治癒魔法


 ……困った、どうすべきか……


 その時、頭の仮想タブレットにメールが来たのです。


 ……助けるべし、さすれば、荒野を抜けることができるだろう……


 ……これが『宣託』……ありがとうございます……


 テクテクと歩いていましたが、体力ないのを実感したヒロさんです。


 倒れていたのは女性……見れば、かなりの怪我、お腹に大けがを負っており、足の骨にもひびが入っている様です。

 

「大丈夫ですか?」

「転げてね、どうやら足にひびが入ったようだ……もう私は助からないだろうな、私にかまわず行ってくれ」


「私、治癒魔法が使えますので、治せるかも知れません、傷口を見せていただけますか?」

「こう見えても私も女でな、親兄弟でもない男に肌は見せられない」


「馬鹿を云っている場合ですか!助けられる方を助けないなんてできませんよ!悪いですが無理にでも見せていただきます!」

「あとで何とでも非難してください!」


 無理矢理、服をはぎ取り、お腹の傷を見ますと、かなりの深手、相当の出血です。

 

「このままでは、確かに夜までもちませんね、治療しますよ」


 取り寄せた消毒液で女性の患部を消毒し、手をかざすと、かすかに手が輝き、お腹の傷が見る見る治っていきます。

「足に行きますよ」 

 今度は足の痛みが引いていくようです。


 この後、血まみれのお腹を、取り寄せた消毒液『日本薬局方オキシドール』、最安値税抜73円のものを取り寄せ拭いていました。


「凄いな……痛みが無くなった……申し遅れた、私はクレア・コートネイ、君は?」

「ヒロ・ミウラです」


「私が言うのも何だが、どこへ行かれるのか?」


 ここで再びメールが……


 ……構わぬ、ありのまま云え……


「私は神様から、先ほどこの世界に転移させていただいたのです、どこへ行くのか決めかねています」

「神から?しかし、先ほどの治癒魔法を見せられては、信じるしか無いか……」

「ヒロ殿の、あの治癒魔法の効果は規格外の威力、腹の傷や骨のひびは治せるが、あれほどの即効性はないのだ……それにヒロ殿の黒目黒髪は、世界には滅多にいない」


「そうなのですか」


「そうなのだ、それは良いとしてどこへ行くのか決めてないと云われたな、ならどうだろう、私を助けてくれないか?」

「別に構いませんが、私は武芸の嗜みはなく、『治癒魔法』と『危険予知』を神様から頂いただけです、非力ですが、それでもいいのですか?」


「戦いは私がする、ヒロ殿は私が怪我や病気になったときに、治していただきたい、それにヒロ殿は少なくとも敵では無い」

「敵?」


「私は追われて、ここまで逃げてきたのだ」

「そうですか……」


「どうする?」

「どうするも、神様が助けるべし、と『宣託』を下されたのです、クレアさんが望まれないならそれまでですが、出来るだけのことはいたします」


「そうか、では助けてくれ」


「分りました、宜しくお願いします」

「とにかくどこかに野営をしましょう、日が沈み始めていますよ」


「そうだな、このあたりは風も強い、少し戻った処に洞窟があった、そこにしよう」


 クレアさんが提案しましたが、『危険予知』がなんとなく危険を知らせるのです。


「クレアさん、なんとなくですが、おっしゃる洞窟は危険な気がします、私の『危険予知』がそう知らせています」

「そうか……では、どうする?」

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