第3話 サキュバス美少女『レギン』に踏まれた『道』、幸せになりつつレベルアップ

 っく、動きが遅い! というかこれ、殆ど動いてないな。一時間かけて十メートル動いてるのかどうか。

 そもそも……決まった位置から大して動けない!


 見たこともない鳥がやってきて、俺にフンを落とした。

 くそ、あの鳥嫌い!


 あれから何人かやって来て、俺の上を歩いたものの、そいつらは全員人間では無い特徴を持っていた。


「一体ここはどこなんだ? 俺は、どうなってしまったんだ?」


 動くこともろくに出来ず、ただ空を眺める時間を過ごしていく。

 あーあ、良いことないかなぁ。


 ろくに動けない。俺は亀のようにのろりと周りを見渡す。

 顔らしきものすら先ほどの鏡で確認できなかったのだが、俺にも『目』に該当する器官は何かしらついているのだろう。視覚はある。


 見渡すと、鬱蒼と茂る森。

 こんな森の奥地っぽいとこに誰も来ないか、誰か助けてくれ~っと思っていたら、声がしてきた。二人組のようで、どちらもハスキーな女子の声で話している。


 俺は声の方向に意識を集中させると、機敏に視覚が移動した。


「――っえ?」


 それは目や顔を動かしたりするより早く、一瞬のことだった。


「どうやら、俺は意識を動かすことで見る方向を変えられるようだな」


 俺はきょろきょろ見渡した。すると一つのことが分かる。


「……視覚範囲は百二十度から百八十度いかないくらい、人間の頃と同じか。そして俺は動くのは亀のようにのろいけど、視覚は一瞬で移動できるってわけだ」


 突飛な存在になってしまったものだ。

 人間とは思えない奴ら……そしてトラックにはねられて死んだであろう俺の記憶。以上から考えると――、


「俺は異世界に転生したのか」


 一つの答えを得る。


 ハスキーな声の二人組はどんどん近づいてきて、とうとう会話が聞こえる程近くなった。


「おいおいスレイブ、また男捨てたのか?」


「えぇ、戦争中って性欲上がりますわ」


「全く、こんなご時世に不謹慎だぞ。それにお前の妹は貞操観念が強いというのに」


「私、恋多き女性、ですので」


「全く、お前は魔王軍の幹部なんだから」


「レギンはまだ処女なんですか?」


「そりゃ、相手はいないけど」


「サキュバスなのに処女なんて信じられませんわ」


「けっこういるって」


 ぷい、と頬を赤らめてサキュバスは視線をエルフから外した。あの子、処女か。


「全く、恋に生きる者として貴方に良い相手が出ることを心より祈っておりますわ」


「お、緑色に茂る草原の真ん中に、黄色い板みたいな……これは、コンクリートの塊か?」


「そのようですわね」


 バサバサと翼の羽ばたく音が聞こえる。

 鳥が来たか? 最悪……と思ったのだが、そこにいたのは、


「これだな、報告された怪しい物体ってのは」


「全くもう……人間達が攻めて来ているって言うのに、厄介な事件ですね」


 それは先ほどのハスキーな声の二人組……だった。

 な、何だこの二人……サキュバスとエルフ、いや、そんなことより!


 超絶美少女達だ!!


 片方は黒い肌を持ちドsみたいな目で周囲を見渡し、露出は多く見事なダイナマイトボディをしている、背中には黒い翼がある。


 もう片方は白い肌を持ちおどおどとしていて全身を白い服と透明なレースに覆われているお淑やかな雰囲気ある美少女、背中には白い翼がある。


 うっひょおおおおおお!

 何だあの美少女二人、えへへへ。可愛すぎる! 目の保養。


 サキュバスちゃんの目が茶色く光り輝いてる。あぁ……美少女に見られるって良い!


「鑑定眼を使うぞ」


「えぇ、お願いします」


「……ってこれは何だ! ……『種族:道ゴースト』!? こんな魔物、見たことがない!」


「ま、魔物なんですね!?」


「間違いない……こいつ、魔物だ」


 俺を指差してよく分からないことを言うサキュバスちゃん。エルフちゃんは大きく目を見開いて両手で口を抑えている。


「これか、何だこの『道』は」


「そんな種族、聞いたことも見たこともないです。新種ですね」


 俺を見ている。『道』、だと? 俺のこと、だよな? 

 この二名……まさか、あの親子が言っていた魔王軍のメンバーか?


「触ってみないか?」


「危ないですよ、レギン」


 こいつらは俺より魔物に詳しそうだ。ってことは、俺は本当に道になってしまったっていうのか? 俺が!


「じゃあ、踏んでみよう」


 レギンと呼ばれた黒肌のつり目女は、俺の体を踏んだ。

 ヒールのようなもので俺はぐりぐりと踏まれる。


「うっひょおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


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「会話能力を得ました」

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「機動性を更に得ました」

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「素材収納を得ました」】


「な、何だこの興奮は」


 俺は思ったものをそのまま口にした。それは俺の体が振動して声となっているのが分かった。


「な!」


「こ、コンクリートが喋った?」


 美少女二人が俺に向かって驚いている。どうやら俺の声が聞こえるようになったらしい。

 口がないのに、どうなってんだ?


「わ、解るのかお前ら、俺の言葉が」


 俺の問いかけにレギンがナイフを向けてくる。


「貴様、どこの村の者だ! 名前を言え!」


「な、名前……俺の名前って」


 何だっけ。思い出せない。


【報告。名前は転生前も転生後も共にセキュリティがかけられています。貴方の成長に基づき、徐々に開示されます】


 なんなんだ、この心に直接響くかのような声は。


「解らない。俺は今どういう状況かさっぱりで」


「白々しいぞ!」


 レギンは俺の体を足でぐりぐりと踏んでくる。

 美少女にぐりぐりされて、俺は悶絶してしまう。


「ぐわあああああああああああああ!!!」


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「収納能力が上がりました」

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「穴掘り、が出来るようになりました」】


 サキュバスの超絶美少女レギンは意地悪く美しい顔を向けて俺に罵倒してくる。


「へへへ、相当応えたようだな。いいか? 正直に言わないともっと酷いぞ。この……『道』!」


「うぅ……」


 俺は羞恥心と気持ち良さで一杯だった。なんだよここ、天国の一種か?


「おいこら、応えろ」


 レギンのハスキーな声が俺に語りかけてくる。だが相手が美少女だとしてもそれを理由に屈服などしてなるものか! 絶対に負けない!


「お、お前なんかの思い通りになんて、絶対にならない!」


「あ?」


 レギンは俺の体をぐりぐりと足で踏んでくる。


「うぉほおおおおおおおおお!!!」


【報告。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。

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「水道、を覚えました」

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「まだあたしの攻撃は終わってねえぜ!」


 レギンは俺の体に馬乗りになってくる。レギンの太ももやお尻が俺の体に触れ、温かい体温で俺の心は一杯になる。


「し、幸せ」


「幸せ? お前に幸せなんかねえ! いや、死合わせなら正解かもなぁ!!」


 嗜虐心があるのだろうか? レギンは俺を罵倒してきて、ぐりぐりと踏みつけてくる。

 俺の心にけたたましいレベルアップ音が鳴り響くが、それを意識出来ない程の強烈な体験。俺は……こんな奴に屈したくない!


 俺は僅かな機動性を使おうと思ったが、大して動かなかった。

 だがぷるぷると、俺が震えたのを自分で感じた。


「スレイブ、見たか? このコンクリートの塊……敵か味方か分からないけど、本当に魔物みたいだ! すげぇ!」


 レギンは白い翼を持つ清らかな乙女を見てそう言った。


「あ、この道、動きますね!」


 白服の乙女は綺麗な声で応える。


「ふふふ。抵抗しても無駄だからな」


 黒翼をばたつかせながらレギンや俺の体をぐりぐりする。

 俺はこれ以上踏まれたら自分が歪むと思い、必死の声を上げる。


「や、やめろお!」


「ふふふ。魔王様のところへ、連れて行ってやる!」


 レギンの言葉に、スレイブは笑う。


「お手柄になるかもしれませんね。こんな魔物、見たことありません」


 褐色の肌の美少女に抱きつかれるという衝撃で俺の意識はブラックアウトした。

 俺の心に声が響く。


【報告。エナジーが満タンです。スキル使用をお勧めします】


 エナジーが満タン? エナジーって何だよ……。そう思いながら俺の意識は真っ暗になった。

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