第一章

01:剣術

 目が覚める、知らない天井と知らないベットだ。ベットから降りると向かいに丁度良く鏡が置いてある。その姿を見て確信する。


「よっっっっしゃああああ、転生だああああ!」


 ガッツポーズをとる。しかも前世の記憶持ちで、チート有り。ウキウキな気分でベットから降りると、ふと目に入るものがある。


 机の上の本があり、そこには『起きたらすぐ読むこと』と書いてある。そして机の横には木で出来た本棚がある。


 本棚は綺麗に区分けされており、『剣術』『魔術』と書いてあった。


「なんだこれ……とりあえず読んでみるか」


 俺の1週間は、いつもこうして始まる。今週は剣術をやってみよう。


◇◇


「父さん、剣術を習いたいから先生を呼んでもいい?」


「ああ、では私から頼んでおこう。明日から来てもらおうか」


「うん、ありがとう!」


 剣術を習いたい場合は、【1日目の朝食の時に父にお願い】すると、その週は剣術を習うことができる。あまりルールを作りすぎてしまうと、俺がその日にできることが減ってしまうので1日目はこれだけだ。


1日目は歴史書の翻訳作業に取り掛かる。


 こちらの文字は分からないので、何週か前の俺が日本語との対照表を作っている。対照表を見ながら歴史書の翻訳をした。歴史書を日本語に訳しておくことで何週間後の俺が、それを参考になにかするかもしれない。


 きっとこの日本語との対照表を作った何週間前の俺も、そんなことを思って対照表を作ったのだろう。俺のこの翻訳もいつかの俺に役立てばいい。


2日目から剣術の練習を行う。


「やあ、アーサー。今日は、基礎の確認からやるよ。最初は僕の振り方を見て真似してくれ」


「はい!」


 何週間前の俺が、剣術の指導方法を先生にお願いしている。1週間で習ったことを忘れてしまう俺は【2日目は基礎練習をして感覚を取り戻す】ことにしている。先生の真似をしながら素振りを行う。


 この1週間で記憶を忘れるという試練だが、判明したことが一つある。それが体で覚えたことは体が覚えている、ということだ。


 なのでこの基礎練習をすることで体が勝手に動きを思い出す。この不思議な感覚は、覚えていないのに以前やった気がする。といった既視感(デジャブ)に似ている。


「ふっ! ふっ!」


 一通りの型を習い、あとは無心で剣を振るう。何も考えずに、汗を流しているこの時間が好きだ。なにより剣術の才能があるからか、一振りするごとに振りが鋭くなっている気さえする。


「アーサー。今日は、最初から本格的な実践をするか?」


「いえ、初日は基礎のみで大丈夫です」


 先生とそんな話をする。もしここで俺が初日から実践的な練習をしてしまった場合、何週間後の俺に迷惑がかかるかもしれない。だから折角作ったルールはなるべく破らないようにしたい。

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