怪人結社サタトロン
マガタマキング
序章 ジャンクフィールド編
第一節 地龍の怪人
第0話 プロローグ
俺はガキの頃から悪の組織に憧れていた。
悪の組織とは大勢の構成員と優秀な幹部を率いて世界征服を目論む組織のことだ。
実在するようなマフィアやテロ組織のようなスケールの小さい連中のことではない。
テレビアニメや特撮に出てくる悪の組織に俺は憧れている。
そんなことを口にすれば、決まってバカにされたもんだ。
当然と言えば当然だろう。
たいていは主人公側のヒーローに負けるやられ役なのだから。
バカにされようと俺は気にすることはなかった。
何故なら、ヒーローに負けるような弱い組織にするつもりはないからだ。
だが、ついに俺の目が覚めることになる。
高校に入った頃、あらゆることを学び、また自分や周囲のことを理解できるようになって気づいてしまった。
この世界では悪の組織を立ち上げたとしても世界を征服することは叶わないことを。
人並外れた身体能力はなく、触れることなく敵を葬り去る特別な力を持つわけでもない。
個人で出来ることはたがが知れている。
頑張っても体力測定で日本一の記録を叩き出すくらいだ。
そして、組織を立ち上げたとしても一つの国を制圧するには時間がかかりすぎる。
そのうえ、だいたいの国は軍隊をもっており、兵器の研究も進んでいるのでアドバンテージがつきすぎている。
そんな現実に俺は打ちのめされた。
あげくにトドメと言わんばかりに俺はさんざんバカにしていたテロ組織のテロに巻きこまれて死んでしまった。
今は情けなくこうして人生の振り返りとやらとしている。
手足を動かせるような体の感覚もなく、何も聞こえないし何も見えないただ真っ暗な空間にいるみたいだからな。
考えることしかできないとは、死後の世界は思った以上に退屈な場所のようだ。
いや、もしかしたら次に生まれ変わる準備時間なのかもしれない。
もしそうだとしたら、次は俺の憧れが叶えられる世界で力を持った人物として生まれることを願う。
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本当に生まれ変わった。
しかも、どうやら前の世界とは違う世界に生まれ変わったらしい。
今回も人間として生まれ、現在五才で性別は男。
生まれた時から意識と自我があったのだが、言語の習得や行動範囲が広くなったことで、ようやく違う世界に生まれたことに気づいた。
まずこの世界は一言で言えば中世ファンタジーといったところだ。
前の世界のように車が道を走っていなければ、道がアスファルトで舗装されているわけでもない。
馬車が道をたまに走っているくらいだ。
町並みもアニメで見たファンタジーものまんまで、高い高層ビルなんか見当たらない。
道行く人々も携帯端末を持ってはいないし、ほとんどが農民だ。
俺はというとどこぞの貴族の息子である。
没落はしておらず、そこそこの地位らしいので親ガチャは成功したほうだろう。
貴族っていう階級があるのは、いかにもファンタジーものっぽいだろう。
だが、これ以上にこの世界がファンタジーものたる最もな存在がある。
それはスキルだ。
身体強化や魔法を使うのに必要なもので、生まれたときからあるものあれば後天的に取得できたり、人づてに習得することも可能らしい。
優秀なスキル、多くのスキルを持つ者は、王国お抱えの騎士団の団長や宮廷魔法師などの重役ポジションにつけるそうだ。
まあ、そんなことはどうでもいいか。
そんな小さいところを目指すつもりはないし。
俺にとって、この人並外れた力が存在だけで心が躍った。
しかも、生まれた時から持つスキルは俺が悪の組織の総帥になるために役に立つスキルだったのだから、もう笑いは止まらなかった。
この世界に生まれた俺ならきっと出来るはずだ。
齢五才にして、俺は人生の目標が完璧に定まっていた。
「俺はこの世界で悪の組織を立ち上げ、世界を征服してやる。ククク、ディエーハッハッハー! 」
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