第27話 終わりと始まり

「今日も今日とて暇だな…ふわぁぁぁ~~~」

月詠が新聞を読みながら大きな欠伸をする。


「月詠さんが平和モードにはいっている…」

「そうですねぇ…他のギルドさんのおかげで、文字通り平和ですし…」

「むしろこれまでが過酷すぎた気がする…」

「半分生産ギルドみたいなものですからね、ここ。今となっては何であんな無謀な旅してたのかわたしにもわかりません…」

「ほとんどあの暴走機関車のせいでは?」

「ふふっ、そうかもですね!」


そこへリュウジとソフィアが階段を降りてくる。

「今…何時かしら…」

「もうお昼ですよ、ソフィアさん。リュウジさんは…」

「武器の手入れをしていた。」

「…ブレませんね…」


などと他愛のない会話をしていた時。不意にさよの視界が揺れる。

「あ…れ…?」

「さよさん…?」

そのまま意識を失うさよ。最後に花の泣き声を聞いた…気がする…


「んん…んぅ?」

気が付くと現実世界の自分の部屋だった。あれ?鏡も通った記憶ないのに…っていうか!なんかお腹の下がスースーする!

「小夜はこんな格好で冒険してるのか~。フエッヘ」

「ぎゃあ!このっ…ヘンタイっ!!」


起きて見れば圭一が小夜のスカートの中を探っているという。魔物より魔物だった。思わず思い切り蹴りを入れてしまう。

「ぐほぁ!?」

「私の中で圭一の株がストップ安だよ!!てか、考えたい事あるから一人にして!」

いくらほぼ一緒に暮らしているとはいえ…自分の部屋には鍵でもかけようかなぁとか思いつつ。今の状態を把握しないと…。


鞄とか、着ている装備はそのままだから、夢…じゃないよね。あ、この保存食そろそろ期限が危ない。もぐもぐ。


一人で考えてもあんまりわからないので圭一にも話したところ…


「あぁ、スフィアゲート?サービス終了するって確か…あぁ、今日だな」

「え?それって、どういうこと?」

「つまり…多分、もう向こう側に行く事はねえんじゃないかな」

「そ、そんな!まだ…お別れだって言ってないのに!!」


しかし次の瞬間。上の小夜の部屋から凄い音が。

「何!?何事!?」

急いで部屋のドアを開けると…

「いったぁい…ぁ…小夜さんっ!」

「おい、何でお前が上なんだよ…リュウジ…!」

「ソフィア殿が良かったか?」

「そーーーーーーじゃねえぇぇぇ!!重い!降りろ!」

「あいたた…あら、小夜ちゃん。さっき振りね。」

「皆さん…!!」


「…ところで、なんで皆さんまでウチに…」

「ほう、ここがさよの家なのか。」

「向こうで何があったんです?」

「わからないわ。急に空が虹色に晴れたと思ったらここに…。」



「…つまり皆さん、今度はこっち側に迷い込んじゃったんですね…」

「おうっ!という訳だから、しばらくの間、世話になるぜ。いいよな?」


良かった…お別れじゃなかったんだ…

「ふふっ、もちろん、いいですよ」

「わーい!小夜さん!」



騒がしそうで、でも、なんだか楽しい日々が始まる予感がする小夜だった。

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