第14話 評判が高まった『道』は、サキュバスとエルフと一緒にゴブリンの村へと移動する
俺はレギンの肩に担がれながら街道を歩いて行く。すると、角の生えた人型の魔物達がひそひそと俺を見て話す声が聞こえた。
「おい、あれが噂の『道』さんだぜ」
「本当にコンクリートの塊なんだな、すげえ」
どうやら俺のことを話しているらしい。彼等は笑顔で俺をちら見する。
「すげぇよな。道さんが整備してくれたところはケンタウロス族の配送が倍くらい効率良くなったらしい」
「倍? それは凄いな。俺も道さんみたいに活躍したいぜ」
魔族達の噂話に、俺も驚きである。ケンタウロス族や魔王が喜んでいるのはそういう事情があったのか。
「道さん、マジかっけえ」
「俺等もあんな風に活躍できる魔物になりたいよな」
俺を見る魔物達の目。あちらこちらで俺に羨望の眼差しを向けてくる。もう、魔王の馬鹿、全然俺が道テイムしてるってこと隠せてないじゃん。俺、尊敬されちゃうぜ?
魔族達は俺をじっと見ている。
「人間の国にしかないコンクリートで出来てるってのがちょっと怪しいけど、頼りになる方なのは間違いない」
「いずれ魔王軍の幹部になられるかもな」
人間の国にしかコンクリートがない? いや、いやいやそんなことより。
おいおい……褒めすぎだぜ! ちょっと照れちゃうけどな、へへへ!
レギンが俺を見て意外そうな顔を向ける。
「もしかして、ロードロードも褒められたら嬉しいのか?」
「うん。そりゃあ、嬉しいよ」
俺が応えると、にこりと笑ってくれるレギン。この子の笑顔は俺をいつも幸せにする。
「ふーん。でもあたしもロードロードは凄い奴だって石畳を整備してくれた時から思ってるからな」
道テイムってそんな凄いのか?
「俺で出来ることなら頑張るよ。でも俺この世界のことよく知らないから色々と教えて欲しいな」
「ロードロードは……将来凄い魔物になるかもなって思う」
レギンは俺を見て意味深なことを呟く。
「どういうことだ?」
「石畳を整備する力がもし初期の力ってことなら、鍛えていったらどんな風になるか想像もつかない」
確かにそうだな。もしかしたらアスファルトを敷いたりできるようになったりするのかな。
あるいは、煬帝みたいに運河作っちゃったりとか……いや、それは壮大過ぎか笑。
俺が妄想していると、レギンが俺に話しかけてきた。
「あ、そろそろ着くよ。スレイブとの待ち合わせに」
そう言われてすぐ、俺はスレイブを視認した。スレイブも俺達に気付き、手を振ってくる。
「あ、レギンと道さん」
嫌そうに言うスレイブ。俺はどうやら、心を閉ざされたらしい。俺も笑顔を表面的に作って挨拶。作り笑顔って大事なのだ。
「おまたせ、待った?」
「レギン、私も今来たとこです」
スレイブは俺達に笑顔を向ける。相変わらず顔だけは良い、流石エルフだ。この清楚な見た目でビッチというのだからそりゃモテるだろう。異世界版の清純風ビッチだな。
「二人共、準備はよろしくて?」
レギンも俺も同意し、俺達は更に北にあるというゴブリンの村へと向かった。
スレイブが先導し、俺は移動している。勿論、俺は自力で移動できないのでレギンの肩にかけられての移動だ。なんか、移動の度にレギンに運ばれて悪いな。早く自力で移動できるようになりたいものだ。
迷惑をかけたくない。せめて人間時代くらいの速さで歩けるようになりたいものだ。
と、俺がそんなことを考えてると小賢者が、
【報告。人の歩行程度の速さで本体が移動するには、あと一万は『道テイム』を使って鍛える必要があります】
そんなにスキル練度が必要なのか。とほほ、道だけに道のりは遠いってか? やかましいわ。
俺が悶々と自分の不自由さにしていると、スレイブは溜息をついた。
「今回の任務について、お二人は詳しく聞いてますか?」
「あたしは分かるよ、不穏な動きを見せていたゴブリン達への干渉でしょ?」
「レギンは分かるでしょうけど、その様子では『道』さんに説明はされてないようですわね?」
スレイブが俺に目配せして確認する。
「あぁ、任務って何をするんだ?」
「ゴブリン達と友好できるなら友好した上で石畳の整備を道さんにしてもらうことになります」
「また石畳か」
「友好できないなら、戦いになるでしょう」
物騒な話だ。
「俺に戦闘能力は無いと思うんだが」
こんななりの俺に期待されてるとは思わんが。
「大丈夫です。ゴブリンが何体かかってこようと、戦闘は私とレギンで大丈夫ですから」
自分の強さをまるで疑ってないスレイブの言葉に俺は驚く。
「でもゴブリン……全く、嫌な相手ですわ」
スレイブの言葉にはレギンが応えた。
「スレイブ、ゴブリン嫌いだもんね」
「はい。醜い者は嫌いです」
「スレイブにとって道の見た目って醜い? 美しい?」
いや、レギン……それスレイブに聞いても美しいなんて帰ってくるわけでは。
「道さんは……道でしかありませんね。中身は男でしょうけど外見上はどうも思いません」
「ふーん」
レギンは素っ気なく応えている。俺自身、仕事仲間かつ美少女であるスレイブに嫌われたくないしどう思われているかは知っておきたかった。故に、その答えは緊張するものの興味深く、ありがたかった。
スレイブはどうやらかなりの顔面偏差値至上主義(ルッキズム)のようだ。
「レギンは道さんのこと、どう思いますか?」
「えーっとな。ロードロードは……面白い奴」
「面白い? どこが?」
「道の魔物なんて、今までいなかった」
「確かに、それはそうですね」
レギンとスレイブのやり取りに、俺なりに考えが浮かぶ。
俺ってそんなにレアなのか。転生者ってスライムとかドラゴンみたいなメジャーな魔物に転生することってあるのかな? どうなんだろ。
とは言え、俺が気になるのは今は他のこと。この二人は本当に強いのかどうかってことだ。
「お前らってどのくらい強い?」
「私達、魔王親衛隊の一員ですからゴブリン如きには一名で十分です。私は序列七位、レギンは序列六位です」
「魔王軍って何名いるんだ?」
「一万いかないくらいですね。ケンタウロス族やドワーフ族などの兵站・工兵担当を抜けば直接的な戦闘員は六千名くらいかと」
「お前らって一万人の六位と七位なのか」
ふふん、とレギンとスレイブが喜ぶ。
「まぁ、それ程でもありますわね」
俺には疑問がよぎる。今この国は隣国と交戦状態にあるという。なのになぜ――、
「何で今日おまえら二名も行くんだ?」
俺の質問にレギンが答える。
「片方はゴブリンを倒す為。もう片方は、お前を護る為だな」
「……今、戦争中なんだろ? お前らは強いんだろ、いいのか?」
「魔王様の命令です。よくよく、考えてのことだと」
笑顔でそう言うスレイブ。
「スレイブは魔王様を信頼しているんだな」
「はい」
スレイブの前では魔王の悪口とか言わないようにしよう。エルフはドワーフを嫌いなイメージがあったが、スレイブは魔王ガンダールヴを信頼しているようだ。まぁ、スレイブはビッチエルフだから例外的なのかもしれないけど。
「ロードロード、あたしも魔王様のこと好きだぞ」
「レギンもか。皆に信頼されているんだな」
「当たり前です。膨大な雑務をこなし、多くの魔物に慈愛をかけられている方です」
慈愛、か。どれほどのものかお目にかかったことがないからな。だがこれだけ信頼されているなら本当に強いんだろうな。
俺がぐるぐると魔王やレギンやスレイブの強さを考えていると、レギンが指を指した。
「あ、見えました。多分あれが……ゴブリンの村です」
俺がちらっと向くと、見窄らしい藁で出来ただけの集落が見えた。
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