プリンス・レオポルド・テリブル・24アワー

【レオポルド王子人生最悪の24時間】と言う名前を浸透させたのは

何を隠そうアリストッドである、 彼女が後に出版した自伝において

【レオポルド王子人生最悪の24時間】と言う章題にてこの事件の事を紹介している。

この事件はアリストッドの人生において多大な影響を与えたと言って良い。

以下、 引用する。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


罪人レオポルドが卒業パーティーで私への婚約破棄を宣言した時

私は初めてこの男を理解出来なかったと痛感した。


レオポルドは王家と公爵家に喧嘩を売ると言う本人の身の丈に合わない暴挙を働き

通常ならばとっくの昔に居なくなっていた筈だったが

私と私の実家で搾り取ろうと決めたので徹底的に絞る事にした。


そして情婦と共に住む事を許し、 12年後には自由の身と言う

あり得ない程の厚遇であった。


にも拘らずレオポルドは全てを御破算にした、 意味が全く分からない。

後々にナンナが裏で手を引いていたらしいという事が分かり

レオポルドの暴挙はナンナの暴挙とされレオポルドの名誉回復が為され

今では『レオポルド』の名を付ける者もいるらしい。


確かに語感的にはカッコいい、 レオポルドと言う名前は彼の数少ない

良い所と言っても良いだろう、 だが罪人の名前を付けるのは私は如何かと思う。


話を戻そう、 レオポルドはポニカとの幸せな生活を何もかも投げ捨てて

私に牙を剥いて来た。

レオポルドと言う男が私の予想を超えて訳の分からない事をし始めた。

私は正直、 レオポルドをタダの底抜けのヴァカとしか思っていなかった

これは誰しもそう思っていただろうし、 実際ベネルクス93世陛下も

公式文書で『史上稀にみる超絶の大ヴァカ者』と記されていた。


だがしかしあまりにも意味の分からない行動をレオポルドが取って来て

私は初めて目の前の男が理解出来ず、 フリーズしてしまった。


対応が遅れ捕縛されかかったが後のベルモンド伯爵とセルデン侯爵が止めに入り

何とか助かった、 人生で一番の危機は間違い無くあの場面だったと言える。


一体何故そんな事をしたのか?

レオポルドは側近を殲滅されそのままポニカと共に処刑されたと聞く。

その場に私の父も居たので間違いは無い。

レオポルド曰く理由は様々だが『アリストッド自分レオポルドよりも大事に

思われていたのが気に喰わない』事が一番の理由だったという。


私はぞっとした。

レオポルドはハッキリ言って私の事を相当ぞんざいに扱っていた。

私もレオポルドをぞんざいに扱っていたが一応、 茶会やら祝い事やらは

していたがレオポルドからはそんな事は一切無かった。

一年に会う機会が全くない年も珍しく無かった。


要するに私はレオポルドにとって相当遠い人物である。


読者諸賢も想像をして貰いたい。

殆ど会った事の無い人物に自分だけでなく自分の仲間と恋人の

人生全てを投げだせる程、 人を憎む事が出来る人間がこの世にいる事を。


私は初めて人間が恐ろしい物だと感じた。


私は自分は貴族であるよりは商売人になった方が向いているのでは無いのかと

思い始めて来たのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



この記録の通りにアリストッドの中ではパラダイム・シフトが起こっており

社交よりも寧ろ実利的な活動に注力する事になる。

事実として【レオポルド王子人生最悪の24時間】の後に半島戦争が始まり

アリストッドはとある小さな薬問屋が開発した

メタンフェタミンと呼ばれる鎮静剤に着目し投資を行い

メタンフェタミンによって大いに儲けたという。


メタンフェタミンは半島戦争とヨーロッパ戦役で

大いに利用され戦線に少なからず影響を与えたのであった。




しかしながら【レオポルド王子人生最悪の24時間】の中心人物は

先述の通り、 レオポルドではなくナンナが中心人物だとされている。

ナンナは裏でモーント・ズンディカーズと繋がりのある人物で

ダーロングから横流しされた騎士団制服をモーント・ズンディカーズに渡し

更に今回の事件の人員の配備も指揮をしていたらしい。

しかし後年の調査によるとモーント・ズンディカーズで

ナンナをしていたのは別人であり。

ナンナは『ナンナの役割を演じていたモーント・ズンディカーズの工作員

を演じていた正体不明の謎の人物』と言う謎めいた事になっている。

ナンナ自体の正体は不明であり、 遺体も残っていない。


だがナンナが何らかの思惑で動いていた事は確かであり

モーント・ズンディカーズのコネクションを利用して

恐ろしい事件を引き起こしていたのだった・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る