私の期限は49日〜東京編〜

桑鶴七緒

第1話

それはある日の午後だった。


友達とショッピングに出かけて夕方になり別れた後、信号機が青に変わるのと同時に歩き出した。


すると、勢いよく走行車が横転してきた。鈍い音がした後にそのまま身体は横たわってぐったりと道路の脇に飛ばされた。


それから5時間くらいだろうか。

気がついて起き上がり後ろを振り返るともう1人の私がベッドの上に眠っている。


ここは病院かな。頭や手に包帯が巻かれていて、呼吸器が取りついている。身体を揺すっても反応してくれない。

一体何が起きたのだろうか。


私の名前は橘 由愛ゆあ、21歳。都内の大学に通う学生だ。


ドアの向こうから人の足音が聞こえてきた。そこにはパパとママが駆けつけてきた。

眠る私の姿を見て泣きながら声をかけている。


私はそこじゃなくて、ここにいるのに気がついてくれない。手や身体を見ても誰もが気づくはずの姿なのに…。


「もしかして幽体離脱だろうか。じゃあ何故私は2人いるの。2人とも、私に気づいてよ。パパ、ママ。私が見えない?」


全く振り向いてくれない。眠る私を横目に廊下へ出て、非常階段口へ向かい、屋上へと着いた。フェンス越しに下を覗くと真っ暗な道路に移動する車が行き来している。


気が遠のく。誰も私に気がついてくれない。


ならばもう一度ここから飛び込んでいけば、自分の起きた出来事がわかるのかもしれない。


立ちすくみながら、目を閉じて、突風が舞い上がる瞬間、片足を出そうとした時だった。


「無駄な事は、しない方が良い」


我にかえりその声の方に振り向いてみると、黒ずくめの男性が立っていた。


「誰?」

「僕には名前がない。その代わり、番号がついている」

「だから、何なの?」

「貴方は今脳死の状態だ」

「脳死?それじゃあなんでここに私がいるの?どうして誰も見えないの?」

「身体から魂が出ているんだ。だから、誰も気がつかない」

「何が起きたの?」

「貴方は交通事故に遭って、一旦魂が出てきている身なんだ」

「私はまだ死んではいないって事?」

「今のところは。ただ49日が経てば魂はあの世のへ逝く」

「私、まだやり残した事がたくさんある。このまま死にたくない。どうするれば助かるの?」

「あるミッションを遂行してもらう。」

「それは何?」


「49日以内に貴方の為に流した本物の涙を3粒集めるんだ」


「涙を、3粒?それをしたら、どうなるの?」

「命が助かる。人間界に戻れる。」

「よく分からないけど、やってみる。私、涙を集めるわ」

「日付けが変わった。あと、48日だ。このままの姿ではミッションに取りかかれない。これから僕についてこい」

「あの。貴方は一体何者なの?」


「僕はスケジューラー。番号はナンバー31だ」

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