蝶がビルを建てても、砂漠に女神は現れない

建築士の蝶は、花の蜜をせっせと集めて都会をさらなる都会にするビルを建てました。


蝶は満足して触覚は歌い、羽は空に舞い上がります。

そんな時にも蝶の瞳に潤いはありません。


蝶の瞳に映る光景に豊かさはありません。

まるで心と身体が別々の感情を宿しているようです。


なぜここまで必死に作った蜜のビルの完成を喜ぶ瞳はないのでしょう。

身体は喜んでいるのに、瞳は別の景色を見て悲しみに暮れているのです。


蝶は不思議でした。

こうして世の中の発展に貢献することで、自分のあり方を証明してきたはずなのに、それが自分の存在証明だと頑張ってきたはずなのに、全く嬉しくない景色があるのです。


喜ぶ感情と悲しむ感情を併せ持った蝶は、どちらの気持ちに正直に生きるべきかを考えて、今日も蜜を集めるのでした。

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