第4話 スキル選択、正直こういうの選んでる時が一番楽しかったりする
一段落したところで、私の目の前には新たな画面が出現した。
画面には色々なアイコンが表示されていた。なんだか、このアイコンの中から選択して下さいといった感じだ。
んで、このアイコンはなんなんでしょうか……?
とりあえず、そのアイコンたちの中の一つの、刀を振ってるような絵の
〈刀の扱い方を
なるほど? つまり、刀を扱えるようになるってわけか。
つまりこれはアレかな、いわゆるスキル的な、剣術スキルとかそういう感じのやつなんですかね?
他のアイコンも見てみると、どれも似たような感じで、つまりそれぞれアイコンに描かれている武器の扱い方が身につくといった感じのようだ。中には、体術の格闘技っぽいやつもあった。
これらの——とりあえずスキルと呼ぶが——それらのスキルのアイコンは記号的な絵柄が表示されているだけで、名称とかは何もないのだけど、意識を向けてみると、さっきのように内容が簡単にだが表示されるようだ。
さて、ではどれを選ぶかといえば……まあ私の場合、刀を選んだんだから、ここも刀でしょうね。
しかしインストールって、直接脳内にってコト? そんなこと出来るんかいな。そんな技術、聞いたことないけど。
やって大丈夫なのかな。ミスったら頭が爆発して死んだりとかしないよねー?
——どうでしょうね。容量が足りなかったらそうなるかもね。
頭の容量が足りないって、それお前はバカって言われてるみたいなんだけど……まあ、私の脳みそが大容量記憶装置であることを祈ろう。
——やっぱり、やらないという選択肢は……?
ないね。もしもこれが言ってることが本当ならすごいことじゃん。なんの努力もしないで成果を得ることが出来るとか、怠け者は大喜びだね。
——どう考えても詐欺じゃないの? そんな上手い話があるわけないじゃん。必ず何か落とし穴があるハズよ。何か大きな代償があるとか。
それはたぶんだけど、この力で戦わさせられる、ってことじゃないの? これってモロ戦うための力みたいだし。それが代償なんじゃない?
だとしても、それならそれで構わないけどね私は。やってやろーじゃん。
——まだ何と戦うかも分からないのに?
たぶんゾンビじゃない?
——それって電車の時のことから? あれは本当のゾンビだったと思ってるの?
だって実際、このタイミングでこんな不思議な出来事が続いたら、マジなんじゃないかって気もしてくるよ。
——ゾンビなら銃が良かったんじゃないの? さっきのスキルのとこに、銃の扱いについてのやつもあったみたいだけど。
まさか、こんなスキルみたいなのがあるとか分からないから……。それに、まだ弾の補給の問題もある。
——それも多分どうにかなるんだと思うけど。これだけやっといて、弾だけ無いとかなくない? 日本刀をポンと出せるくらいだし、弾も出せるんでしょ。
今更言うなよー。もう日本刀選んじゃったし。もう私はコレで行くわ。ゾンビ程度ならコレで楽勝よ。
——それじゃ、スキルは刀の扱いにするのね?
そうだね。それじゃさっそく選択しますか。そーれ『選択』!
《
すると、私の脳内に情報が流れ込んでくる。
それは、かつて存在した記憶か何かのように——高密度の情報が私の脳裏に刻まれていった。
どのくらいの時間そうしていたのか、そんなに長い時間はかからなかったように思うけど、おそらく数分程度だろうか?
しかし、その内容は相当なものだった。
「はあっ……はぁ……!」
脳裏に渦巻く情報の嵐が私の呼吸を荒くする。しかし、それも次第に収まっていき、後には一つの悟りのような境地が残った。
「……カタナをマスターした」
気づけば口からそう零れていた。
——まるでネオね。
プラグも挿してないのに、どうやってダウンロードしたんだろうね。
しかし、これは凄いな……よし。
私は
さっきまでの私とは違うということを、お見せしましょうか。
刀を振る、振る、振る。
それは
しかしそこには確実に、仮想した敵を
切先が舞い踊る。狙い通りの場所を刀が薙ぐ。
ついさっきまで素人だったなどと、一体誰が信じよう。今の私を人が見れば、きっと——才能があった上で幼い頃から鍛錬したのでしょうね、とでも思うハズだ。
まさか——ついさっきよくわからないスキルをダウンロードしたんですよ、と言っても信じまい。
いやー、信じられないくらいあっさりと刀の達人になってしまったぜ。
——確かに動きは凄かったけど、実戦ではどれくらい戦えるの?
そうだね。
なんか、こう斬るためにはこう動くのが最適、っていうのが分かるんだけど、実際にどんな動きをするのか決めるのは自分なんだよね。
相手の動きを見て、得た知識からある程度対応は出来るかもだけど、それでも結局、勝てるかどうかは私の操作次第、みたいな。
——つまりどういうことなのよ。
つまり私は、アクションゲームのキャラクターになったってこと。
操作を入力すれば対応する完璧な技を繰り出せるけど、どんな技をどこで出すかの判断は自分でしないといけないの。
まあ、その判断に使える知識なんかもある程度入ってるっぽいんだけど、それをどう使うかも含めて、自分の経験や実力も必要って感じかな。
——なるほど。ゲームに例えるとやっぱり分かりやすいわね。
ゲームやらない人には、よく分からないかもだけどね。まあ、剣術をダウンロードって時点で普通は意味が分からないんだけど。
とにかく、頭も爆発することなくスキルを修得出来たのは良かった。これなら刀を武器として存分に振るえるね。しかも黄色いゲージを使用すれば、驚異的な身体能力も発揮できる。
アレ、私、控えめに言ってかなり強いのでは?
——戦う前から慢心するのは良くないわよ。
分かってるよ。ちょっとテンション上がっちゃっただけ。
さてさて、スキルは修得したけど、次のチュートリアルは?
《
《報酬を獲得しました》
なんか報酬ゲットした。
報酬として出てきたのは、なんかの数値と、アイテムっぽいアイコンだった。
この数値はアレかな、いわゆる経験値みたいなやつ? 一定に達すると、レベルが上がるとかなんだろうか。
アイテムは、これはなんだろう。説明を表示させてみる。
〈
と出てきた。
回復アイテムか。しかしグリーンゲージはなんなんだろうか。たぶん、HPとかだと思うんだけど。説明がないから分からん。
なんかアイテムも装備出来るみたいだったので、この緑ゲージを回復させるというアイテム(便宜上、緑ポーションとでも呼んでおこうか?)も装備しておいた。
これでどうやら、使いたい時に即座に使えるみたいだ。
そういえばこのアイテム欄って、取り出すだけじゃなくて仕舞ったりは出来ないのかな。
——試してみれば?
なんでも試してみるべきだよね。というわけで、持っていた荷物を突っ込めるか試そう。
とはいえ、どう試せばいいのか。
アイテム欄を開いて、適当に持ってる荷物に意識を向ける。そうすると、〈収納しますか?〉と出てきた。イエス。
すると、日本刀を出し入れするのと同じようにビカビカした後、私の荷物は消えた。
かわりに、ウィンドウのアイテム欄の中に、私の荷物のカバンと似たようなアイコンが現れた。
——出来たわね。
出来ちゃったわ。うわー、これは便利だね。手ぶらで歩けるじゃん。
ゲームでは持ち物をこんな感じで管理するのって普通だけど、リアルにあったらめっちゃ便利じゃないのこれ?
どれくらい入るんだろう。その辺の検証もすごく気になるんですけど。
——それはまあ、後でもいいんじゃない。
そうだね。でもとりあえずこれだけ検証する。
私はカバンの中身だけを取り出せるか試してみたが、それは無理だった。どうやら、まとめて入れたものを個別に取り出したりは出来ないようだ。
どういうものがひとまとめと認識されるのかも気になるが、それもまたいずれ。
刀の方は、抜き身で出したり出来たんだけど、何が違うんだろう。装備してるからなのか。
そしてここで気が付いたことが一つ。やはりこのアイテム欄への出し入れの際も、青いゲージが消費されている。消費が一律なら、カバンなどでまとめて入れたほうが便利なのかもしれないね。
ただ、よく使うスマホなんかは、それ単体で入れた方が便利かな。まあ、スマホくらいならポケットとかに入れといてもいいんだけど。
私がアイテムを色々やっていたら、また新たな脳内ダイレクトアナウンスが流れる。
《
《
あ、なに? レッド? エンカウント……?
すると、なんだか地図のようなものが視界に表示された。
これは、マップかな? そんな機能もあるのか。
てか、どういう機能が他にあるのよ。メインメニューとかないわけ?
と思ったら、ウィンドウが切り替わってメインメニュー的なのが出てきた。
いやあるんかい。なら最初から出してくれよ。チュートリアルの画面ばっかで気がつかなかったわー。アイテム欄とかは、その都度出てきてたからさー。
どうもこのシステムウィンドウのインターフェースが分からん。そもそも操作が思考操作とかいう馴染みのないものだしさ。タッチ操作とかより便利な部分もあるんだけどね。
——というか遂に出たわね。レッドシンボルって、敵のことじゃないの? バトルとか言ってるし。
敵か。やっぱいるんだろうね。そりゃいるか。ここまできて戦わないわけがない。
メインメニューの項目も気になるんだけど、とりあえず、さっきのマップを先に見るか。だって、敵が近くにいるかもしれないわけだし。
このマップとやらを使えば、索敵も出来るってことなのかな?
とりあえず開いてみよう。『マップ』。
すると、地図のような画面が現れた。
スマホで見るGPSの地図なんかと似たような感じだけど。中心には、おそらく私をさしているであろうアイコンがある。
《敵を表す
そう言われても、敵っぽいアイコンとかは何も表示されてないのだけど。
もしかして、何か表示されるまで歩き回らないといけない感じ?
——あるいは、その敵とやらはまだ発生していないとか?
まあ、その可能性はあるか。私も今のところ、この辺で変なやつって例のゾンビ(仮)以外見てないしね。
そう思っていたら突如、駅の方から凄まじい轟音が鳴り響いた。
——ッッ!! これは何!?
まるで地震のような衝撃。しかし地面は揺れていない。揺れているのは大気だ。
——爆発!? 一体何が起きたの??
すると画面の地図に変化が。地図の枠の外に赤いアイコンが現れる。
どうやらそちらに向かえといった感じ。アイコンの示す方向は、
——どうやらこれ、その“敵”とかいうのの仕業みたいよ。
だとしたら多分、とんでもない敵が現れてると思うんですけど……。そこに行けってか……。
——どうする? 逆に離れるってのもアリだと思うけど。
いや、それは出来ない。
——どうして? だって明らかに尋常ではない規模よ。まるで空爆でもされてるみたいな衝撃じゃない。安全を考えるなら、離れるべきだと思うけど。
だって、駅の方には
——……電話してみましょうか?
……そうだね。電話してみよう。
スマホを取り出して真奈羽にコールする。
呼び出し音が続くが、一向に出ない。
しばらくコールし続けたが、相手が出ることはなく、仕方なく一旦切って、またかけ直す。
何度かそれを繰り返したが、何度かけても電話が繋がることは無かった。
……マナーモードで気が付いてないだけの可能性もあるけど、それ以外の可能性もある。
——どうする?
兎にも角にも、駅まで確認に行く。真奈羽もだけど、何が起きているのか。
そう決意したところで、いきなり近くのビルに何かが当たって爆発した。
これまでの比ではない衝撃と轟音が発生し、私は思わず倒れそうになった。
ビルが崩壊していく。
ここまで攻撃が届くのか……なんだか分からんがマジでやばいな……。
——やっぱりやめとく?
いや、行く。むしろ、どこまでが影響範囲か分からない以上、逃げても安全とは限らないし、そもそも逃げる気は無い。少なくとも、真奈羽と合流するまでは。
——合流、出来るといいけどね……。
私は駅の方向へと進み出しながら——その言葉の先は考えないよう努めていた。
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