8.
22.
それから数時間後、俺が目が冷める頃にはミハルは既に目覚めていたらしく、俺が起きるのを待っていて一緒に起き上がった後はいつも通り、朝の食事をとることにした。
そして食べ終わると今日の予定を決めるべく話し合いが始まった。
俺は街に出て冒険者としてお金を稼ぐつもりでいることを伝えた。
すると、ミハルが自分も付いていきたいと言い出してきたが今回は
断るしかなかったのだ。
その理由としては単純に危険だということもあるがミハルを連れて行った際に何かあって怪我などさせたらいなくなってしまうかもしれないという不安もあるのだ……ミハルには危険な目にはあわせたくない。
俺にできる限り守り通せるだけの実力を身につけたら、その時に俺から告白をしようと考えていたので、今回のところは何も言わずに、俺は一人、ミハルの家から出発すると冒険者ギルドへ向かった。
俺達が泊まっている宿から冒険者協会までは意外と近かったため、そこまで迷うことなくたどり着いた俺は早速登録のためにカウンターの前まで行くと受付嬢に声をかけた。
(いらっしゃいませ。今日はどのような御用でしょうか?)
受付の女性の元気な対応に思わず俺は戸惑ってしまったのだが気を取り直して登録を頼みたいと申し出ると女性は快く応じてくれた。
(それでは、この紙に必要事項を記入してから提出をお願いします)
と言われたので指示通りに書いて渡す。女性に書類を渡そうとしたところで、俺は女性の容姿に意識を集中させて
しまっていたのだった。
俺よりも頭一つ分身長が低いが、女性らしさが強調させる乳房の膨れに腰回り、脚の長さは文句の付けどころが無いとまで
思うほどだった。
そんな彼女が目の前にいたのだから当然と言えば当然なのかもしれなかった。
彼女はというと特に何も気にせず淡々と手続きを進めており、俺が名前と性別を書いて出すと、彼女の手の動きが止まる。
(これは……本当ですか???
いえ! 失礼しました。私は職業柄様々な方とお会いすることが多いのでもしかするとあなた様の事をどこかの王子様に勘違いしてしまいそうになっていたようで……)
(えっ……)
(それでですね……一応の確認なのですが……貴方の年齢は25歳と書かれていたのですが間違いありませんかね)
俺はこの時初めて年齢について指摘されたことで焦りを覚え始めたのだがどうにか平静を保ちつつ返答を行う。
(えっ……はい……あっ!!)
(ふっ……なるほど……嘘つきは泥棒の始まりと言いますよ……まあ良いでしょう……。とりあえず仮の身分証を発行して差し上げましょう。これがあれば多少のことがあっても身元さえ保証されれば大丈夫です。ちなみに私の名前を申し遅れましたがリリィですよろしくお兄さん!)
(ああどうもありがとうございます。俺はユウトです宜しくです)
こうして俺の冒険者の第一段階の登録が終了した訳だがこれで晴れて俺も冒険者にジョブチェンジ出来たわけである。
23.
「やっと俺の夢が叶った……」
俺は夢が現実になったことに喜びを感じると自然と涙が溢れ出した。
俺はとりあえず今後の活動方針を考えながら歩き出そうとしたときに、偶然にも向こう側から歩いてきた二人組の男達に絡まれてしまったのだった。
片方は長身のガタイの良い男性で筋肉質の体に鋭い目付きと鼻筋が通っている整った面持ちに、爽やかな雰囲気を纏わせているのだが、見た目とは裏腹に傲慢な態度をしており、俺のことをゴミを見るかのような目を向けてくると、俺のことを笑いながら
話しかけてきた。
俺は内心でこいつと関わらないようにしようと思っていたのだが、もう一人の男が俺を指差しながら馬鹿にした態度をとると、
「おいお前らそんな冴えない野郎に絡んでんじゃねえぞ」
と忠告とも取れる口調で俺に言い放った。
俺が睨むと、それに気づいた男は俺に対して不快感を隠すこともせずに俺のことを汚いものを見るような目をしてきた。
俺は怒りがこみ上げて来るのを感じていたが、ここで怒ってしまうと相手のペースに持っていかれてしまいそうだと思い必死に
耐えていた。
すると俺が黙って耐えている様子に調子に乗ったのか 更に挑発するようなことを
言ってきた。
俺はさらに頭に血が上ってくるのを感じて、殴りかかりそうになったときに俺のことを庇うようにして前に出てきた人がいた。
それは先程俺のことをバカにしていた
男であり、
「おいやめろ。その人は俺を助けてくれた恩人でありこんな奴らの相手をしていては時間の無駄だ」
と冷静な判断で俺のことを助けてくれたみたいで、俺はこれ以上彼らの相手を続けるメリットは無いと思い、その場を離れようとすると さっき俺のことを罵倒した長身の男の方は、俺のことが気に食わなかったのか、俺に向かって石を投げつけてくると見事に俺の後頭部に当たり俺はその場で倒れてしまった。
「ざまあみろ!」
と嘲笑いながら俺を見下すように見ていると、横から止めに入った人が
「いくらなんでもやりすぎじゃないのか?」
と注意してくれたので俺が安心していると、
「はぁ~まじでウザいなー」
と一言呟いたと思ったら、突然俺の方に近づいてくると俺の胸ぐらを掴みあげてそのまま持ち上げると、俺の腹に拳を叩き込んでくると俺はその場に崩れ落ちる。
「ぐは! なにをしやがる!」
と俺が言うと、
「なんだとこの雑魚が! 生意気なんだよ! 大人を舐めてっと痛ぇ目に遭うんだぜ」
と、もう1人の短髪で眉毛が薄いのが特徴の男性が俺に掴みかかろうとすると、今度は俺を助けた男性が2人を引き離してくれたのだが、俺は腹を押さえてうずくまる。
助けてくれた男性は、俺に謝罪を行ってきてくれたのだが俺はすぐに立ち上がって俺はなんとか彼らに謝ってくれと説得を試みたが、彼らは聞く耳を持たずに俺を責め立てる。
俺がもう許してくれと言うと、今度は彼らが俺を脅迫し始めると俺は今度こそ本当に泣きそうになるが、
「いい加減にしろ!!」
と怒鳴るような声が聞こえたかと思うと、俺のことは見覚えのある人物が立っていた。
彼はあの時最初に俺に優しく接しくれた青年のようだったが、今の彼が放つ威圧感はとても俺に親切にしてくださっていた彼と同一人物だとは思えなかった。
24.
彼は俺に近づくと、3人に向き合うと、
「僕の友達に手を出すとは良い度胸をしているね。君達みたいな野蛮人と関わるのは嫌なのだが、見逃せない事情があってね。少し僕と遊んでくれるかな?」
と落ち着いた声で話し、明らかに怒った状態の彼を見た俺はもうこの時点で終わってしまうと察してしまった。
俺が逃げ出せば彼は俺の事も守るために、容赦無く彼らを制裁するだろう。
しかし、俺は彼らのおかげで助かった身として逃げるというのはあまりにも情けなさ過ぎるし、彼に見放されてしまうかもしれないのでそれだけは避けたかった。
すると、俺に嫌がらせをした男達は俺をダシにすることで少しでも有利な状況に持ち込みたいと考えているらしく、俺に近づき、俺を人質にとることでこの場を逃れようとしていることはすぐに分かった。
彼の方が圧倒的に強いはずだが、この状況であれば俺を利用して有利に動けると踏んでの行動だったのは明白ではあるが、俺はその作戦には乗らずに俺はあえて抵抗を見せず、相手に自分を差し出すことを選んだ。
「いいとこに来やがったな。悪いがそいつも連れていくのを手伝ってくれないか?」
と、俺に足をかけながら、俺の足を掴んで俺を無理やり引っ張ろうとしたが、俺の体が倒れると俺の腰付近に衝撃を受けてまた激痛に襲われる…… 俺は気絶したが、その直後俺の目の前には銀色の鎧をつけた
人物が現れたのだった。
俺が意識を取り戻すと俺は誰かが膝枕をして俺の頭を撫でてくれていた。
顔をあげるとそこには優しげな表情で微笑んでいる美しい女性の顔があったので
俺は慌てて起き上がる。
俺は一体何をして……それから俺が考え込んでいる様子を見ていた女性が
俺に声をかけてきた。
俺が落ち着くと彼女は俺の頭の中に直接語りかけてきているかのように感じた。
そして彼女から名前を聞かれたので俺は彼女に自己紹介を済ませるとそれを確認した後に彼女はイハルと名乗ってから俺に自分の事をいろいろと説明してくれた。
まずイハルはこの世界の人間ではなく、
神族と呼ばれる種族の一柱であること
(もっともこの世界では精霊王と呼ばれているらしい)、俺に力を与えて勇者パーティーから追放した連中が俺達の魂を使って自分達の力を増大させたことが
原因であることを教えてくれた。
イハルは俺がなぜこの世界に転移したかを調べるためにこの国を訪れていたそうだ。
そんな時にたまたま俺を発見して興味を持ったため俺の事をずっと見ていたのだが、俺が元の世界に帰ることを望んでいなかった事を聞いてイハルが俺に好意を抱き俺の事が好きだから俺を守ってあげたくなったのだと言っており、それから俺がイハルと結ばれた後についても教えてくれるようになった。
それから暫くの間だけ俺と共に過ごしていたが、ある日を境にイハルが失踪してしまい俺が悲しみに打ちひしがれていた時にイハルが女神になって現れた事なども話してくれると彼女はイハルを可愛がっているようだ。
そして、俺はある事に気がついた。
(ん? 女神様が今も側にいる?)
俺は俺の身体を上から覗いて見ると俺の髪の毛の色が変わっていることに気がつき、鏡を出して確認すると俺の瞳が青くなっていた。
(もしかすると、これはステータスの変化の影響だろうか……)
俺は色々と考えていると、俺のことを愛おしそうに見つめていた彼女が急に真剣な雰囲気に変わり、そして俺に抱きついてくると頬にキスをされた俺は驚きで硬直してしまうが、俺はその後冷静になることができ、俺はこれからどうするかを考えながら
行動しようと思う。
俺が彼女の腕の中から抜け出すと、彼女は寂しいというような仕草を見せたので俺は仕方なく彼女を抱きしめてあげると、喜んでいて、その笑顔を見ると俺も嬉しくなって、俺自身としても彼女ともっと一緒に居たいと思っていたのだが、このままという訳にもいかないし何より今は一刻も早くミホを探しに行かないと考えながら俺はとりあえず街に行こうと考えていた。
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