扇子の皺をなぞったら、畳の角に小指をぶつけた
文章をなぞることが趣味の僕が、別のものをなぞったらどうなるかって?
そんなことはしたくない。
僕は文字が形作るザラザラした感触とためらいが好きなんだ。
それに比べて、他のモノときたら感情が深すぎる。
そんなモノをなぞったら、僕はびちゃびちゃに濡れちゃうじゃないか。
そんなの言葉がいくらあっても足りなくなっちゃうよ。
だから、文字以外のモノはなぞらない。
そう決めていたはずなのに、、、
国のルールってやつは、最悪だ。
文字をなぞるためには、別のモノをなぞってからだというルールを決めやがった。
皮肉なことに、「ルール」は僕がなぞった中では中々心地のいい文字だった。
それなのに、文字をなぞる前に別のモノをなぞれなんて、、、
僕はルールを破ることもできず、水を飲むときの音でできた扇子を手に取って、その皺をなぞった。
それは、お線香の香りを森林に持ち込んで、こっそりと筍を食べる時の気持ちに似ていた。
そんな感情に浸っていたせいで、僕は斜めに傾いてることに気づかず、そのまま洋式から転げ落ちて、和式に転じた瞬間、畳に小指をぶつけた。
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