死んだので天国目指します
ラプラス
第1話 死にました
1、死にました
気付いたら宙に浮いていた。
今自分がどうなっているのか、なぜ浮いているのか分からない。
不意に下を見下ろし理由に気付く。
そこには自分の体が車の前に横たわっている。轢かれたのだ。
「あー、死んだ。。。。のか?」
客観的には死亡しかないだろう。しかし、死ぬ事なんて人生に一度だけ。いざ当事者になってみても実感なんてわかないものだ。
続けて言葉がこぼれる。
「この後どうすれば。。。」
初の死後に戸惑っているとどこからか声が聞こえる。
「一応確認に来たけど今回の死者は外れか」
声の方に視線を向けるとそこには白い羽に女性を思わせる端麗な顔立ちの人物が居た。
状況を考えると天使か悪魔だろうかと考えが頭を過ぎる。
しかし、どちらにしてもだ。
外れとは何のことなのか疑問が浮かぶ。
呆けていると端麗な顔立ちの人物が続ける。
「規定に基づき伝えます。まず、あなたは事故により死亡しました。そして、私はあなた達の言うところの天使と言われる存在です。神の国。。。。あなた方の言う天国はあなたを必要としません 以上」
この天使を名乗る人物により死んだという事実は改めて確定となる。
ここでさらに疑問が浮かぶ。
天国は善人、地獄は悪人が逝き着く場所。
それなのにこの天使を名乗る人物は言うのだ。必要がないと。まるでどこぞのブラック企業のように。
自分は悪人ではない自信はある。これまでの人生でした悪事など幼少期の頃の信号無視やポイ捨てレベルの事ばかり。
なのに天国は必要としてないなんて理由で地獄に行かなければならないのか。
「えっと、それは私はつまり地獄行きって事ですか?」
当然の問いに天使は態度を変え面倒そうに答える。
「そんなこと知るかよ。どうせその内、ハイエナどもが来るからそいつにでも聞けよ」
そして、ため息を交えて続ける
「そもそも、なんでいちいち毎回親切に伝えてやらなきゃいけないんだ」
どの部分が親切なのかと思いながらも増えていく疑問。
疑問が脳内を駆け巡っていると
「ダメですよ。ちゃんとお伝えしないと」
と気付けば優しい顔立ちの天使が現れる。
そして、優しい顔立ちの天使が説明する。
「彼が雑な説明をしたみたいでごめんなさい。改めて僕から説明しますね。彼が言うようにあなたは死亡しました。そして、私たちは天使です。天国では地獄と戦い勝利する為に主たる神々が死者を選別しています。そして、残念ながら神々はあなたを天国に迎えないという判断をしました。これは神々がお決めになった事で僕たちにはどうすることも出来ません」
この説明でいくつか合点がいった。
そのまま優しい顔立ちの天使がこ言うのだ。
「ただ、精一杯生きてこられたのにこんなのあんまりだ。だから、本当はあまり良くないんのですが。。。地獄にいったとしてもそこで頑張ればきっと僕たちは君を迎えに行く。だから諦めないでほしい」
地獄に落ちたとしても役に立つことが証明出来れば天国に行けるというのはとても魅力的な話だった。
その後、天使たちはいくつか説明を付け加え天国に戻っていった。
場面は変わり先ほどの天使たちが話している
「地獄で役立てば天国にいけるなんて初めて聞いたぞ。それに選定の最終判断は俺たちが下して良いことになってるだろ」
「だって、ああ言えば仕方なしに納得してくれるでしょ?それにあれで頑張ろうと思うだろうし。次見かける事があれば無駄に足掻く姿が楽しめますよ。なによりあれで空回りして暴走してくれればあちらの戦力も減らせますし。せっかくなのですから有効活用しないと。君の言う通り最終判断は僕たちが下して良いのですから」
本当はこの時気付かなければならなかったのだ
甘い言葉ほど裏があるという事に
天使が善というのは人の想像という事に
そして、人の執念は時に理屈を捻じ曲げるという事に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます