第2話 異世界転生したら『道』でした。
う……。
記憶が混濁している。俺は、一体……。
確かリア充にイッキコールされて酒を飲んで……だめだ、それ以上思い出せない。
いや、そうだ……トラックにはねられたんだ。つまり、俺は。
「死んだのか?」
そう思った瞬間、『こんこん』と俺は仰向けの体を誰かに歩かれる。まだ酔っているのか、視界は暗いままだ。何も見えない。
「誰だ! この野郎!」
俺は話そうと思ったが、上手く口が動く感触がなかった。相手は俺のことをおかまいなしに、無視したまま歩く。
「畜生……」
俺は舌打ちする。いや、舌打ちしたつもりだったのだが――音が聞こえない。
舌打ちした体の感覚もない。
何が起こっているんだ?
俺は横になろうとしたが、体は金縛りになった様にまったく動かない。
「微動だにしねえ……どうしちまったんだ、俺の体」
俺は、再び誰かにてくてくと歩かれる。
「畜生……さっきとは別の奴だな。足のサイズが違う」
【報告。レベルアップです。「視覚」を得ました】
「は?」
俺の心に直接語りかけてきたような声だった。急に目が出現したような感覚になる。
俺はぱっちりと目を開けた。すると目の前には広々とした青空が。
「何でさっきまで、見えなかったんだ?」
俺は、辺りを見回そうとした……しかし、出来ない。
俺の目は完全に固定されている。
「っく……動けねえ、動きてえよおおお!」
寝返りさえ打てない不自由な体にイライラする。
すると、声が聞こえた。
「ママー、あそこになんか『道』があるー!」
「本当ねー、あんなとこに『道』なんてあったかしら? あれ、でもこれって……」
声の主は見えなかったものの、ザッザッと一歩一歩近づいてきて横たわる俺の体の上に立ちやがった。
失礼だな、この親子……というかそれ以前に、見た感じ角が生えてて、肌は少し赤い。人間ではない。
こいつら、何者だ? 見た感じ、母親と娘って感じだが今日はハロウィンかなんかか? コスプレ、だよな。
母親と思しき女性が怪訝な顔で俺を覗き込み呟く。
「これ、『道』なのかしら? コンクリートの塊よ」
「ママァ、コンクリートって何ぃ?」
子供の方の疑問に母親だろう女性は答える。
「人間の国にある建物を作る材料よ。何でこんなとこにコンクリートがあるのかしら」
一体、どういうことだ? 俺を観てコンクリートって言ってやがる。
って、この親子……俺を踏んだ! くそ、俺の体を踏むんじゃねえ!
「ママー、この『道』、なんか変!」
「どこが?」
「魔力感じる。魔物じゃなんじゃない?」
「まさか、こんな魔物なんているわけないわよ」
「でも魔力感じるよ」
俺を覗き込む角が生えた娘。
「本当? ……本当だ、微弱な魔力を放ってるわね」
っく、こいつら、俺を見て『魔力』とかよく解らないことを話してやがる。
というか、俺を『コンクリートの塊』だとか『道』だと? 意味分かんねえ。
「『道』さん。起きてー」
少女はバッグから手鏡を取り出し、俺に見せてきた。光をキラキラと反射させてきて、眩しい。そして驚いた。鏡に映ったのは人間の姿でなく――
一畳分のコンクリートの塊だった。
「え!? ――これが、俺?」
その声は、角の生えた親子には届かない。
俺の体は人間どころか、生物でない何かになっている。
視界の回復した俺の目に入ったのは――
それは婦人の縞々パンツと幼女の熊さんパンツだった。
婦人と幼女のルックスはレベル高く、まるでモデル級だ。
おまけに、俺は童貞だった。
俺は全く体験したことがない感情に支配された。いや、記憶が蘇る。そう、俺は死ぬ間際……。
水玉のパンツを見て喜びながら死んだのだ。
【報告。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
「柔軟性を少し得ました」
レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
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レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。レベルアップです。
「機動性を少し得ました」】
俺はぬっと動き、寝返りを打とうと頑張った。しかし、
「わあ、この『道』、なんか動いたよ!」
「えぇ!? の、伸びるなんておかしいわ! 魔王軍に報告しましょう!」
魔王軍? それより、なんか動けるようになった気がする……なんとか。寝返りを打ちたい。が、まるで亀のように遅く、とても逃げ出せる状態ではない。
このまま踏まれ続けてしまうのかと思ったものの、親子はそそくさと移動し、どこかへ行ってしまった。
「ふう、じろじろこっちを見やがって。嫌な気持ち……だぜ」
俺は縞々パンツと熊さんパンツを思い出す。
あの興奮は何だ?
……いかんいかん、取りあえず、俺は動かねば。
そう思いつつ、俺は動こうとし始めるのだった。
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