第9話 夢の中からお願いごとをしてみた

俺は夢を見た。母さんと妹に会う夢。


「勝恋の気持ちにきずいてあげられなかった」と泣いている母さん。何だこれ?いつもの母さんと違う。しかも妹も大人びていて怖かった。


「お兄ちゃん、勝恋お姉ちゃんは繊細なの」


「姉貴は無表情だろ?」


「あたしも生きている時はそう思っていたの。だけど違っていたの。お姉ちゃんは何でも我慢しては自分の気持ちを言わない」


「きっと我慢させてしまったのね」と母さん。「一番最初に生まれた子どもだから厳しくしてしまうの。だけどあの子が一番弱かった。だからいじめ殺しに殺されてしまった」


「お兄ちゃん、あたしたちは何もできないかもしれないけど」


「いじめ殺しなんかにも負けないで」


「殺人はどんな理由があっても」


二人が声を揃えて「絶対にしては駄目よ」


「どんなに憎くてもその人を傷つけていいわけじゃない。いじめをなくしたいならいろんな方法がある。」と母さん。


「あぶきのやっていることはいじめをなくさない。なくすどころか増やすだけ。戦争が起こっていいわけない」


「だけど母さん、俺には止めれないよ」


「大丈夫よ。納得しない人たちがいるし、あぶきのやることに誰も協力なんかしない。あぶきのやることは政治命令でも何でもないし、いじめ殺しなんていつでもいるわけない。あぶきのやり方に納得のいかないいじめ殺しが現れるはずよ」


「母さん、俺は耐えられない。苗字は変えられてしまうし、姉貴のことはいまだにわからない。姉貴も父さんが代わりにいなくなれば良かったんだ」


「お兄ちゃん、あたしたちのこと忘れちゃったの?あたしたちが生きていた頃は重要なかんじではなかったよね」


「だとしても姉貴や父さんよりはまだいい。とにかく3人で一緒に暮らしてみてわかったんだ。姉貴と父さんにはもう会いたくない、顔も見たくない」


「いつかまた会えるわ」


「どうやって会うんだよ?」


「いじめ殺しのいない世界に戻れたらいいわよね。そして離婚する時に勝恋だけに親権を譲れば良かったわね。離婚するときに親権で揉めてそれで子ども3人引き取ったのよ」


「過去に戻りたい。戻れるならそうしたい」


陸野とは高校に入学してから出会った。それよりも先の過去に戻りたい。いじめ殺しなんてもう嫌だ。こんな悲劇二度と味わいたくない。頼む、夢から覚めないでくれ。覚めたとしても過去に戻った上で目覚めたい。

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