バーニング・キュウ

再誕歴7527年メイ15日。


ベネルクス王国首都国王直轄領ブリュッセル。

ベネルクス王立学園、 ハウバリン公爵の過激派たまり場の焼却炉。

アンポールとリャクが話し合っていた。


「と言った所でしょうか」

「平民の補充要員の事は大体分かった、 分かり易くて助かる」

「ありがとうございます!!」


アンポールが頭を下げた。


「しかしアンポールよ、 俺に合わせて留年する必要は無いんだぞ?」

「・・・・・」


眼を逸らすアンポール。


「素の学力が低くて素で留年したのか・・・」

「本当に申し訳ありません・・・」

「別に構わん、 学力や学歴は有った方が良いだろうが

所詮、 俺達は戦場で刃物ヤッパ持って相手の脳天に叩き込む事が本懐

寧ろ知恵はない方が良いかもしれん」

「それは如何かと・・・」

「いやいや示現流の本家本元ではちえすとと言う言葉もある」

「ちえすと?」

「知恵捨ての意味だ、 要するに知恵を捨てて、 雑念を捨てて全力でぶった切れと言う事だよ」

「なるほど、 ためになります・・・そういえばリャク様、 最近、 レオポルド殿下の手下の

商人上がりズベイ男爵の倅が何やら投資話を持ち掛けているとか」

「あぁ、 俺も聞いたよ、 あれは間違い無く嘘だろうな」

「嘘なんですか?」

「あんな高い利率を維持出来る訳が無い、 もしもそんな滅茶苦茶な利益を上げ続ける事が出来れば

そいつはズベイ男爵家なんかとはつるまないだろう」

「そうなんですか?」

「レジェンド級の投資家でも1年現実世界の3ヶ月で利益5%がやっとだ」

「すっごいなぁ・・・」

「そもそも投資なんてもんがそもそもの間違いだ

あんなもん博打と変わらん」

「いや、 でも最近資産形成が如何とか言ってますよ?」

「試しにやった事のある奴の話を見た事があるが

1年やって最終的に損切りになったぞソイツ※1」



※1:『Mr.後困る、投資をやってみた』より引用

ttps://www.alphapolis.co.jp/novel/391681355/668553991



「それは酷い・・・」

「そもそも投資をするなら投資先の事を調べるとか色々前提知識が必要なんだよ

俺は出来なかったし、 さっき言った奴も出来てなかった

楽々資産形成とかそう言う事はまず出来ないんだよ」

「それなのに引っかかる人が結構多いらしいですが」

「損しても殿下にケツ拭いて支払ってもらうつもりじゃないのか?」

「なるほど・・・」

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


転げ落ちながら焼却炉に入るジュン。


「・・・・・如何したんだジュン」

「あつつ・・・た、 大変です兄様!!」

「だからどうしたんだって」

「キュウ兄様が!!」

「!?」



再誕歴7527年メイ15日、 ナンナの素性を探りに外国に出かけていたキュウが

風土病※2に罹り病没したとの知らせが入って来たのだった。



※2:ある限られた地域の気候

土壌、 生物相などの自然条件と住民の風俗や習慣などがあいまって起こる病気の総称。



再誕歴7527年メイ16日。


セルデン伯爵領、 セルデン伯爵邸。

自室で受けた報告にセルデン伯爵は眼を見開いた。


「ヴァカな!! 風土病だと!?」


セルデン伯爵は机を思い切り叩いた。


「ひぃ!!」


通達に来た使者は震えた。


「落ち着いて下さい伯爵」


セルデン伯爵の最も信頼厚い男ファンクが制する。


「キュウは病気に罹るヘマをする様な奴では無い・・・

臆病だからこそ、 危うしには近づかない、 故にこれはレオポルドに暗殺されたのではないか!?」

「分かりません・・・しかしながら腑分け解剖をすれば幾らかは分かるかと」

「良し、 やろう」

「い、 いえ!! それが感染拡大防止の為に既に火葬したと・・・」

「んだとぉ!!!?」

「ひぃぃぃぃいいいい!!!」


使者が絶叫を挙げる。


「人の息子の死体を燃やすとか何を考えてるんだ!!」

「あ、 あちらでは病人は燃やすという規定になってるんですうううううううううううう!!!

うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


使者の襟首を持ち上げるセルデン伯爵。


「落ち着いて下さい伯爵、 彼は伝令ですから彼を締め上げてもどうにもなりません」


ファンクが止める。


「このまま引き下がれと!?」

「いえ、 焼いた奴の首を取りましょう、 君、 燃やした輩との決闘の手続きに入りなさい」

「は、 はいいいいいいいいいいいいい!!!!!」


降ろされた使者は早々に去って行った。


「はぁー!! はぁー!!」

「落ち着いて下さいよ、 少しは・・・」

「これが落ち着いてられるか・・・・・

しかしキュウはレオポルド殿下の側近の背後調査に出かけて死んだ、 これは偶然か?」

「さぁ・・・分からないですが、 更に調べる必要があるのは確実でしょう」

「・・・・・ファンク、 人選は任せる、 キュウを燃やした落とし前は必ずつけさせろ」

「了解しました」


ファンクは立ち去った。

ファンクは落ち着いていてが去った後には血の跡が有った。

それ程、 握りこぶしを強く握っていたのだろう。

ファンクはセルデン伯爵の子供の面倒も見ていた事がある。

自分の息子の様に大事に思っていたのだろう、 キュウは特に思い悩んでいて

手のかかる子供だった、 だからこそ思い入れが強いのだった。

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