隣の家の幼馴染

 ピピピピとスマホのアラーム音で目を覚ます。

 時刻は朝七時。


「……夢じゃないもんな」


 トークアプリには俺と五人の美少女で形成されたグループがあった。

 グループ名は『春山士郎様の心を癒す会』。

 めちゃくちゃ恥ずい。


 昨日はあの後、いろいろあり俺たちの関係は友達以上恋人未満という形になった。

  

 俺は彼女たちのことが好きだとは思わない。

 本当に好きになってから付き合わなければ彼女たちに申し訳ない。

 そう考えたのだ。


『士郎おはよう!』

『おはようございます、士郎さん』

『あはよう』

『お、おはようごさいます!!』

『おはよーしーくん!』


 一人ずつ個人方でおはようの挨拶が来ていた。


 寝て起きたら全て夢だった。

 夢オチという展開などはなかったようだ。

 よかった。


 俺は一人ずつ、おはよう、と返す。


「てことは、紗倉はもう……」


 これで何度目だろうか。

 彼女を忘れようと思っているのにいざとなると忘れられない。

 こんなに俺は紗倉に惚れていたということに後悔してしまう。

 

「こんな想いになるんだったらはなから付き合わなければよかった」


 階段を降りて一階のリビングへと向かう。

 両親はすでにいなかった。


「おはよう、お兄ちゃん!」


 二つ下の中学三年生の妹──詩織が台所に立っていた。


「おはよう詩織」


 紗倉と別れたということを伝えるタイミングがなかなか伝えられていない。

 詩織は紗倉を尊敬しているのだ、早いうちに伝えるべきなのだろう。


「ちょうどご飯できたところだよ」

「ああ、ありがとう」


 白米にサラダに目玉焼き。

 詩織定番の朝ごはんである。

 あとはインスタコーヒー。


 食べ終え支度終え、時刻は朝の七時半。

 詩織の水原中学校まではここから徒歩十五分と近い距離にあるためあと十五分ほどしてからいつも出ている。

 俺はというと水原高校は徒歩三十分ほどかかってしまうため先に出る。


「お兄ちゃん大好き、いってらっしゃい!!」

「うん……」


 なぜこの時間に出てしまったのか。

 いつもと同じ時間に出てしまったことに後悔しかない。


 ガチャリと扉を閉め後ろを振り向くと。


 隣に住む紗倉と神本がキスする瞬間を見てしまった。

 それも舌を入れ深くだった。


 今は朝だぞ。

 それにこんなところでよくもできるものだ。

 ああ、時間を変えるべきだった。


 心にグサリとナイフを刺された、そんな感触を味合う羽目になってしまった。


 キスを終え、俺は紗倉と神本と目が合ってしまった。


「あ……!」と紗倉。

「やいやい」と神本。

「どっ、どーもー……」


 ああ、最悪だ。

 なんで朝から俺はこんなに気分を悪くされなけれらならないのか。

 なんで朝から俺は神本の顔を見なければならないのか。

 殴りたい。

 その面をボコボコにしたい。


「じゃっ、じゃあ……俺はこれで」


 だがそんなことはできない。

 なんせ俺はチキンなのだから。


 歩き始めようとすると。


「待ってくれよ、へぇ、紗倉ちゃんって士郎くんと家が隣だったのかい」

「ま、まあ……」


 気まずそうにそう言う紗倉。


「いやぁ〜悪いね士郎くん。朝から……不快だったろぉ」

「ああ、すごく不快だね」


 なんなんだこいつ。

 いちいち絡んできやがって。

 もともと言えばこいつのせいで。

 こいつのせいで……!


「それなら謝罪しよう、そうだ。紗倉ちゃんの身体でどうだい? 一日好きに使うのを許可しよう、もちろん紗倉ちゃんは絶対に抵抗しないでね」

「ふぇ、は、え!?」と頬を真っ赤に染めて戸惑う紗倉。


 こいつ──。

 舐めてんのか。

 どこにこんなやつのどこに紗倉が惚れる魅力があるというのだ。

 顔だけか?

 結局は顔ってか?


「おいおい、そんなに睨むなよ。うそうそ、ジョークさ。うん、お詫びとして今日のお昼学食に来てくれ。なんでも奢るとしよう、あとは……そうだね。これからはもう少し早い時間に紗倉ちゃんと登校することにするよ」


 俺は神本の言葉を無視して歩き始める。


 昼か……。

 全品頼んでやろうかこのやろー。

 絶対にそうしてやる。


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