36.
121.
しかしまだ多少の疲労感はあるらしいのでお互いの体力の回復のためにも
大人しめの生活を送っているわけなんだよな。
家の中から一歩も出ることなく過ごした後は食料調達の為に市場へ出掛ける事になったのだけれども……。
その道中にて……一人の年配の男性がふと声をかけてきた。
その人は俺の顔を見るとどこか懐かしい感じがする雰囲気を持った人物だと
思える人だったので俺はこんな感じに質問をした。
「えっと。なんか見た事があるような感じがするんですが……?」
と問いかけてみると、その人物は答えを返してきた。
「やはり見覚えがあると思うのならばそうなんでしょうよ。
私は以前この辺りで冒険者として活動していた事もあるんですよ。
それに……昔に一度だけ貴方が依頼を受けていた際に同行したことがあったのですよ。
忘れてしまっていたのですか?」
と言われたので、その時に俺が受けた依頼内容を聞いてみると、
確か……村に襲ってきた盗賊を退治するために、俺がリーダーとなって仲間達を
率いて討伐に向かっていたはずなんだが……。
思い出してみようとしたのだが……全くと言っていいほど何も浮かんでこなかった。
そのことを話すと、俺をここまで育ててきてくれた養父母の話をしてきた。
なんでも、俺がまだ物心つく前の頃に両親が亡くなり、孤児として施設に預けられることになった俺を
引き取ってくれるようにと俺の両親に頼み込んだ結果、養母に引き取られることとなったらしく、
それ以来俺は面倒を見てもらえていたと言う話を聞かされた。
因みにその時に俺は6歳で、その頃にはまだ俺とエルミアと出会えたばかりの頃の話であったので、
俺は記憶に残っているわけもないよなって思って、特に何かを気にすることなくその場を立ち去ったのであった。
その後は俺とエルミアが二人で仲良く買い物をして帰ると家に戻った。
すると家では既に夕飯の準備が終わっている様子であった為に食事をする事にしたのだが
その際の会話がこんな感じであったのだがそこで俺はエルミアに対してこんな提案をしてみたのだが
エルミアはそれを了承してくれた為にエルミアが居ない間にエルミア似の子犬を飼い始めようと
していたりするのだがそれをするのはもう少し先になってしまうことになるだろうと俺は
予想していたりしたのだが結局は俺の考えすぎだったというか、
結局はエルミアが寂しさを覚えてしまわない為にというエルミアのためを
思い至っての行動ではあるのだがそれのせいで俺はエルミアからの信用を失ってしまう事に
なるとは思わなかったしエルミアが傷付くことになってしまうなんて考えてすらいなかったのだが……。
「どうして、あなたは……私以外の女にあんなに夢中になっているのよ!!
許せない……! あなたの一番は……私が……私だけが独占できるの……。
他の人に奪われたくない……。もう、これ以上は……。嫌だよ……」
とエルミアは俺に泣きついてきたので俺はそんなエルミアを強く抱きしめて 宥めることしかできなかった。
暫くして落ち着きを取り戻したエルミアは、俺にこんな言葉を掛けてくる。
「ねぇ……。もしもの話だけど。もし、あなたが……。勇者の人達ともう一度戦う事になるとしたら。
あなたは……。どうするつもりでいるの……? 仮に……戦って勝つ自信とか……。あるの……?」
122.
「それは……。やってみないと分からないかもしれないが……。なんにせよ、
あいつらに仕返しが出来ないか考えていたんだ。そのために……。
もっと強くならないとダメだから……頑張ってるだけなんだけどね……。
本当にそれだけのことだから……。もし負けるようなことになったとしても……
仕方がないって割り切るしかないかもね……。
そもそも……。今の俺じゃあ……。絶対に敵うとは思えないからな……。俺自身まだまだだし……。
悔しいな……。でも……。これで良かったとも思うんだ……。だって……。今はこうして……。
最愛の人が傍にいるから……。だから……辛い事があっても頑張れるから……。
さぁ……。今日は色々と大変な目にもあったから……。早めに戻ってゆっくり寝るとしようか……?」
「うん……!」
と嬉しげに返事をしたエルミアは笑顔を浮かべてから俺に抱き付いてきたのだった。
そんなエルミアに口付けをし抱きしめ返したまま帰宅するとすぐに眠ってしまったのである。
翌朝になると俺達は昨夜の話の続きを行うことにしたのである。
そう。俺と勇者達が今後再び対峙することになったときにどうするかを決めるための話し合いを行い、その結果。
こうなったのである。
「エルミア。俺はこう見えても勇者パーティーにいる時は雑用だったが、それでも真の実力を出せば、
最強だし、俺自身は勇者達とは対峙する気もないし、このままエルミアとのほほんと暮らしていくだけだな」
と俺が言うとエルミアは悲壮な表情になりながらも俺に話し掛けて来た。
エルミアは涙を流しながら俺に問い詰めるように尋ねてきた。
そんな彼女の目を見て俺は本当のことを答える事にした。
「実は……。俺はな……。お前と初めて出会ったとき。最初は本当に弱い力の持ち主だったんだ。
そんな俺だけども……。とあるきっかけで今ではこの世界でもかなり強い存在になれたんだと思う。
そして今は……お前のお陰もあって……それなりに強くなることができたからこそ……。
だからこそ……。今は余計なことは考えずに。ゆっくりと平和的に過ごしていきたいと考えているんだ……。
すまない……。だけど……。本当だ。信じてくれないか……?
そんな悲しい顔をしないでくれ……。エルミアは……。笑ってる顔が一番可愛いんだから……」
するとエルミアは涙を拭いてから満面の笑みを見せてくれた。
その笑顔を見ただけで俺も幸せだった。
123.
俺の話を聞いたエルミアはそのまま暫くは何も喋らず俺のことを優しく見守っていてくれた。
だが少し時間が経った後に、エルミアはこんな言葉を言ってきた。
「分かりました。これから……一緒に。楽しい日々を過ごしましょうね。
貴方と一緒にいられる事が…… 本当に私の幸せなのですもの」
「そうだな。ありがとうなエルミア。これから始まる新しい毎日に期待を寄せていくぞ!」
と俺は意気込んでいく。
エルミアも笑顔で答えてくれたのだが俺はこの時に少しばかり疑問が芽生えたので
エルミアに疑問を投げかけてみる。
そう言えばエルミアと出会った頃と、少し前の頃の俺と今現在の俺の違いとやらを
エルミアが言ってくれたことがあるんだけどさ。
それが何なのかは詳しくは聞けなかったが……。
その時と今現在との変化が分かるものがあるからと言われ、
その場所に向かうと俺は思わず絶句してしまったのであるが、そこには大きな卵のようなものがあった。
しかもエルミアはそこから感じる生命力は本物なのだと言い始めたので、
俺は不思議に思いつつも、これは一体何なんだ……と思いエルミアに訊くことにしたのではあるが……、
彼女は頬を赤く染め、恥じらいを持ち始めて、小さな声で囁く様に、
一言ずつ噛み締めて呟く様な声音で説明を行った。
そう。俺はこの時まで、知らなかったんだ。まさか……。俺達が夫婦になってすぐのタイミングで……。
その日が来るのは意外にも早いものだな……。
ま、まあその前にまずは俺の気持ちが最優先な訳であって……。
エルミアが気持ちよくなれればそれでいいんだ……。
俺はそう言い聞かせつつ、彼女に促されるがままに寝室へと向かい、
俺とエルミアは衣服を脱いで肌と肌が重なり合い、愛し合うのだった。
俺は彼女と身体を重ねるたびに思う事は、俺は彼女を愛しているという感情が強くなっていき
彼女を誰にも渡したくはないと思っており同時に、ずっと二人で共にいたいと
願ってしまうくらいに強く想っている。
「貴方……。私は何処へも行かないわ……。貴方と一緒にいることが……。
私が望むことであり、この世界で生き続けることの意味でもあるんです。
だから貴方……。安心していて下さいね。私は貴方を決して置いていったり、
一人きりで孤独に追いやったりするなど絶対にいたさないです。
私はこの世界の中で貴方と共に生きていけることが嬉しいの……。
だからお願いよ。私を捨てたりなんかしたら、私は悲しみに打ちひがれてしまうに違いないの。
だから、絶対離れないで、最後まで見捨てることはしないで頂戴。分かったのかしら。
分かっているなら良いけれど……?」
と言ってくるのがとても可愛らしいのだが俺はエルミアの頭を撫でつつ、
微笑んで見せると俺の腕にしがみつき甘え始めるのだ。
そんなこんなで朝を迎えてしまったのだがエルミアと一晩を共にした後は俺はベッドでそのまま二度寝をする。
エルミアの裸体を眺めたまま俺はまた夢の世界へ入っていったのであった……。
それから更に一週間が経過したある日の事、エルミアから突然こんな提案を受けてきた為に
俺は戸惑いを覚えることとなる。
エルミアからの提案というのは簡単なものであった。
その内容は……。
俺は、自分の力を試したくなったので外に出たいと思うと言ったのならばエルミアは
二つ返事をしたのと俺がやりたいと思ったので止めるつもりもなく俺を見送ってくれたのである。
「私には内緒の外出ですね。楽しんできてらっしゃい。
お帰りなさいを心から待っております。あなた……♡」
「ああ……。直ぐに帰ってくるよ……」
と約束を交わした俺であった。
外に出る前の出来事なので俺はとりあえず装備一式を身につけて家を出ると
エルミアが見送りに来ていたので手を振りその場から歩き出す。
村の中心の噴水広場にて……俺は村の皆に話しかけられて軽く世間話をするのであった。
村人からはこんな話を聞く。
最近、
「村の中に魔物が現れて畑が荒らしまわったりしていたのだけれども貴方のおかげで無事に退治されたのよ!
しかもその報酬は全部勇者様達の方で貰ってくだされて……。
村長は感謝しても仕切れないほどに喜んでいました。
それと。あの後で貴方が家に連れてきた奥さんの女の子はとても綺麗だったので、
勇者の奥様はやはり美女でないといけないんですねぇ……」
と言っていたのだ。
そんな事を言っているのを聞いていたのだが、俺はそれを聞かなかったことにしてから
俺は目的地に向けて出発することにした。
するとその途中で見覚えのある人がいるのを発見したがどう見てもそれは知り合いであった為に、
声をかけてからその人との会話を楽しむ。
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