【14/30】Q.賞金の使い道について

 ……改めまして。こんばんはです、エージェントさん。


 本格的な話に入る前に、さっきのあれについて説明してもらえますか。

 さっきの……なんですか? 突撃取材、みたいなの。あれは一体なんだったんです? 部屋の隅々までカメラに収めてましたけど……。楽しかったですか、私の汚部屋を暴き立てて。

 もしかしてエージェントさん、先日のことを恨んでるんですか? そんなに怒ることないじゃないですか。アイスひとつおごらされたぐらいで……。


 ……なるほど、部屋を撮りたかったと。

 そういえば、部屋の中は見せたことありませんでしたっけ。アパートの前までは、よく来てもらってますけど。


 まあ……なんでしょう。

 さっき画面に映りましたのが、私の家です。六畳一間のボロアパートですね。

 プレイヤーになる前から、ずっと住んでるところです。当時はあんまりお金がなかったので、ああいうところに。


 もっといい家に引っ越さないのかって?

 いや、今のところは考えてないですね。ゲームの賞金もだいぶ溜まってますし、引っ越そうと思えば引っ越せますけど……この家が住み慣れてますし、取り立てて不便も感じないので。

 この若さで広すぎる家に住んでたら、ご近所から怪しまれそう、っていうのもありますしね。プレイヤーだってことが周りに知られたらまずいわけですから、このぐらいがちょうどいいだろうと思ってます。

 あー、そうですね。家具も昔のままですよ。壊れでもしない限り、これからも使うつもりです。でもなんでそんなことを……


 ……ははあ、だんだんわかってきましたよ。

 あれですね。ゲームの賞金を、私がなにに使ってるか知りたかったんですね。

 だから、あんなにも念入りに部屋を探ってたわけだ。二十七回クリアとなれば、賞金もかなりのものですからね。そりゃあ確かに、この生活ぶりとは不釣り合いですものね。


 隠すことでもないので、お答えしますけれど……。

 特に使ってないです。普通に貯金してます。


 ……いや、本当なんですよ。宝くじの一等賞が当たったらなにする? って質問、よくあるじゃないですか。私はあれに、貯金って答えるタイプの人なんです。

 せいぜいコンビニを平時利用するぐらいかな……。それが唯一のぜいたくです。


 お金使うの、あんまり好きじゃないんです。

 お金というより、時間のほうかな。大抵の場合、お金を使おうと思ったら、時間も一緒に使わないといけないじゃないですか。旅行に出かけたりとか、おいしいもの食べに行ったりとか……。それがなんか、もったいないと思っちゃうんですよ。


 あとどれぐらい生きられるのか、わからないですからね。

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