第4話結婚前4
「ジョアンとは……学園時代からの……恋人らしい」
奥歯に物が挟まったような口調です。
「
「ジョアンの好みのタイプだったのでは?」
「礼儀作法のさの字も知らないような女だった」
「お綺麗な方でしたわ」
「貴族で綺麗な女は大勢いる。美貌ならばフアナの方が余程美しい!」
身贔屓が過ぎます。
赤毛の女性は十分美人さんでしたわ。
燃えるような赤い髪にオレンジの目。激しい気性の持ち主のようでしたし、恋人の婚約者の家に乗り込んでくるなんて情熱的です。恋というものをした事がない私からは想像できない行動力です。
「長年、交際していただけではない。フアナとの婚約を白紙撤回して、あんな女を正妻にするつもりだったとは……情けない」
あらあら、ジョアンったら。
お馬鹿さんですね。
「結婚は無理ですわ。法律で許されておりません」
「全くだ。相手の女はダダの下級貴族ではない。一代限りの爵位しかもたない者だ。父親であるヒル准男爵が亡くなれば自動的に娘は平民の身分に戻る」
そうなのです。
我が国は永年貴族と一代貴族の婚姻は法律で禁止されております。
貴族の尊い血を守るため、というものらしいのです。なので、我が国で「貴族」と名乗れるのは、公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の五つの爵位までです。ならば、一代貴族は何なのかと言う事になりますが、一応貴族ですが分類上は「准貴族」の扱いです。准貴族の大半がお金で爵位を得ている方々。稀に能力を見込まれて爵位を得る方もいますが、そのような方は極々小数に過ぎません。更に、一代貴族から永代貴族になられる方は百年に一人いるかいないかというほど少ないのです。
「相手の女に求婚までしていたらしい」
「それでは……」
「ああ。ヒル准男爵令嬢は未婚のままだ」
「それは……また」
貴族令嬢の結婚は基本二十歳前後です。
はっきりいって二十二歳は行き遅れ一歩手前。
「我が息子ながら、あれほど非常識だったとは……。すまない、フアナ。ジョアンとの結婚は失敗だ。結婚した処で幸せにはなれん。そもそもこの結婚はフアナとアウストラリス伯爵家を守るためのものだというのに!それをアレは何を勘違いして……」
伯父様は何度も私に頭を下げられます。
良かれと思って整えた婚約ですもの。無理はありません。しかも、ご破算にするのが実の息子。伯父様もやるせない思いを抱えているのでしょう。
婚約の白紙。
それは私が傷物になる事を意味します。かといって、このままジョアンと結婚すれば「白い結婚」になりかねません。
本当に難しい問題を抱えてしまいました。
その前に、結婚式を控えた時期での婚約解消など無理なのでは?
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