第30話 学期末ボドゲ大会(1)

 今日は1学期最後のクラブ活動がある。

 帰りの会が終わった後、児童たちはそれぞれの活動場所に移動した。

 拓真が所属するボードゲームクラブの活動場所は、第2校舎2階の視聴覚室の横にある空き部屋だ。



 ——ガラガラガラ。


「お疲れ様です」

「あっ、間瀬くんお疲れー」

「やっと来たか。今日は絶対お前に勝つからな!」

「いや、俺が勝つ」


 拓真に勝利宣言をしたのは5年2組の窪田くぼた理玖りく。背の順は一番前。目鼻立ちがよく両頬の薄いそばかすが特徴。負けず嫌いで拓真のことをライバルだと思っている。


「じゃあ説明するから一旦座ってー」


 ボードゲームクラブの担当である川上かわかみが今大会の説明を始めた。


「今回はオセロ。トーナメント形式で6人なので2人はシードね。じゃんけんで勝った人から順番に端から名前を書いてください。あっ、あと持ち時間は10分ね。説明はこれくらいかなー。何か質問ある?」

「・・・・・・」

「大丈夫そうね。じゃあ始めましょう!」


 6人は集まってじゃんけんを始め、勝った順に黒板にあるトーナメント表に名前を書いていった。

 運良くシード権を獲得したのは、4年生の2人だ。


「よっしゃ! これで準決確定(笑)」

「ラッキー!」

「うわー俺1回戦敗退だわー」

「俺もー」


 他の4年生2人はそれぞれ拓真と理玖と対局することになり、やる前から諦めムードが漂っている。


「お前らやる前から諦めんなよ!」

「だって理玖君強いじゃん」

「拓真君だってそうだよ」

「おいおい今の若いのはだらしないな! 拓真もなんか言ってやれよ!」

「いや、若いのって……歳ひとつしか変わらないだろ(笑)」

「うるせー! もういい、さっさと始めよーぜ!」


 理玖の勢いのまま学期末ボドゲ大会が始まった。


「「「「よろしくお願いします」」」」


 シード権を獲得した2人は高みの見物だ。

 川上はカチカチと鳴り響く駒の音を静かに聞いている。


 ●○○


 両対局は10分も経たずに終了した。結果は5年生2人の圧勝だった。

 負けた2人は観戦していた2人と交代した。


「理玖君やっぱ容赦ようしゃなかったなー」

「拓真君も強かったー。でもめっちゃ楽しかったわ」

「え、マジ? 全然楽しめなかったけど。お前強くなってんの?」

「違うよ(笑) 対局前に拓真君の一言があったからだよ」

「一言?」

「うん。『ゲームは楽しまなきゃ損だぜ?』だってさ。当たり前のことだけど、勝ち負けを気にしすぎて忘れてたよ。だから心から楽しもうって思えたんだよね」

「うわぁ、そりゃカッケーわ」


 近くで聞いていた川上は「ふふっ」と小さく笑っていた。


 続いて準決勝が始まった。

 4年生の2人は序盤から一気に攻めていったが、5年生の2人は上手く対処して反撃していった。

 そしてこちらも10分経たずに両対局が終了した。結果は先ほどと同じで5年生2人の圧勝であった。


 ●○●決勝戦○●○


「拓真、オセロ王になるのはこの俺だ!」

「王になるとかはどうでもいいけど、勝つのは俺だ」


 始まる前から火花を散らす2人を見て、観客席は盛り上がっている。


「では始め!」


 川上の合図とともに決勝戦が始まった。


 序盤は両者とも様子見をしていたが、中盤になると細かな駆け引きが所々で出ていた。

 そして終盤に差し掛かろうとした時、理玖が勝負手を出してきた。


「くっ……」


 苦しむ拓真だったが、少し時間を使いなんとか乗り越えた。

 観客たちは息を飲んでいる。


 ——終盤。今度は拓真が勝負を決めにいった。理玖はなんとか耐えている状態だったが、すでに拓真は読み終わっていた。


「参りました」


 優勝は拓真。観客席から拍手の音が聞こえてくる。


「いやー拓真はやっぱ強いな」

「理玖もな」

「悔しいけど、めっちゃ楽しかったわ!」

「俺も楽しかった!」


 2人は笑顔で握手を交わした。



 ——クラブ活動終了時刻。川上が前に出て最後の挨拶をした。


「以上で1学期のボドゲ大会を終了します。みんなお疲れ様! じゃあ2学期もよろしくね!」

「「「「「「はい!」」」」」」


 1学期最後のクラブ活動は無事終了した。

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