静かな夜に
耳触りのいいその声が、好きだと思った。
共通の友人で知り合った私と君。
一年間友達でいたあと、君からの告白で付き合うようになった。
気恥ずかしくて、ツンデレっぽくなったり、うまく甘えられなかったりしたけど、君は優しく待っててくれた。受け止めてくれた。
正直いうと、君と付き合い始めた当初は“好き“っていうよりかは“気になってる“が正解だったかな。
でも、気づいたら君に落ちていた。
君と手を初めて繋いだときは恥ずかしくて、緊張して、心臓がおかしくなった。
いつも優しく抱きしめてくれたり、頭を撫でてくれたり……
君の私に対する行動全てが愛おしかった。
大好きだった。
愛してた。
いつから変わったのだろう。
私は君を愛していたし、君も私を愛してくれてると思ってた。
でも独り善がりだった。
思えば、今日の君の返信に、違和感を感じた。
嫌な予感を感じていたんだ
あるとき突然送られてきた
「別れよ」
その4文字に血の気が引いた。
嘘なら良かったのに……
原因はきっと私にある。
むしろ私にしかないだろう。
「別れたくない」そんな気持ちを押し殺して、
「いいよ」
その3文字を送った。
ふと思い出したことがあった。
そういえば彼は告白もメールだった。
なんの因果なのか……
感情は押し殺そうとしても消えてくれなくて、辛くて、苦しかった。
きっと、明日からは“友達“に戻る。
うまく接することができるだろうか
もう演じてしまおうか
“友達“のわたしを
……無理だな。
できっこない。
あーあ、もうこの世界に未練はなくなっちゃった。
私は、そっと瓶を取り出して、中身を適当に飲んだ。
大義名分ならちょうどある。
ある人達によって、私の人権はなくされているのだ。
ふと、君と少しホラーゲームをしたとき、ゲームの主人公がいじめによって飛び降りをするときに言われた、「お前もこんな風に思い詰める前にちゃんと相談しろよ?頼れよ?」その言葉が頭に響いた。
今更ながら君に相談しようと携帯を持ったのだけれど、もう、遅いんだったな……
私はそっと携帯を手放してベットに倒れ込む。
だんだんと眠くなってまぶたが落ちてくる。
きっと、私がもう目覚めることはない。
だってもう生きている意味を失ったから。
唯一の生きる意味は今、消えてしまったから。
眠気で遠くなる意識の中、そっと机に倒れた瓶と散らばったいくつもの薬を見つめた。
みんな、ごめんね……
こんなにも弱い存在で……
私はそっと目を閉じ、眠気に身を任せた。
それは静かで優しい夜だった___
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