7:00

ルクセンブルク公爵のブリュッセルハウスの前で驚愕するポール。


「・・・・・本当ですか?」

「えぇ、 今は報道管制がしかれていまして公爵位と

公爵が認めた者のみに情報開示がされています」


執事が淡々と述べる。


「・・・・・本当ですか?」

「私を疑うと?」

「何でそんなに淡々と出来るか疑問なので」

「なるほど、 しかし公爵に仕えるとこの様な事は

流石に今回・・程ではありませんが

重大事なんて多々有りますよ」

「例えば?」

「迂闊に喋ると家族諸共打ち首になりますので」

「なるほど・・・」


公爵家は執事も一流と言う事だ。




一方その頃、 ブリュッセル・ターミナルでは厳戒態勢が敷かれていた。

民衆たちも騒めき始める、 何かとんでもない事が起きているのではないかと


「どうなってるんだ?」

「わ、 分かんないわよ」


見張っているメリーとシャンが戸惑っている。


「でもあいつ等の服、 何処の服? 騎士団じゃないわね」

「腕章を見ろ、 アレは緊急動員時に配布される代物だ

あの腕章で騎士団と同等の権利を保有する」

「緊急動員?」

「ベネルクス王立学園で習っただろ、 戦争時またはそれに類する時に

緊急で動員を行って戦力を確保する」

「戦争!? 婚約破棄が!?」

「いや、 幾ら何でもそれは無い筈・・・何か他で何か・・・」

「ちょっと待って!? アレはレオじゃない!?」


メリーが指差した先には老舗決闘代行業である【ベネルクス・ゴールド・ライオン】の

レオが居た、 若きS級決闘者であり、 化け物揃いの【ベネルクス・ゴールド・ライオン】で

社長令嬢の婿養子になる程の実力者である。


「婿養子って強いのか?」

「社長は前々から政略結婚として大事に育てた娘って公言していて

その娘を結婚させるなんてよっぽど強いのよ!!」

「じゃ、 じゃあどうなるんだ?」

「分からない・・・如何しよう・・・ハイメ様から指示が有れば・・・」

「一旦指示を仰ぎに行こう、 シャンはここで待っててくれ!!」

「その必要は無い」


ハイメが慌ててやって来た。


「ハイメ様!! 一体何が!?」

「分からん、 だが陛下が直接動き出した」

「動き出したって・・・まさかレオポルドを許すとかそう言う事ですか!?」

「分からない、 だがしかしハウバリン公爵からはスルーする様にと言われた」

「公爵閣下が買収されたと言う可能性は?」


ハイメが心底下らないとメリーを見る。


「・・・あり得ないだろ」

「何故?」

「・・・・・はぁ・・・普通に考えて分かるだろう」

「何故ですか?」

「しつこい奴だな、 分かった、 教えてやろう

金で物事を解決すれば『あの家では無礼を働いても金で何とか出来るだろうな』

という前例が出来る、 ある一定のラインではそれも良いだろうが

公衆の面前で婚約破棄は最早交渉の余地無し、 一昔前なら戦争の火種になっているだろうし

今でも下手すれば戦争になる、 上で何かしらの問題が発生して合意を取ったのだろう」

「何かしらの問題って?」

「私に通達されない時点で【知ってはならない類】の問題だ

それ以上知りたがるな、 消されるぞ」

「・・・・・」

「・・・それでハイメ様、 我々は如何すれば」


シャンが尋ねた。


「次に指示がある迄待機」


ハイメはこれ以上話したくないと言わんばかりに去って行った。


「何が起こってるんだ・・・」

「さぁ・・・」





一方その頃、 ジュンの攻防は未だに続いていた。

バスタードブレードで壁を打っ壊して何とかマンションに突入。

出入口及び非常階段に仕掛けていた罠を次々と回避していく。


「何だコレ・・・」


マンション内には大量の武器や生活雑貨、 違法薬物の類等が山の様に並んでいた。

食料品ですらガチで数十人が何年も籠城出来る量が揃っていた。


「ただ物では無いと思っていたが、 ここ迄とは・・・」

「うわぁお!!」


そして明らかに異常な牙と異常な行動の男達。


「レオポルドの様な盆暗ぼんくらにここ迄のコネが有ったとは驚きだな・・・」


次々とバスタードブレードで男達を切り落としていくジュン。

さっきから小出しで戦力を投入して来ている。

戦力の逐次投入は愚策と言うのは兵法の基本であるが、 今回に限っては理に適っている。

そもそも此方が一人しか居ないのに全員で出張る方が愚策。

それよりも敵の全体像、 総兵力が分からせない情報アドバンテージは

敵の精神を削るだろう。

敵にすれば終わりが見えないのはとても辛い事だ。

とは言えジュンは左程苦痛には感じない。

示現流の稽古は10000回打ち込みとして実剣と同じ重さの木の棒を振るってから始まる。

地道な稽古と言うには余りにも狂った数である。

ハウバリン公爵の戦闘部隊として稽古ですら気を抜かないのだ。


「流石に1万人は居ないだろ」


稽古と実践は違うが1万回も剣を振り下ろせるような男に

スタミナ切れや精神的摩耗の恐れは無いだろう。


「お前、 本当に人間か?」


現れたのは牙が大き過ぎて顔面の半分以上が口の様になっている男だった。


「お前は?」

「裏稼業の人間だ、 名乗らんよ」

「そうか」

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