大団円って意外と難しいものだな

藤間伊織

コンティニュー

第1話 過去

コンビニで買い物を済ませて、再び寒空の下を歩き出す。息が白くなって空に消える。


せっかく買った肉まんが冷めないうちに帰ろう。


そうして歩いていると、後ろから呼び止められた。


「あの」

「?」


周りに人もいないので自分に話しかけているのだろうと振り返ってみる。

そこには少し顔色の悪い男が立っていた。なんとなく具合も悪そうだし、ジャケットを着ていてもわかる痩せ型だった。げっそりしている、と言った方が近いのか。


「もう諦めてもいいですか」

「え?いい……んじゃないですか……?」


死んだ目をしている男性を前に、深く考えず答えてしまった。


「ありがとう」

そう言って、男性は背を向けた。


「……大丈夫ですか?」

男性はゆっくり振り返るとにこりと笑い、何も言わず去っていった。。


本当に大丈夫だろうか……。まさか、人生を諦めるとかじゃ?でも、あの男性のお礼を言う目はどこか穏やかだった。落ち着いたならよかったのかな……。


少し強めに吹いた風で我に返ると、もうすっかり肉まんは冷めてしまっていた。

……帰るか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る