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空木うつぎかえでは溜息を繰り返していた。

自室の床に寝転がって転がって、ちょっと掲げた右手を、絆創膏が巻かれた中指眺めてた。

ガーゼの部分は赤黒く変色しており、内側の指の腹はちょっと痒かった。


血が出た時は痛かった。

そこそこに流血して慌てた。

それより、も。

はぁとまた、溜息。


普段は変化しない、綺麗な面構えの中心に寄ったシワと紅眼の虹彩。

それを思い出しては息を吐き続けた。


空木の楓には茨の王と称された同級生が居る。

良い所の生まれらしいが、茨の王と称されるに相応しい容貌の所為で生家では煙たがられてると噂されていた。

何故かと言うと彼は植物に呪われていた。

いや人類みな呪われているのだが、彼はホントに呪われていた。

呪いとしかいいようがなかった。

なにせ彼は、顔全部、覆うように茨が絡みついるのだ。

右腕も、絡みつかれてる。

その棘は本人を傷付けて、誰も彼もを傷付ける。

だから、彼は、ラーヴァ・グルートは、茨の王と揶揄されて、他者を拒絶し拒絶されていた。


空木の楓は、噂で聞いていたラーヴァと同じクラスになったから、気さくに声を掛けていた。

そういう性分というか、そういうのを気にしないタチだったからだ。

それに加えて彼と話がしてみたかった。

純粋に、友達になりたかった。

だから空木の楓は毎日ラーヴァに声掛け続けた。

ラーヴァは最初こそ、空木の楓の呼びかけを無視していた。

けれど屈託なく自然体で級友扱いを続けるから、いつしか、打ち解けて挨拶を交わしそこそこ会話する仲に、最近なった。


そこで起きたのが、空木の楓が茨の棘で流血事件だった。

ラーヴァは傷付けないないように一定の距離を保っていた。

空木の楓は気にせず近寄っていた。

空木の楓があまりにも気にしないで近寄るものだから、ラーヴァは油断した。

そうして接触して棘が刺さった。


茨の仮面の奥のあの金色の瞳の感情を思い出した空木の楓は、絆創膏指の腹変色したガーゼ注視し、気合の一息を吐き出した。

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