第8話「Eランク迷宮区②」
Eランクの
進めば進むほど下がっていく温度に鳥肌が止まらなかった。
「うぅ……これはまじでやばいなっ」
いつも行っていたのはFランクの迷宮区でも比較的簡単なものばかり。
そして、その簡単な迷宮区ですら俺は一切下層に潜ることはなかった。入ってからすぐのところにポツポツと出てくるゴブリンをひたすら刈り続けていただけだ。
潜れば潜るほど強くなるのはどこの迷宮区も変わらない。それは俺が入り浸っていたFランクも一緒のことだ。
聞いた話では潜れば潜るほどゴブリンが群をなし、連携攻撃でやってくる探索者に襲いかかってくるとのことらしい。そして最下層に近づくと出てくるのはゴブリンの上位互換のホブゴブリンで、サイズが一回りデカくなり高校生くらいのサイズ感になる。
中でも剣や棍棒を持っているホブゴブリンも出るようになっているらしく、それがなかなかの手だれで倒すのが難しいらしい。
そんなふうに思い出しながらこんな場所まで来てしまい、俺は急に怖くなってきていた。あくまでもさっきのはFランク迷宮区の話。今日、俺がきているのは一つ上のランクでもあるEランク迷宮区だ。
きっと、最初の段階で出てくる魔物もゴブリンとは違って強いに違いない。
「……ふぅっ」
肌寒くなり、バクバクと心臓が大きな鼓動を上げる。
緊張なのか、それともワクワクなのか。
ただ、不思議と悪寒も恐怖も感じてはいなかった。これはおそらく、レベルアップによる精神力の向上だろう。最近、クサビくんやジンくんにいじめられても傷つくことは大きく減った。もちろん、嫌なものは嫌だけどメンタル面は明らかに向上している。
スキルの圧倒的な力には及ばないまでも、きっと攻撃力も防御力も上がっているはずだ。
ここまできたんだ。今更、心配になっていても仕方がない。
現れたらきっちり戦って、本当の意味で命に危険を感じたら逃げる。
まずは何事も挑戦だ。
俺が弱いことは知っているんだ、何も負けて落ち込むこともない。
最初から期待していなければ落ち込むこともない。ただひたむきに、頑張ればいいんだ。
寒さも緩和してきて慣れてきた頃、薄暗い道の先に一体の魔物が見えてくる。
シルエットは四つん這い、かな。
多分見た感じゴブリンではない。
にしても、遠くて見えないな……。
【神様の悪戯により、スキル『知覚向上』を獲得しました】
は、え?
なんか今頭に直接女の人の声が聞こえてきたがするんだけど……って、あれ!?
なんか、見える!
見えるぞ、さっきの魔物が!
猪みたいな見た目に、大きく上に伸びた牙。まるで古来のタイガーみたいだ。名前はわからないが見た目からして強いのは確かだった。
【神様の悪戯により、スキル『魔物特性』を獲得しました】
『魔物特性』?
なんだ、そのスキル名?
すると、急に頭の中に目の前にいる猪型の魔物の予測特性が表示され始めた。
えっと、予測によると「突進攻撃を繰り出す可能性があり、弱ったところで牙を突き立てる」か。
物騒な攻撃方法だな。
Fランク迷宮区にいるゴブリンなら拳で襲いかかってくるだけだし、ゴブリンって背の高さも低くて力も人間より弱いから強い人なら一発で倒せるくらいだ。
そう考えるとやっぱりEランク迷宮区、違いをアリアリと見せつけてくるな。
って、にしてもなんなんだ、さっきから聞こえる天の声。
聞こえるたびに何か見えるようになったりしてるけど、関係でもあるのか?
【神様の悪戯より、神託を受けました。現在、國田元春の頭の中に流れている音声は神の声と同等のものです。そして、与えられているスキルは本来人々が一つだけ持つことのできるものでもあります。あなたが持つスキル『神様の悪戯』は名前の通り神様の悪戯によって与えられた唯一無二のスキルです。とある条件下で発動し、この世界に存在するありとあらゆるスキルをランダムで自分のものにすることができます】
……うん、よくわからん。
神様の悪戯だとか、神託だとか言ってくるけど俺って無宗教なんだよな。
神道とか仏教寄りなのかもしれないけど……でも、いきなり神様がどうだとか言われても困るっていうか。
いやいや、やっぱりダメだ。
あんまりそう言っても期待するのはよくない。
調子に乗ると探索者は死ぬってよく言われるんだから。それに、黒崎さんでさえ自分を過信していないんだ。
これは誰にでもあり得ること、そうとでも思っておこう。
【神様の悪戯より神託を受けました。神の名の下に、このスキルは唯一無二です】
いやいや天のお姉さん、俺を騙すには一筋縄ではいかない。
もっとも、証拠の一つでも見せてくれなきゃ信じないよ今の俺は。
【神様の悪戯により、神託を受けました。それでは、お見せしましょう。スキル『神託予見』を獲得しました】
え、いや、なんでそんなにやる気なの?
しかし、その天の声が聞こえて数秒して俺の体は意思もないのに勝手に動き始めた。
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【スキルリスト】
『
<あとがき>
第7話の方を少し書き足しました。
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