第63話「迷宮区攻略戦」


 Aランク迷宮区入口前。


 自衛官に許可証を見せ、一歩踏み込めば中に入れるというところで俺たちは最終的な準備をしていた。


 準備とは言ってもただ忘れ物や装備品の欠品はないかの確認だが、今回行く場所は場所が場所なためにそう言うところの確認欠かさず行わないといけないもの――だと下田さんが口うるさく言っていた。


 もちろん、そんなのここに着くまでに確認しなきゃ意味ないですよと言ったがそんなの忘れてたんだからしょうがないでしょうと一蹴され、なんだか言い包められてしまった。


 と、そんなわけで。

 体中の装備を確認しながら斎藤さんがいつものテンションで場を盛り上げる。


「ふぅ、緊張するわねみんな!」


「……いつも通りやれば大丈夫ですよ、きっと」


「そこまで心配しなくても最後は任せてるからね、國田君」


「あははっ! 確かに、最後の最期は元春君のパワーでごり押しかな? 私は大いに期待してるよ!」


 背中を押されるような気分で中々むず痒い。

 というか、前のクリスタルドラゴンみたいな奴がうじゃうじゃ現れたら俺とて自信がない。


 前回はまだ1体だけだから余裕があったが、今回はちゃんとした異常発生ではないAランク迷宮区。


 今回ばかりは前回とも条件が違う。

 生憎とそこまでプレッシャーを掛けられると自信がないっていうかなくなってくる。

 

「っ勘弁してくださいよ、斎藤さん」


「うわぁ~~そこは男なら任せろ! でしょ?」


「荷が重すぎますよ……いや、しっかり全力で挑みますけどっ」


「んもぉ、そこはカッコつける場所だって言うのに。ていうかあれかな、雫ちゃんがいないとかっこつけれないのかな?」


「——助けませんよ、ほんと」


「分かりやすっ!」


 ボっと熱くなった顔を両手で隠すと、隣の2人がクスリと笑う。


「可愛いわね」

「私もそう思います」


「ふ、二人ともそんなことを!」


 相変わらず、人数が増えるとうるさくなるのはどこの世界も同じらしい。

 

 まぁ、雰囲気がいいのなら悪いことではないし俺も甘んじていじりを受け入れていくしかないかも知れないな。


「ふぅ、それじゃあ行きますか?」

「えぇ、そうね」

「はいっ」

「頑張るわよ、みんな!」


 気合を込めて、掲げる拳。

 空中でコツンと合わせて、誓いを決める。



 とにかく、協力プレイ。

 一人でダメなときは頼って、全力で。

 変な手加減もせず、とにかく忠実に冷静に、思いやりを持って。


 昨日みんなで決めたモットーに従うために心の中で繰り返し、俺は息を吸ってはいた。



 そうして、11月の初旬。

 俺達は未知の世界、Aランク迷宮区の奥底へ向かったのだった。







 入って5分足らず、入り口の光がまだ若干たゆたんでいるこの場所で早速魔物に出くわした。


 大きな角に、つき出す様に飛び出た鋭い牙、そして筋肉質な馬のような体が特徴的なCランクの魔物『角馬ホーンホース』だった。


 見た目はユニコーンに似ている魔物だが、実際的にはユニコーンよりも下位の魔物で簡単に言えばユニコーンの下位互換と言えよう。


 ただ、その強さはあのディザスターウルフと同格程で、C級探索者一人では到底太刀打ちできない相手だ。


「行きますよ!」


 ビヒィンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!


 前足を大きく上げ、威嚇するように咆哮を上げる。


 まだ浅く幅も狭い迷宮区の壁や天井に当たっては跳ね返りを続けて響き渡っていくその音は眠っていた俺の力を呼び起こすかの如くぶるぶると震わせた。


【神様の悪戯により、ステータスを2%解放します】


 まずは一体。

 急加速する脚の動きに合わせて回転して、そのまま突撃をかます。


 ――『神速』発動。


 抑えられた衝撃波と風力で隣で構えていた三人の視界を遮る。

 瞬く間、まさに一瞬で俺は100メートルも先に見えた奴の胴体目がけて蹴りがさく裂した。


「っふん!!!!!」


 ドギャン!!!!

 まるで鉄がひしゃげたかのような音がして一気に奴の体が壁際まで吹っ飛んだ。


「うぉっ……」


 そのまま息絶えるように目の光を失うホーンホース。

 一瞬にして終わった戦いに、振り向くとさっきまでワクワク顔だった三人がジト目で睨みつけてきた。


「……あはははは」


「あはははじゃないんだけど、元春君?」

「私たちの獲物はいないんですか……?」

「……さすが國田君だけれど、もうちょっと任せてほしかったかもね」


 え、俺って悪いことしたの?

 なんて鈍感系かますつもりがあるわけではなかったが、正直その視線は胸が痛かった。


「え、だ、だって……この前認めて全力で協力をって」


 この前の言葉を信じて行動していた俺からしてみれば理不尽極まりなかったが、そんな俺の言葉に黒崎さんがぼそりと一言。


「——でも、なんかつまらないわね」


 それはずるい。


「そ、そんなこと言われたって」


 言い返すとあきれ顔を浮かべながら、さらに呟いた。


「……まぁ、そうよね」


「え」


「ううん、何でもないわ。とにかく、次からも本気で頼むわよっ。私たちが後ろをしっかり見ておくから!」


 肩を叩き、そのまま俺を追い抜いて走っていく。

 あっという間に離れていく三人に俺も負けじと追い越す様に走っていった。









 

 



――――――――――――――――――――――――――――――


〇ホーンホース(C)

 ステータス

 攻撃力:590

 防御力:623

 魔法力:290

 魔法抵抗力:709

 敏捷力:700

 精神力:563



〇國田元春

・スキル:神様の悪戯(F)

・ステータス(2%時)

 攻撃力:2000/1000

 防御力:2000/1000

 魔法力:0/1000

 魔法抵抗力:2000/1000

 敏捷力:2000/1000

 精神力:2000/1000



【スキルリスト】

神託予見ゴッドハイジャック』『知覚向上パーセプションアップ』『魔物特性モンスターブック』『高速移動スピードスターlv.1』『自信向上コンフィデンスアップ』『極寒性気色悪つまらないセクハラ』『信仰心』

周辺探知マップローディング』『跳躍ジャンプ

剛翼ハードウイング

『脚力増加・強』『神経伝達速度上昇・強』

『腕力増加・強』

未来予知フューチャープレディクション

神速ゴッドウインド




まじで遅れてすみません。

今日までフルコマとバイトで書けませんでした、許してください!!

それと前回の意味深な少女はキーマンですが出てくるのはもう少し先かもです?



PS:新作を今週の土曜日に公開するのでよければ読んでください! ジャンルは僕の中で2番目になる異世界ファンタジー作品です!


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