君の未来に僕がいなくても① 優希side
優希side
とある日。
「ねぇ、優。離れないよね?」
俺のかわいい
「なんでそう思った?
動揺をさとられないよう軽く微笑みかける。
「だって……なんか最近、よそよそしかったりするから…」
「まじ?そう感じたら、ごめん。…でもそんなことはないから」
「でも、……」
この子は勘が良すぎるな。そして、結構思っていることが声に出る。気をつけさせないと……
いや、そんな心配をする必要はないんだ。
俺はもうすぐ、ここを辞めるのだから…
「疲れてるんじゃないか?最近忙しいでしょ」
「うん…」
「おやすみ」
「おやすみ……」
俺の腕の中でスヤスヤと寝る蓮音は無防備でとても可愛かった。
「ずっとそばにいたい……」
けれど、それが叶わないことは知っている。
彼はここの次期社長で、俺もまた別の会社の次期社長なのだから。
ここの人間には誰にもバレていない俺の秘密だ。
「はぁ……かわいすぎる……」
俺は昔を振り返ってみる。
俺がここに来たのは親父の後を継ぐ者としてまだ未熟だから、親父以外の社長の働きっぷりを学びたくてここに来た。間近で仕事が見れる、秘書として。
そしたら秘書兼次期社長の教育することになっちゃってさ。当時蓮音は中学生だったから、なんで俺がこのガキの教育を……って大学生だった俺は思ってたな。
「あれからもう3年か……」
最初は嫌々だった教育も、蓮音の素直さに教えるのが楽しくなって、心を惹かれていって、蓮音も同じ気持ちで付き合うことになって……
今すごい幸せだと思う。
けれど、この幸せは永遠じゃないんだ。
別れはもうすぐそばまで来ている。
「あとどのくらいこの寝顔がみれるかな……」
俺は蓮音の頬を少しぷにぷにしたあと、唇にキスを落とした。
「おやすみ、俺の永遠のお姫様……」
ガサッ……ゴソッ……
翌朝、俺は
これ以上ここに居たら決意が薄れてしまう気がしたから。
「よしっ……」
俺は出る前にそっと振り返ってベットですやすや眠っている蓮音を目に焼き付ける。
「未練がましいな……」
俺はそっと一枚の紙をテーブルに置いた。
「さようなら、俺のお姫様……」
ガチャ
ごめん、蓮音……約束は守れない……
俺は早足で歩いていく。
頬に伝う涙に気づかないふりをして……
「優希様、お久しぶりです」
「気づかれないように静かに出てくれ。」
「御意」
「よろしかったのですか?」
「無理に会社を継がなくても……」
「だめだ。親父の後を継ぐ人はオレしかいないんだよ。」
「俺が継がないと決めた瞬間、親父の会社は爺さんたちに潰されちまう……」
「あのクソジジイと兄貴に親父の努力は消されるんだ」
「あいつらの好きにはさせない。」
「だから俺が継ぐんだ」
「……わかりました。ならば、その涙をお止めください」
「彼らはこれから敵へとなるんですよ」
「……そうだな」
俺は涙を拭った。
「……その敬語をやめろ。夏希」
「昔からの仲だろ?お前はこれから俺の腹心になるんだ」
「……わぁーったよ。やっと戻ってきたな。
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