矢田の友達 滑るのは仏様も諦めた

栗原慎一

第1話 矢田の友達は朱鷺

平成初期の日本に酷似したい異世界

飲酒運転は 0.6までセーフで

神様のご都合主義で飲酒事故では怪我すらしない異世界

但し車は壊れる

呑み屋さんに駐車場がないと流行らない世界線です

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そこは 平成日本風の異世界

其の世界のデカイスーパーに店を構て8年の矢田

沈着冷静 不利と見れば正座で済むならとも許容する心の広さ


しかもイケメン 稼ぎもいい

ただ店を構えた時に声を掛けた女性がお局様になってしまった

そんな矢田と矢田の友達と仲間達の物語


バブルも崩れ去った 平成

山に雪も積もり冬も真っ盛り


高校の卒業式の前に 急遽 横田から海外に渡り 海外大学留学と称して

仕事を紹介して貰って 5年ほど海外で働いてイッパイ仕事したけど 

カードをなくすやらかし その給料は 行方不明


それでも高校時代の バイトの貯金で やたら金のあった矢田の友達の大円 


日本に帰ってきてから バイクレースを始める 当然TZ250 RS250は無い

藤田というライダーと二人で鈴鹿と間瀬に通う

しかし やらかして バイクレースから足を洗いというか

TZのキャブセットで試乗をしていて 国家権力に見つかり

しこたま怒られて、許してもらって 藤田も引退を余儀なくされたのだ


そりゃ、一般公道で TZ250の全開加速とかを2台でやってれいば通報もされる

しっかり見られていて 来てた地廻りのPCの二人共がバイク仲間の先輩で

署に連行されそうになったが 署長がわざわざ、出向いてきて

「署には絶対入れるな」と先輩たちを叱る 署長 ある噂を入手して危険と判断


叱られるだけで済ますのも どうかと思うが 噂が本当なら署には入れられない

大円と藤田 叱られるだけ済んだのはラッキーだったが

ナンバー付きのバイクも売却を余儀なくされ

「心が入れ替わるまでは お預け」と国家権力に言われる


「その心が入れ替わる基準は?」と訊く大円

「結婚したらだな 奥さんのお許しで」署長

二重の罠 普通に結婚したら バイクなんて買えない

しかも 嫁さんの公認で バイクを買う ハードルが高い


ダートもより戦闘力の高い四駆が何車種も発売され全く勝てなくなって

乗り換えも考えたが、毎年の様に新車を作りセットアップで半年とか

馬鹿らしいのでJAF戦を引退すると 会社の涼子さんが嫁に行く

会社にも日本にも未練は無くなり 即退職届


帰国後 2年しか日本に居なく 今度は 海外放浪 2年

中東で綺麗なお姉さんにフラレて凹んで アフリカで憂さ晴らしをして

中東とアフリカで しこたま金を稼いだが カードが行方不明で

幾ら振り込まれたのか不明なママ

ヤッパリ日本がいいと帰ってきた


そもそも バブルのアップダウンを絶好調で乗り切り国内口座にも金はある

車もバイクもやれない 時間も余るわで スキーを始める


この当時 深夜バスでお一人さまでも行けて

相部屋ってのもあって、よく解らなかったので 国家権力の吉田先輩に訊いたら

相部屋で来てる→一人でも来る→そこまでスキーが好き→達人も居る との事


最初はレンタルスキーがいい ある程度の見る目が出来てから買うのがいい

達人に出会って 道具も教えて貰うのがいい そうなれば相部屋一択

バスで行ったりダート車で行ったり色々してた


相部屋で何度も行ってたら、色々聞ける 上手い人と一緒に滑って教えて貰える

本気の達人の長野親父の弟子と知り合え 長野親父を紹介して貰ったんだ


正月前に長野親父おすすめの道具で揃えたんだ

板はOLINのモーグル用 ブーツとビンディングはサロモンのエキップ

最低ラインと言われて、信じて買い揃えた ストックは長野親父が切ってくれた


ひたすら通って1月は10日間 2月は丸っと30日間 3月は20日間の合宿をやる

長野親父の指導の元 60日間は滑った


春も夏も 雪を求めてどこへでも行って

 とにかく滑った スキーでもネタでも滑った


秋に中学の同級生の矢田もスキーをしていると聞く 

デカイスーパーにテナントで店を構えてる

とりあえずデカイスーパーに行き矢田を誘い

居酒屋とかで呑む 去年の秋から日本に居る と話をして


「実家には 帰ってるか」矢田が訊いて来る


「家は自力で建てた 出来上がったから 帰ってきた そのうち招待する」


話が噛み合っていないが こう言う奴だと流すしか無い矢田


「我慢できるなら 正月まで待て デカイスーパー 3日の営業初日 振り袖山もり

 ポン酒の振る舞いもOK 振り袖に振る舞い酒 ポイントが高いぞ」


「矢田 有り難い ナイスなアドバイスだ ありがとう 従う」


この時代 デカイスーパーだとエレベーターガールが居たり

正月3日 初営業日はお屠蘇気分で営業 店員の独身女子は振り袖で出勤

客も店も細かいこと言わずに、あけましておめでとうの挨拶会とかだった


矢田の友達 大円も お屠蘇気分でポン酒の四合瓶を

ディバックに入るだけ持って矢田の店に顔を出すと


「ええ男」な矢田の廻りには振り袖が多数いる


若干お姉様も混じってる お局様も居るのかなと期待する


矢田と話をしてて 近くに居た振り袖含めて四合瓶を振る舞って

そう営業初日は 挨拶会 売上のノルマもない

振り袖に仕事しろとか しょぼいことは言わない 客からの差し入れの飲酒もOK


客も振る舞うのが当然 しょぼい酒は恥ずかしい 味醂と焼酎でお屠蘇も来る


自分で着れれば 親戚が集まっていれば着付けできるおばさんが居る

店での評価ポイントも上がる振り袖


百貨店を目指してるデカイスーパー 新年の華やかな振り袖は必需品だ

おおらかな時代だった


「スキーを昨シーズンから始めたんだ

 矢田はもう6年もやってるんだろ 連れてって教えてくれ」

廻りの振り袖に聞こえるように、お願いをする


翻訳すると「そこの綺麗なお姉さん達と一緒に行きたい」となる


「1月末まで、お正月営業の都合で行けないんだ 1末に行こう」と言ってくれる


廻りの振り袖も「それなら、一緒に行きましょう 教えてあげるね」


振り袖に どんどん振る舞う 集まってくる振り袖 20人位いる

でかいディバックから四合瓶を どんどん出して どんどん振る舞う


美味しい と高評価 空瓶は矢田が サクッと片付けてくれる


美味しいポン酒を振る舞い続ける矢田の友達

ブサイクに近いが笑うと愛嬌がある 難点はパンチパーマ

なにか特技があって きちんと稼げるなら との振り袖のお局様の寸評


そのお局様の寸評は 矢田がこっそり教えてくれた


心の中は12月に日曜昼発の金曜日夕方帰り 4日間滑りっぱ を3回やってるし

1末までには10日の合宿は予約済だ 教えて貰えるレベルになろう と思う


俺は 長野親父という長野出身の国体入賞の経験があるらしい親父に教えて貰い

昨シーズンは40日間ほど一緒に滑ったが

(内 1月の10日間 2月の20日間と3月10日間の合宿が三回だ)


上手い人は、桁違いと言うことを身にしみているので

矢田は今シーズンで6年目なのできっと上手い

一番年上のお局様は10年以上で国体出場の経験もあるらしい


差があって敵わないと思い込んいる


今シーズンも運良く 三回とも長野親父と日程があい 八方と五竜で

しこたまポールとコブの練習


斜面のどこでもそこそこ飛べてある程度の技は出来るようになった

しかし、長野親父 同じ場所でより完成度の高い 高度も高いのを

余裕でカマしてくる


矢田達との約束の前にも10日間の合宿に五竜へいく

長野親父も5日間ほど着てくれて、そこそこだなと言ってもらった

コサックは股関節が硬いのでそもそも無理 と諦めた


いよいよ矢田達と行く週になった 

長野親父達が相手なら経験に差が有りすぎるし、そもそも親父だ 緊張しない

でも今回は お局様が教えてくれるのだ 緊張する


矢田からの電話で矢田のクラウンワゴンに女の娘が乗り切れない

大円も車出してくれとの事 

女の娘が余るとは凄い職場だ


四駆のダート車もあるが、タイヤがラリータイヤしか無いし2名乗車

バードゲージで乗り降りが大変だしバネも固く乗り心地が悪い

しかも、ボディ補強で断熱材全部剥がして鉄板むき出し 他も軽量化で剥がしまくり

冷えるし 五月蝿い 無線もついていなくて カーステは振動で壊れたまま


普段乗りにしているNAはミシュランマキシアイスを今シーズン新調した

雪道も今シーズンはこの車で行って、車高15mmあげて長いストローク

ノンスリも締め上げた スノー仕様のNA

インカム連動の2mと430の10wのモービルにアンテナも上げてある

現地で430で繋げての長野親父と合流で苦にならない


五竜も八方も頂上に高いアンテナでリピーターを

カマしてくれてるので、飛ぶんだよな


矢田に「俺の車、2名乗車なんだけど」と言うと


「忘れてた 女の娘が五人居る こっちに女の娘四人と俺で五人

 大円の車は 女の娘を一人を頼むわ」


「あとさ キャリアがないんだ 板積んでいってくれ」頼むと


「キャリアは10本は積めるから大丈夫 女の娘の道具もこっちでいい

 じゃぁ 木曜日にデカイスーパーのミスドの前に5時集合な」


「了解 ミスドの前な」


ダッシュで襟巻きとかを買いにいに行った

ケンタはこの辺の案内は頼りになる


スキーブーツはバッグに入れトランクに放り込んだ

ウエアは着てけばいいか どうせオープンで行くし 一枚上着を着てけばいい

助手席にOLINの板とスコットのストックを突き刺して デカイスーパーに向かう


5時5分前に ミスド前につく

矢田の車も有りお姉さん達も揃ってるみたいだ


横につけ 「おはようさん 今日はよろしく」車に乗ったまま挨拶をする

だってフルオープンだし、窓全開だし 普通に話せる


でもだれも返事をしてくれない

朱鷺を見る目で見てくるお姉さん達


朱鷺って野生は絶滅してて、保護センターで特別許可がないと見れない

物凄く珍しいものを見る目だ


今宵も深けたようで


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ラリータイヤしか無いバネもショックも固めのダート仕様の四駆

マキシアイス履いた車高15mmあげて長いストロークのスノー仕様のNA 

共に2名乗車 選ぶなら 普通にNAで行きますよね


あと 朱鷺を見る目って ホントに朱鷺

フルオープンでスキーの集合場所に行くと体験できます

だって屋根開けないと板が積めないし、仕方がないですよね


注)作者の中ではNAの発売は79年 これに間違いはありません

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