突く臭いに、我慢しながら声を掛けた。
「君に戦う意思はないの?」
体を震わせている熊がゆっくりと顔を上げ、こちらを向き熊が頷く。
言葉を理解しているようだ、言語機能のおかげか?と疑問を持ちながらアルクは問いかけていく。
「君はどこから来たの?」
熊が顔を向け来た方向を教えてくれる。
「君はどうしたの?」
(さすがに喋れないか)
熊はうごかない。
「君はここの主なの?」
熊は首を横に振る。
(このデカさで、違うのか)
「君には名前はあるの?」
また熊は動かない。
(ないのかな?ないなら試したいことがあるし、さすがに敵意のない者を殺すのも忍びないしなぁ・・・この場を収めるのは〖従魔契約〗をして行動を押さえつけられるようにした方がいいかな。
従魔契約も解らない事だらけだから名付けてもいいならやってみよ、無理なら帰ってくださいと納得してもらうしかないかな)
「名前がほしい?」
少しして、熊は頷く。
(よし確認もとれたからやってみよ、命名だから力強くかっこいい感じの名前がいいな)
少し気合を入れて
「君の名は〖ヴィアス〗」
アルクはそういった瞬間、ズンナマの時よりも激しい立ち眩みに何かを吸われている感覚が体を襲った。
「ッグ・・・ッゥグ」
アルクはなんとか意識を持っていかれないよう踏みとどまり、目の前にいる熊に目を向けると、目を見開き苦しんでいるようだ。
(ズンナマさんが水中に居たから魔法陣が見えなかったけど、熊さんの周りから従魔契約の時に出てくる魔法陣が出てるから、契約は成功か・・・それにしても、耐えることが出来たけどズンナマさんの時より激しい疲労感だったな)
アルクは落ち着きを取り戻すと、じっくりと地面に浮かび上がった魔法陣の中に居る熊を観察する。
熊の目から生気がなくなり、ぐったりと横たわってしまっていた。
死んでしまったのか?と思った瞬間、熊の体が青く光りに包まれ地面からも青い光の粒子が集まってるようだが、それと同時に周りの草が萎れ枯れて行っている。
「なんだ!?」
予想外の出来事にしばらく唖然と見守ると青い光が引いき収まるとそこに居たのは、乱れた長い赤黒い髪をした裸の。
「人間!?」
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