【5/30】Q.死生観の話

 ……異常っていうのは、語弊があるかもしれないですね。


 別に私は、自分がおかしいとは思ってないですし。ほかのプレイヤーだって……初心者に関してはわかりませんけど、ベテランはみんなしっかりとした考えがあるんじゃないかな。

 異常というよりは……そうですね、突き詰めて考えているって言い方のほうが適切でしょうか。


 死にたいというわけではないんです。命を粗末にしているつもりもない。死にたいんじゃなくて……その、なんというか、生き切りたい。全力を使い果たして、その結果として死にたいんです。


 人の命をろうそくに例えることがありますよね。火がついてる間は生きてるけど、なにかの拍子にそれが消えたら死んでしまう。

 あの例えでいうなら、ろうそくを残して死んでしまうのが嫌なんですよ。ただ火が消えて死ぬんじゃなくて、激しく燃えて蝋を使い切って、燃えるものがなくなってしまって、だから死ぬ。そういう結末を求めているんです。

 伝わりますでしょうか……。


 昔の私、ボンクラだったって話はしましたよね。

 ひたすらにやるせないというか、白けた時代の空気をひしひしと感じてたというか。祭りの終わった後に生まれちゃったなあ、みたいな虚無感がずっとあって。それでふらふら生きてたわけなんですけど。

 それでも心の底では、本気になれるものが欲しいっていう気持ちがあったみたいです。ゲームを続けていくうちに、それが掘り起こされてきたんですね。


 私にすらあったぐらいなんですから、そういう気持ちって、誰もが持っているものだと思います。命懸けのゲームで食ってこうと考える人は少ないかもしれませんけど……この道を死ぬまで歩いてやる、ぐらいのことは、誰でも人生のどこかで考えるんじゃないでしょうか。

 私にとっては、それがゲームの世界だったということです。

 だから、死にたいわけではないですし、死生観が変になっているとも思いません。最初こそなんとなくで始めたことですけど、今ではちゃんと、自分の生き方に誇りを持ってやってます。


 ……まあ、他人には絶対勧めませんけどね、こんなの。

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