第7話 美少女パンツ見ないと『道テイム』できない? でも仕事だから、やるしかないよね。つまり、見るしかない

 どうやら俺のスキル、『道テイム』はパンツを見ないとスキルを発動する為のエナジーが回復できないようだ。

 なんて仕様だよ。

 

 変態扱いされるわけにはいかない。

 俺は善良な一市民でしかない。

 能力の悪用なんて、する気はないんだ


 しかし、パンツを見ないと能力が使えないだと?

 そしてレギンの話が本当なら、魔王は俺に仕事を任せようとしているらしいではないか。


 ふざけんじゃねえ。

 ギャグ漫画なら笑いですんでも現実では使えねえよ、そんな力!


 もし俺が仕事の度に美少女パンツを要求したらどうなる? 変態認定されるに決まってる。

 そんなの、耐えられない……絶体に回避してみせる!


「ん……これは……」


まるで、視界が広がったような感覚。これはどうやら、道テイムした部分の真上らしい。


【視覚共有。貴方が道テイムした部分の真上を覗き見することができます】


 この心の中に響く声はなんだろうか?


【道テイム使用により、少し会話できるようになりました。質問があるなら受け答えします】


 何で賢者じゃなくて小賢者なんだ?


【貴方が18歳の童貞で死んだので、小賢者です。30歳後半で童貞なら大賢者になれていました】


 流石にテニサー入ってたから、在学中には童貞卒業できたと思う。それだけは言わせてくれ。


【会話終了。私はしばらくスリープ状態になります。レベルアップやスキル獲得は報告されますのでご安心を】


 え、会話終了? 早すぎだろ!

 ……嘆いても仕方が無い。


 使えるスキルを取りあえず使ってみる。


 澄み渡る青空、偶々傍を歩く猫耳美少女が一人、その子は俺がテイムした道を歩いて――

 ヒョウ柄の、パンツが。


 うっひょおおおおおおおお!!

 高揚感と共に、心に声が響く。


【エナジーが回復、満タンになりました】


 道テイムをして衝撃を受けた。

 この力があれば……あのケンタウロス族の娘の、ブーケちゃんのパンツを見ることが出来る。


 へへへへ。

 最高じゃん、これ。お、あそこに美少女が。あ、あそこにも!


 俺は『景色』を堪能する。ふふふ、異世界……俺がいた世界より美少女が多くて良いな……。


「おいレギン」


「なんだ、ロードロード」


 レギンは元気な笑顔を俺に向ける。


「他の石畳も道テイムしてみても良いか?」


「勿論だ。お前のお陰で広場が綺麗になるからな」


 言質ゲットぉおおおお!

 俺は欲望の赴くまま『道テイム』をする。


 道テイム。道テイム――。

 道テイム。道テイム。道テイム。道テイム。


 俺は一心不乱に道テイムを行った。

 すると、声が心に響く。


【エナジーが尽きました。道テイムをするとエナジーは減り続けていきます。解除するか、今すぐにエナジーを補充して下さい。このままでは意識を失い貴方の意識はスリープします】


 う……。どうやら、調子に乗りすぎたらしい。俺は広場に繋がる道を可能な限りテイムして石畳を整備した。


 だがやはり、スキルを使用するためのエナジーを消費し過ぎたらしい。

 レギンが大喜びで俺をさすってくる。


「ロードロード! お前、凄いな! なんだよ、このスキルは……。道を整備するスキルなんて、聞いたことないぞ!」


「う……褒めてくれてありがとよ」


「大丈夫か? 声に元気が無いな。もしかして、疲れたのか?」


 俺は後ろめたいだけなのに、レギンは俺に心配そうな目を向けてくる。優しいな、この子。


【視界共有をしますか?】


 心に響く声に対する答えは当然、イエスだ! 

 するとイッキに俺に視覚情報が開示される。


 そこにあったのは、元いた世界では鑑賞できなかった絶景。

 花柄。ヒョウ柄。縞々。ありとあらゆる肢体の曲線美とパンツが、そこに……うっひょおおおお!!


【エナジーが回復しました】


 こいつは良い。力が漲ってくる……。

 見続けるなら道テイムを持続させないといけない。しかし、エナジーの回復の方が上のようだ。今の俺は、どんどん力が満ちていく。


【レベルアップです。レベルアップです。道テイムの使用回数限度が上昇。道テイムの使用コストが減少。レベルアップです。レベルアップで……】


 どんどん力が増していく。これなら――、


「道テイム!」


 石畳がどんどん綺麗になっていく。

 もはや俺が触れてる部分と隣接する石畳に汚い部分は無くなったと言えるだろう。レギンは目を大きく見開いて石畳を見ている。


「道、お前、本当に、本当に凄い……これで魔王軍の物流が改善される!」


 レギンが満面の笑みで黒翼を羽ばたかせる、喜んでるらしい。

 あぁ……なんて幸せな瞬間。


 美少女にお願いされて、美少女パンツを見て、美少女に褒められる。


 俺は、満足した。

 街の広場周辺の道を可能な限りテイムする。それは俺にとってとても至福の時なのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る