第2話 地獄?それとも。。。。

 天使を名乗る二人がその場を離れた事により再び一人になってしまう。

 話によればこの後、悪魔が来てそのまま地獄って事になるであろう事は分かった。

 無論、天国にしても地獄にしても実際にどんな場所かは分からない。

 しかし、そこに対してのイメージはある。

 そして、好き好んで地獄に行きたい人など居ないだろう。

 唯一の救いは地獄に逝ったとしてもそこから天国に逝ける可能性がある事。

 どうしてもため息交じりに愚痴が出る。

 「どうしてこんなことに。そこそこ真面目に生きてきたつもりなんだけどな」

 独り言をボヤいていると聞き慣れない声が耳に届く。

 「天使に見捨てられたそこの君。君だよ君」

 唐突に失礼だなと思いながらも話に出てきた悪魔かと振り向くとそこには見た目は普通の人間が浮いていた。

 先ほどの天使も見た目は整った顔立ちの人だった。ただ、白い羽が人間ではないことを証明していた。

 だから悪魔もそういったものを想像していた。

 しかし、自分を呼ぶその人は完全にただの人間である。自分と同じく浮いてる事以外は普通の人間の見た目。

 内心違うだろと思いながらもその声の主に聞かなくてはならない事がある。

 「あなたは悪魔?」

 すると声の主は笑いながら答えを返す。

 「俺が悪魔?違う違う。俺はあんたと同じで天使に見捨てられた人間だよ。いや、死んでるから幽霊か」

 元々、違うと思っていたから驚きは全くない。

 天使に見捨てられたという言葉に対して地獄に落ちても天国に逝けるかもしれないという話をしかけて天使の言葉が過ぎる。

 「本当は良くないのですが」

 つまりこの事は本当は伝えてはいけない事なのではないか。

 その考えで言葉が止まる。

 代わりに「じゃあ、あなたも悪魔を待ってるんですね。地獄ってどうなんですかね?」とありきたりな言葉が出る。

 すると、なぜか男は更に笑う。

 この笑いは理由が分からない。

 不思議そうに見ていると男が続ける。

 「地獄なんて逝く訳ないじゃん。と、言うか君を地獄なんて酷い場所から助けようと思って声をかけたんだよ」

 驚きの言葉である。

 なんせこの状態で地獄へ逝く以外に選択肢があると言うのだ。

 何よりそこは地獄よりも良い場所らしい。

 そんな方法があるなら教えてほしいと問いかける。

 男は不敵な笑みを浮かべながら「ここに残るだけさ。悪魔が迎えに来ても逃げてしまえば良いんだ。考えてごらんよ。死んだ今、俺たちは言わば不老不死と同じだ。その上、食事や睡眠を必要とすらしない。わざわざ地獄に逝く理由がどこにある」

 言われてみれば確かにその通りであった。

 とても魅力的に聞いてると男が続ける。

 「それにほら仲間もたくさん居る。さあ、早くしないと悪魔がきて逃げ切れなくなる」

 と、男が指さす方向を見るとそこには他にも何人もの人が浮いている。

 とても魅力的な提案に乗ろうとした時、急に男が「まずい。急ぐんだ」と血相を変えて移動し始める。

 どうしたのかと思いつつも後を追おうとしところ更に別の方から声がする。

 「付いていくと後悔するぞ」

 振り向くとそこには黒い羽がはえた人らしき何かが飛んでいた。

 それは黒い羽がはえており顔がぼやけていて視認出来ない。

 「あ、悪魔?」

 疑問を呟きつつ頭の中では悪魔と断定している。

 だからこそ男も急いで移動しようとしていたのだ。

 その為、真っ先に思うのは逃げなくては。

 急いでその場を離れようとした時、「もう1度だけ言おう。付いていくと後悔するぞ」

 悪魔の言葉が響き一瞬躊躇う。

 その僅かな時間で男とその仲間は居なくなっていた。

 「そんな。逃げられなかった」

 なぜ、躊躇ってしまったのか。後悔が押し寄せてくる。

 そんな後悔など知った事かと悪魔は「さあ、地獄にいきましょうか」と囁く。

 

 


 その場所から距離を取った男は舌打ち交じりに「せっかく囮を増やせそうだったのに」と呟く。


 

 他者への親切には悪意が潜む

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る