ストロンゲスト・デュエリスト

再誕歴7700年マーチ11日。


ブラック・シンゲツ・コーポレーションの6階の会議室に集められた

ブラック・シンゲツ・コーポレーションの幹部達12名と筆頭株主になったツゴモリ。


「えー今日から筆頭株主になったツゴモリから組織再編の知らせが届いていると思うが・・・」


形だけの社長となったヴォイドが苦々しそうに口を開く。


「フェザーさんが居ないのは分かりますが・・・集まりが悪いですね」


社内決闘者序列4位【デスサイズ】A級決闘者ネヨー。

痩せぎすの彼は消え入りそうな声で呟いた。

スキンヘッドと相まってまるで骸骨だ。


「2位も3位も集まりが悪いが10位のガキも居ないじゃないか、 一体何だ?」


社内決闘者序列5位【破壊の蛙】A級決闘者フロッグ・タッドポラが悪態を吐く。

まるで蛙の様な醜い太った体だが、 威圧感で更に体が大きく見える。


「会議なんてめんどくせぇー!! さっさと戦わせろよ!!」


社内決闘者序列6位【野獣】A級決闘者ビースト。

下着姿に獣の毛皮を被っただけの野生児、 文字通りの戦闘狂の男がまともに会議に来ているのに

来ないのは確かに異常である。


「ビーストどんの言う通りでごわす、 こんな会議なんて無駄でごわす

最近は仕事が来なくて暇ごわす」


社内決闘者序列9位【無法海】A級決闘者カナウチ・ダゴン。

ビーストの唯一と言って良い友人、 元力士の彼とビーストは八百長なんて器用な真似が出来ない為

若干干されている。


「・・・・・」


社内決闘者序列7位【黙闘】A級決闘者ムゴンは厚着のニンジャ装束の中で静に佇む。


「うー・・・今日は星占い最下位だったんだよねぇ、 不安だなぁ・・・」


社内決闘者序列8位【ハッピーガール】B級決闘者アストロジャーは過剰なフリルの付いた服を

自分のツインテールを弄んでいた。


「決闘者の御三方が来ないのは不思議ですが

こちらも対外交渉部部長と財務部部長が来ないのが心配ですね

総務部部長、 如何思います?」


営業部部長 ウェンズデーが尋ねる。


「なる様にしかならん」


総務部部長 ヴァンルフは傷だらけの自らの顔を撫でながら瞑目した。

彼に睨まれ広報部部長 ヒロシは震える。


「なぁにビビってんのかしら」

「ヒロシは悪い事いっぱいしてるからね、 しょうがない」


人事部部長 チェスは蠱惑的な笑みを浮かべ

物品管理部部長 ソーコバンは眼鏡を調節しながら本を読んでいた。

彼女達二人は真逆の性格だったがそれ故に相性が良かった。


「これは酷いッスね」

「ホント、 うんざりする、 ちゃんと纏めていた先代は凄過ぎるわ

まぁいずれにせよ、 私は筆頭株主、 言う事には聞いて貰う」


クラブの意見に同調しつつツゴモリは決定を発表する。


「まずは社長、 及びA級決闘者フロッグ・タッドポラ

対外交渉部部長、 財務部部長、 広報部部長、 及び300人の決闘者の解雇処分」


ざわつく一同。

半面呼ばれた者達は納得した、 彼等は八百長を知って居たのだ、 その責としての処分なのだろう。


「納得いかねぇなぁ!! いきなり首突っ込んできて何様だよおめぇ!!」

「筆頭株主様だよ」


ビーストの言葉を事も無しに流すツゴモリ。


「じゃあ新社長は誰に?」

「勿論俺様だ!!」


ばぁーんと会議室のドアを蹴破って入って来たのは。

社内決闘者序列1位【最強決闘者】チーズ

お面に兜に返り血が付いた白紋付の袴を来た男である。

真っ赤な長い髪を振り回すさまはまるで歌舞伎だ。


「「「「「な、 何やってんだお前ぇえええええええええええ!!?」」」」」


驚愕する一同、 チーズのKATANAに突き刺さっているのは

社内決闘者序列3位【ドラゴンスレイヤー】A級決闘者ヴォエン!!

既に絶命している!! 一体何が!?


「俺様をぶっ倒してこの会社最強の決闘者になるつもりだったらしい

いやー、 久々にKATANA抜いたわー」


ぶん、 とKANATAを振る頃で刺さっていたヴォエンをバラバラにした。

ヴォエンの身体は粒子となりKATANAに吸収される。


「最強はフェザーさんでは?」

「がいこつはヴァカだなぁ、 俺様が最強に決まってるじゃねぇかガフォガフォガフォ!!※1」



※1:笑い声



イラッ、 とするネヨー。


「お前が新社長だと!? お前は俺が拾ってやったんじゃねぇかチーズ!!」


激昂するヴォイド。


「一番強い俺が一番良いポジションに着くのが自然だろう」


再度KATANAを振り刀身に着いた血を払う。


「それに」

「ちょっと待てこれは殺人事件では?」


チーズの言葉を遮りフロッグが疑問を口にする。


「今俺様が喋ってんでしょーが!! KATANAビーム!!※2」



※2:ウィルパワーを消費してKATANAの先からビームを出す技。

フィクションにおける飛ぶ斬撃の正体はこれで有ると言う説が支配的である。



「ぐわああああああああああああああああああああ」


吹っ飛ばされるフロッグ。


「お、 お前!! こんな所で!!」

「安心しろ、 峰打ち※3 だ」



※3:峰とは片刃の剣の刃が付いていない方

峰打ちとは峰で殴る、 転じて手加減の意味を持つ。

因みに峰で打たれたても鉄なので斬られないが結局死ぬ。



「心配無いウィルパワーで防御した・・・」


ふらふらと起き上がるフロッグ。


「まぁ、 これ位は防御して貰わないとなぁ、 流石に張り合いが無いよ」

「それよりも!! ヴォエンを殺したのは殺人じゃないのか!?」

「問題無いですよ」


ぬっ、 と現れたスーツを着た死人の様に白い肌で

奈落の底の様に黒い髪の長い髪、 そして紅蓮の瞳を持つ背の高い女。


「どーも※4 EUDMO※5 立会人№564※6 です」



※4:言葉に出来ないと言う意味


※5:ヨーロッパ連合決闘責任者組織。

ヨーロッパ連合で行われる決闘に関する全てを取り仕切る

ヨーロッパ各地で行われる決闘には様々なルールや法が有るが

EUDMOに届け出を出しEUDMOの立会人が立ち会うは確実である。

どんなに小さな村落でもEUDMOの事務所が有り

例え村落の外でもEUDMOの立会人が徘徊しているので

割と簡単に決闘が出来る。

尚、 決闘代行業の紹介や仲介も行う事がある。


※6:EUDMOの職員は番号で名乗っている。



「立会人!? じゃあ決闘をしたっていうのか!?」

「当然!! 俺様も不用意に法を犯したくないからね!!

筆頭株主殿が面倒を省いてくれたよ!!」

「どういう事だ?」

「EUDMOと交渉しまして新しい試みとして

社内の決闘者同士ならば手続きの簡略化して決闘を行えるシステムにしました」


ツゴモリの説明にどよめく一同。


「それは・・・アリなのか? 決闘が容易に行えるというのは問題がある様に思えるが・・・」

「良いんじゃねぇの?」

「そうでごわすね」


ネーヨの疑問を払拭する様にビーストとダゴンは賛同する。


「決闘者は決闘してなんぼでごわす」

「そうそう、 序列が変動しやすくて良いよ」

「む・・・・・」

「勝手な真似を・・・」

「新社長と協議しましてね、 彼は喜んで居ましたよ」

「チーズ!! お前!!」

「だまらっしゃい!! 俺様が社長!! アンタは前社長!! 俺の方が偉い!!」


ヴォイドの抗議を一蹴するチーズ。


「そもそもアンタ会社の金を横領しただろうが!!」


そう、 八百長以外にもヴォイドは横領もしていたのだ。


「横領だと!? 俺の会社の金を俺が使って何が悪い!!」

「株主の会社だよ、 本来ならば裁判を起こすがこのままにしておいてやる」

「っ!!」


バンッ!! と机を叩き去って行くヴォイド。

後を追うようにフロッグとヒロシも付いて行く。


「所で10位は如何したよ?」


ビーストが社内決闘者序列10位【要塞縛り】S級決闘者マーマレードの居場所を問う。


「金を持ち出して逃げた対外交渉部部長、 財務部部長の捕縛に向かっている」

「警察に任せろよ」

「最近は警察の不祥事も怖いからねぇ・・・」


ヴォイドが座っていた椅子に座るチーズ。


「あんまり良い椅子でもないな、 これ」

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